7人のアーティストが紹介する、失敗を失敗で終わらせない方法

東京・原宿で開催されたLevi’s®によるプロジェクト「THERE IS NO WRONG」に参加したアーティストに、i-Dがインタビューを敢行。コラボレーションやカスタマイズの極意、彼らにとっての「失敗」が意味するものとは?

by i-D Japan; photos by Nobuko Baba; translated by Ai Nakayama
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05 June 2019, 10:12am

破れていたり、すり切れていたり、着古されていたり、はたまた焼け焦げていても〈501®〉は己を表現できる究極のキャンバスでありつづけてきた。Levi’s®は今年、かの有名なブルージーンズとその愛用者たちを、究極のコラボレーターとして祝福する。

今回i-Dは、東京・原宿で開催されたLevi’s®によるエキシビション「THERE IS NO WRONG」に参加した7人のアーティストにインタビューを敢行。それぞれの作品についての見解やコラボレーション、カスタマイズについて、また「失敗」が意味するものは何か聞いた。

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NATALIA WEARS CUSTOMISED LEVI'S® TRUCKER JACKET BY MARIO AYALA. T-SHIRT, TROUSERS AND ACCESSORIES MODEL'S OWN.

ナタリア・マンティーニ

何をしている人?
写真家。

あなたの作品を観たことがないひとに、作品のスタイルを説明するなら?
柔らかくて、親密。自分が向き合っている対象に力を与えることを重視してる。

アーティスト同士をつなげ、コミュニティを築くサポートをするLevi’s®のプロジェクトについてどう思う?
自分と共通点のあるアーティストと新たに知り合って仲を深める良い機会になったし、もともと知り合いだったアーティストともさらに距離が縮まった。私の親友でもあるスタイリストのミヤコ・ベリッツィといっしょに、私たちふたりの創造性やスタイルを尊重しながら、カスタマイズしたアイテムを記事で取り上げてもらえる機会をもらえたことにも感謝してる。Levi’s®が私たちアーティストを支援して、それぞれの個性を活かした作品を自由につくらせてくれるのは、すばらしい取り組みだと思う。

普段カスタマイズして使っているツールや必需品はある?
撮影中は出したい効果や雰囲気に合わせて、カメラにいろんなアクセサリを取り付けてる。

失敗したと感じたとき、それを〈失敗作〉ではないものに変えるにはどうすればいい?
経験から学んだことを何かひとつでも次の作品に活かせたなら、それは失敗じゃないと思う。

個性を失わずに、アイデアを生み出し続ける秘訣は?
ときどきスマホ断ちをすること。インターネット、特にSNSから離れるのは大切なことだと思う。そうすれば、自分が今ここにいる、という実感をもてるから。

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MIYAKO WEARS ALL CLOTHING MODEL'S OWN.

ミヤコ・ベリッツィ

何をしている人?
衣装デザイナー/スタイリスト。

あなたの作品を観たことがないひとに、作品のスタイルを説明するなら?
私は衣装デザイナーとして、オリジナルのキャラクターに基づいて唯一無二の作品をつくっている。どのアイデアにもベースとなるテーマがあって、それをもとにカスタマイズアイテムとしてかたちにする。

アーティスト同士をつなげ、コミュニティを築くサポートをするLevi’s®のプロジェクトについてどう思う?
Levi’s ®がアーティスト同士をつなげ、支援しているのはすばらしいことだと思う。アーティストの創作活動をバックアップするだけじゃなくて、彼らが成長できる場やコミュニティまでつくってくれるブランドはほとんどないから。

作品が完成したと判断するのはいつ? どうやって判断する?
わからない。完成することなんてないと思う。終わらなければいけないときに終わるしかない。でもそのあとも推敲を重ねて、どうすればもっと良くなるか考える。永遠にその繰り返し。

普段カスタマイズして使っているツールや必需品はある?
安全ピンにはいつも助けられてる。

失敗したと感じたとき、それを〈失敗作〉ではないものに変えるにはどうすればいい?
満足のいかなかったプロジェクトを振り返ってみると、いつも自分の成長に気づかされる。ちゃんと見直せば、失敗作なんてひとつもない。私たちアーティストは、自分の作品を必要以上に分析してしまいがちだけど、他人の目からみれば期待を超えるものかもしれない。視点を変えることが大切。

個性を失わずに、アイデアを生み出し続ける秘訣は?
我慢強さ。常に新しいこと、やったことがないことに挑戦し、安全地帯の外へ踏み出すこと。

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JOE WEARS T-SHIRT, HAT, SOCKS, NECKLACE, RING AND SHOES MODEL'S OWN. BLUE JEAN LEVI'S®.

