『i-D japan No.4』マガジン発売

9月28日(木)に発売となった『i-D Japan No.4』。エディトリアル・ディレクターによる巻頭文を公開。

by Kazumi Asamura Hayashi
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28 September 2017, 2:38am

This article originally appeared in i-D Japan's The JOY Issue, no. 4, Fall 2017.

この雑誌を今手に取って読んでいるあなたは、ファッション、アート、音楽と興味の対象は違えど、少なからずクリエイティブなことに興味を持っていることでしょう。そしてきっとファッションページやインタビューなどお気に入りのページをめくり、一通り読んでこのページに辿りついてくれたのかと思います。

今号の制作にとりかかるべく編集部で会議をしているときに、「今までよりも、少し楽しい気分になったら?」「創造する喜びを素直に感じよう!」という話になり『JOY』をテーマとしました。"既成概念にとらわれることなく、興味のおもむくままに創造する喜びを共有する"であったり、"湧き出るアイデアをかたちにして、創造する感覚そのものを楽しむ"であったり、そういったことこそが人間の楽しみの原点なのでは?との思いからです。

今回のテーマについて、ファッションエディターのアラスター・マッキムと話をしたところ、彼はすぐに「笑顔のストーリーを撮りたいんだ」と返事をくれました。そうして出来上がったカバーストーリーはエイミー・トルーストが多様性に富んだモデルたちを起用してニューヨークで撮影したものです。女優の小松菜奈はパリのグラン・パレで行われたショー直後、そこで体感したばかりのCHANEL2017-18年秋冬オートクチュールをまとい撮影に挑みました。クチュリエたちの技の結晶が一つひとつ施された洋服を普段私たちが袖を通す機会は稀かもしれません。しかし、ファッションが好きな者にとってみれば、それを手に取り、感じられたことは喜び以外のなにものでもありませんでした。そして彼女は、等身大の自分についての多くをパリで語ってくれました。

また、永瀬沙世による『boys don't cry』では、ジェンダーの垣根を超えたビューティストーリーを展開しています。赤いリップスティックをつけて出かけようというのは、今日においては決して女の子だけの楽しみではなくなってきています。ファッションやビューティを楽しむこと、そしてそのあり方は、ジェンダーによって限定されるものではありません。これからはもっと自由に各々が思い描く美を追求していく時代になるでしょう。毎号ではありますが、ここに出て頂いた方々のほぼ全員にショートインタビューを敢行し、それぞれの意見を聞いています。あなたが『JOY』を感じるときは?という質問に対する答えは、さまざまです。家族や恋人と過ごす時間、満ち足りた気持ちがもたらす歓喜の衝動、自然の中で過ごすこと、好きなことに没頭できる時間など。喜びとは多様でありながらも、"人は他者に価値観を認められてこそ、喜びを感じられる"ということが見えたような気がします。

私自身、この雑誌づくりという仕事で感じる喜びがあります。例えばファッション撮影がうまくいっただとか、難航していた物事がやっと現実になっただとか。クリエイターとの共同作業を通じて得る喜びは多々あります。なかでも特別なのは想像していたものよりもっとずっと素晴らしい出来映えを目にしたとき。そのような創造に出会えたときには本当に心が踊るものです。"偶然の産物"はいつでもその顔を現わすわけではありません。化学式とは違い、ものを創造するときの正解、正しい答えはとても曖昧です。存在するとしても、それは各々の受け取り方、または価値観によって決まるものだから、極めて主観的な話にすぎません。しかしながら同じものを見たり、聞いたり、触れたときに、その場所にいた全員が得られる感覚、それが『喜び』だとしたら、それ以上に感動的なことはないのではないでしょうか。人は共有することの喜びを追い求め、それゆえに創造という行為を続けていくのかもしれません。

新しい時代を作り上げている皆様とその想いを共有できればと思います。

Credit


Text Kazumi Asamura Hayashi
Photography Amy Troost
Fashion Director Alastair Mckimm
Rina wears jacket and shirt Gucci.
Earring stylist's studio.