写真家カミーユ・ヴィヴィエ interview:彼女がとらえる女性とその身体

フランス人写真家、カミーユ・ヴィヴィエの新作写真集『Twist』は、女性とその身体、その造形へ捧げる夢幻的でシュールなヴィジュアル・ポエム。

by Patrick Thévenin; translated by Ai Nakayama
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24 June 2019, 6:38am

ESADグルノーブル、そしてロンドンのセントラル・セント・マーチンズを卒業したカミーユ・ヴィヴィエは、ファッションマガジン『Purple』へ入社し、写真家の道を歩み始める。以来彼女は、ファッションの仕事と個人的なプロジェクトを行き来しながら、映画、彫刻、フェミニズム、ユーモア、ファンタジー、妄想などをインスピレーション源に作品を生み出し、今や同世代の写真家のなかでも際立って注目される存在となっている。

今年に入って発売した写真集『Twist』は、彼女がこの10年、モノクロ写真と彩度の高いカラー写真で撮りためてきた女性たちのポートレイト集。女性の身体を余すところなく切り取った作品だ。
カミーユが再定義する、写真内/外における女性性(フェミニニティ)とは。

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——この写真集がかたちになるまでの経緯を教えてください。

編集者のユルゲンから連絡があったのが始まりです。昔から写真集をつくりたい想いはあったのですが、実現するにはなかなか時間がなくて。私はシリーズものを撮るタイプじゃないし。一度目のミーティングのあと、ユルゲンが私のこれまでの作品ほぼすべてに目を通して、この10年で撮りためてきた作品をまとめて本にすることが決まりました。もちろんすべての作品を貫くものはあります。女性の身体 VS ひとの身体に似たかたち、造形、構造、様々な物体。その並列するふたつのテーマでまとめました。ふたつを対応させて遊んでいます。

——女性の裸体にフォーカスすることにしたのはなぜ?

最初は、衣服から離れて、社会的な符号を消したいという想いからヌードを撮りました。もちろん、クラシックかつ絵画的なテーマとしてのヌードを撮ってみたいという気持ちもありましたね。そのテーマを、自分自身のやりかたで再解釈するという。元ネタから発展させるのが好きなんです。サンプリングというか。あるひとつの元ネタやジャンルに回帰して、そこをスタートに自分の作品をつくる。

——インスピレーション源は?

書籍や映画から、あとは心のなかに現れる抽象的なイメージが多いですね。造形に関しては、かなりこだわって照明をセットするので、光がイメージの構築の大事な部分を担っていると思います。造形や構成には注力しています。もちろんデザインも。

——本作では、いわゆる教科書的なポーズも見受けられると同時に、そういうありきたりなポーズにダイナミズムを加えることを愉しんでいるようにも思えました。

そうですね、ひねりを加えてます。この写真集では、軸を中心にねじれている、みたいな、ユーモアのきいたひねりを核に置いてるんです。ポップでありながら時代遅れだったり、廃れていながら現代的だったり。レファレンスにひねりを加えるのが好きです。仕掛けで遊ぶっていう。

——写真自体が非物質化するいっぽう、手触りのある物質に戻ろうとする、という感じでしょうか。

私は、唯物論者的な写真アプローチをとってます。ここ数年、予算を抑えるためにデジタルでしか撮影させてもらえなくて、フラストレーションが溜まってたんです。でもどういうわけか、突然フィルム写真が流行しだして、ほっとしました。まあ、写真を決定づけるのは技術ではなく、被写体の構成ですが。

——立体芸術をやってみたいとは思いませんか?

思わないですね。でも、物としての写真に向き合うという意味ではそうなのかもしれません。〈イメージ〉ではなく、空間における物の体積やかたちを考えるということ。あとセメントや石膏でフレームもつくってます。美術館的な、メッセージ性が何もないフレームは好きじゃないんです。写真を完成させるような、イメージの拡張としてのフレームが良いですね。実は、ロバート・メイプルソープからかなりインスパイアされています。

——メイプルソープの光や身体の使いかた?