ジョー・ガーヴェイ

何をしている人?
ブルックリン在住のヴィジュアルアーティスト。

このプロジェクトに参加したきっかけは?
Levi’s®やクリエイティブ・エージェンシーとの話し合いが始まったのが半年くらい前。それから半年かけてコンセプトを構築して、今日この〈The Mass〉にスタジオをつくった。

作品が完成したと判断するのはいつ? どうやって判断する?
難しいな。メッセージや電話で急かされたり、写真で確認しなければいけないこともあるけど、僕にとってはしっくりきたときかな。

失敗したと感じたとき、それを〈失敗作〉ではないものに変えるにはどうすればいい?
みんながそうとはいえないけど、99%は失敗する。試行錯誤の連続なんだ。ひたすらつくり続けるしかない。至ってシンプルだよ。仕上がりに全然満足できなかったとしても、とにかくコンセプトをかたちにする。完成してから失敗したと思ったら、その失敗から学んだことを次の作品に活かせばいい。ドミノみたいに次につなげるんだ。

個性を失わずに、アイデアを生み出し続ける秘訣は?
できるだけたくさんアイデアを出すこと。10個アイデアを出せば、そのうちひとつかふたつは作品につながる。ひたすらつくり続けること、僕にとってはそれが大切。

アーティストのコミュニティを支援するLevi’s®のプロジェクトについてどう思う?
他のブランドとは、こんなプロジェクトは実現できなかったと思う。Levi’s®は高い評価を受けている一流企業だ。ファッショナブルで手が届く価格帯の実用的な服、つまりみんなのための服をつくっている。僕だけでなく、ここにいるアーティスト全員にとってもすばらしい経験になった。このブランドの大きなレガシーに小さな足跡を残せたと思う。

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JORDAN WEARS TOPS AND ACCESSORIES MODEL'S OWN. WHITE JEANS MIYAKO BELLIZZI CUSTOMISED LEVI'S ® MADE & CRAFTED® 501®.

ジョーダン・ナーサル

何をしている人?
アーティスト。

あなたの作品、そしてあなたのアートの核となる思想を教えて。
僕の作品はすべて、イスラエルやユダヤのシンボルであるライオンに関係している。主に使うのはパレスチナの伝統的なクロスステッチ。これは僕のアイデンティティや家族の歴史に関係してる。クロスステッチは多くのパレスチナ人が習得しているもので、僕にとってはパレスチナ人が営んできた暮らしに触れるひとつの手段なんだ。

アーティストのコミュニティを支援するLevi’s®のプロジェクトについてどう思う?
すばらしいプロジェクトだと思う。いろんなLevi’s®のアイテムで遊べるし、しかもプロダクションの指揮をとるのは〈LQQK Studio〉だ。様々な技術を使えるし、プリントを担当してくれるスタッフもいる。それからずっと使ってみたかった、僕のスタジオにはない刺繍機もある。

作品が完成したと判断するのはいつ? どうやって判断する?
頭のなかにはっきりとした完成図があっても、布を扱うのはなかなか難しい。いつ終わりを決めるかはよくわからないな…。何か付け足そうと思えばいつまでも付け足すことはできるけど、あとはフィーリングかな。

失敗したと感じたとき、それを〈失敗作〉ではないものに変えるにはどうすればいい?
僕の知り合いにもちょっと過激なひとがいる。気に入らなかったら作品を壊そうとしたり。でも僕は「やめなよ!」っていう。僕自身は絶対に壊したりしない。そのまま放置しておく。それで何ヶ月後か何年後かにどうすればいいか考える。それが失敗作をそうではないものに変える方法かな。もちろん、すごく根気がいるけど。

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NICK WEARS ALL CLOTHING MODEL'S OWN.

ニック・セティ

何をしている人?
アーティスト/写真家。

コミュニティを支援するLevi’s®のプロジェクトについてどう思う?
Levi’s®がオーガナイズしてくれるなんて最高。今回の参加者には、昔からの友だちも多い。何度かいっしょに日本にも来てて、こっちに知り合いもいる。Levi’s®もLevi’s®で独自のネットワークがあるから、おかげでつながりが飛躍的に広がって、まるで親戚の集まりみたいだよ。最高だ。

あなたの作品、そしてあなたのアートの核となる思想を教えて。
自分の活動すべてを包含する作品をつくろうとしてる。たとえば今回のプロジェクトなんて、ちょうどいい例だ。東京に来て、いろんなひとに会って、自分でも想像もしていなかったような作品をつくる。作品づくりとは、何かをするため、楽しむため、そして自分が望む人生を歩むための、ひとつの言い訳みたいなもの。その過程で、ひとびとの助けになったり、世界にポジティブなパワーを与えられればうれしい。

作品が完成したと判断するのはいつ? どうやって判断する?
作品の完成を判断するのは相当難しい。必ずしも完成させようとしてないかも。10分で仕上がる作品もあれば、10年かかる作品もある。

普段カスタマイズして使っているツールや必需品はある?
カスタマイズって定義が難しくて、僕らが使うものは、ある意味すべて自分風にカスタマイズしてるんじゃないかな。たとえば僕はカメラを毎日使ってて、カメラ用バッグはカスタマイズのひとつの例。仕切りを入れて、必要なときに必要なものをすぐ取り出せるようにしてる。

失敗したと感じたとき、それを〈失敗作〉ではないものに変えるにはどうすればいい?
失敗なんてしたことないからわからないな…。というのは冗談(笑) すばやく完成させたものって、だいたい周囲の環境に反応してつくっているから、どこかしっくりこないこともある。正しくつくらなかったから、というわけじゃなく、間違ったレンズを使って視ていたことに気づく、っていう意味での失敗だね。

個性を失わずに、アイデアを生み出し続ける秘訣は?
自分の感覚に素直になること。僕は米国で生まれたけど、両親を含む僕の家族は全員インド生まれ。変だな、とも思うけど、追究しがいもある。それくらいダイナミックなテーマしか選ばない。それこそが僕の作品のつくりかた、考えかただと思うんだ。とにかく、自分らしくいるってこと。

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TAMARA WEARS CUSTOMISED LEVI'S® TRUCKER JACKET. T-SHIRT, BLUE JEANS, SOCKS, SHOES AND NECKLACES MODEL'S OWN.

タマラ・ベリーズ

何をしている人?
ヴィジュアルアーティストだけど、多分野の作品をつくってる。タトゥーも彫るし、絵も描くし、立体作品もつくる。出版社も経営してる。

コミュニティを支援するLevi’s®のプロジェクトについてどう思う?
選ばれてとてもうれしい。昔からの知り合いも多いし。友だちとか、友だちの友だちがたくさんいる。いっしょに東京に来れて、作品をつくって、コラボレーションできるなんて最高。何でも自分たちの好きにできるし。

あなたの作品、そしてあなたのアートの核となる思想を教えて。
私の作品の多くは、私たちが身につけるものが象徴としていかに機能するかを提示してる。アクセサリーや服は、アイデンティティを表明する手段として機能する。私の作品の多くは、モノやサブカルチャーをリメイクすることがテーマ。ときには様々な素材、様々な伝統工芸のプロセスを駆使して実験をしながらリメイクしてる。

作品が完成したと判断するのはいつ? どうやって判断する?
作品づくりにおいては、少々我慢するタイプ。やりすぎの危険を冒すよりは、未完成にしておくほうがいい。他の誰かの作品や、そのつくりかたを見ると、別の作品をふまえていると気づく。ひとつの作品に注力して、やりすぎてしまうよりも、他の作品を手がけながら、作品の成長を風任せにするほうが私は合ってる。ひとつの作品のなかで、常にすべてが完璧に整っている必要はない。今の作品から別の作品へと広がっていくこともある。今の作品に加えたいと思ったものをとっておいて、まったく新しい作品にすればいい。

普段カスタマイズして使っているツールや必需品はある?
刺繍機、鎖縫い機、刺繍用のシルクスクリーン、あとは少し描画ツールを使ってる。

個性を失わずに、アイデアを生み出し続ける秘訣は?
コミュニティの一員でいること。誠意ある本物のコミュニティ、好きにやらせてくれるコミュニティが必要。私は、知り合いからインスパイアされることがほとんど。進むべき道を見失ったり、何がしたいかわからなくなって途方に暮れたときは、周囲にいるひとたち、自分が属しているコミュニティをみる。そして私が創りあげてきた世界において、自分が良いと思えることを考える。

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CHASE WEARS T-SHIRT MODEL'S OWN. BLUE JEANS LEVI’S®.

チェイズ・ホール

何をしている人?画家、彫刻家、写真家。

あなたの作品を観たことがないひとに、作品のスタイルを説明するなら?
荒削り、率直、スピリチュアル。

アーティスト同士をつなげ、コミュニティを築くサポートをするLevi’s®のプロジェクトについてどう思う?
旅に出て、世界を見て、自分の頭で考えることのできる強い熱意をもったひとたちと出会い、世界各地の未知の場所で作品をつくるチャンスをもらえるなんて、最高のギフトだ。

作品が完成したと判断するのはいつ? どうやって判断する?
僕は、すべてを見通す視野と大胆さ、両方をもちながら作品をつくってる。作品ひとつだけでは自分の芸術は定義できない。長くゆっくり燃える、という感じ。アートってとても主観的なものだから、「こんなんじゃだめだ」というアリ地獄にはまってしまったら時間の無駄だ。情熱をつぎ込んで作品をつくり、学びを止めず、常にリスクをとる。情熱をかきたててくれる作品であることが大事。

普段カスタマイズして使っているツールや必需品はある?
ラップトップ、Adobe Creative Suite、ペイント、あと基本ツールのパチモン系のやつ。カスタマイズはそこまでしてない。きちんと整頓してるくらい。どこに何があるか把握し、必要なときにはすぐ使えるように。

失敗したと感じたとき、それを〈失敗作〉ではないものに変えるにはどうすればいい?

個性を失わずに、アイデアを生み出し続ける秘訣は?
アルゴリズムよりも重要なのは、ヴィジョンと動機、そして信念。ひとの努力を自分の手柄としてかすめとろうとするヤツはこれまでもいたし、きっとこの先にも現れるだろう。とにかく、コミュニティとネットワークを築きながら、透明性をもって作品づくりをすること。インスピレーションを与えてくれるひとには称賛を惜しまないこと。そして、時間をたっぷりとって自分の頭を使い、自分の人生を生きること。アートと人間としての自分は常に等しいはずだけど、人間としての自分はなおざりにされがちだから。