はい、とはいえ最近になってからですけど。初期はもっと柔和というか、どちらかといえばマン・レイ的な表現でした。メイプルソープのヌードが特段好きというわけでもないんです。彼の古典的、新古典的な写真以外の作品、比較的穏やかな作風を知ったのも最近で。リサ・ライオン(※女性ボディビルダー)を撮影したシリーズは大好きで、強く印象に残ってます。私も今、ボディビルダーの女性を撮影しているんですが、どうしてもあのシリーズを意識してしまいますね。

——あなたは廃墟の遊園地や、不思議なかたちをした立体作品、コンクリート製の恐竜など、どこかこの世と隔絶したような物や場所を被写体にしています。こんな秘境のような場所、いったいどう探すんですか?

いろいろ調査してます。考古学の遺物みたいですよね。でも実際、多くがパリ周辺にあるんですよ。パリ郊外南部、特にサンチュール・ルージュ(ceinture rouge: 共産党が行政のトップに立つパリ郊外の自治体の総称)に多いです。マルヌ川のほとりには私のお気に入りの場所があるんですが、そこでは爆撃を受けた石橋のブロックと融合した、どこかの教授が手がけた立体作品がみられます。

あとはイタリアのラ・スカルツゥオーラ(La Scarzuola)みたいに、モニュメント的な場所もありますね。ラ・スカルツゥオーラは、建築家のトマーゾ・ブッツィが修復した修道院です。でも、私は細部を写すタイプなので、場所全体を写真に収めるとは限りません。後の世代に受け継がれなかった立体作品、装飾の一部としての立体作品に魅力を感じます。みんな、その作品に気づかずに素通りしてしまうような。たとえばイヴリーの公園にある、この女性のかたちをした巨大な階段とか。

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——ケネス・アンガー監督、あるいはベルトラン・マンディコ監督のようなキャンプ的な美学を想起させる写真もあります。

ケネス・アンガーの作品、色彩は大好きです。確かに影響を受けていると思います。マイケル・パウエルと(エメリック・)プレスバーガーが手がけたテクニカラーの映画もインスピレーション源です。

——どうして被写体を女性に限定しているのでしょう?

自分でもわかりません。きっと、感受性とか同一性とか、そういったものが作用していると思います。私は神話の、女の園的な世界観が好きなんです。なんというか、ファンタジーのような空気感が漂いますよね。この前、私が〈魅力〉というものに気づいたのはいつか、と訊かれて思い出したんですが、私が幼い頃、誰かからディヴァインに色を塗って、切り取れるノートをもらったのがきっかけでした。

——あの、ジョン・ウォーターズの作品に出てくるディヴァイン?

そう、そのディヴァインです。アイデンティティの問題には昔から関心があったんです。私はばっちりメイクで、女らしく、それでいて強さのある女性が好きです。いや、女性でも男性でも、ですね。最近は、トランスジェンダーの女性の撮影を始めました。女友達とやってるコラボプロジェクトなんです。

——女性の何に惹かれる?

女性的な性質が好きなのかな、と思います。傷を負った女性、強い女性、アンビバレントな女性。ミーナのような、イタリアの女性歌手たちが常に念頭にありますね。かなわぬ愛の物語を紡ぐディーバたち。大好きです。

——いつかファッションフォトグラファーとしての活動は辞めてしまう?

いえ、私はファッションも服も好きなので。私のインスピレーション源です。ファッションフォトから、他の作品のアイデアを得ることもあります。これが私の自然な働きかただと感じます。でも、写真展もやってみたいですし、もちろん、コレクターに私の写真を売りたい気持ちもありますよ。

以下、カミーユによる作品:

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Camille Vivier : « Twist » (Art Paper Editions).

This article originally appeared on i-D FR.

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