BROCKHAMPTONのケビン・アブストラクト&シャイア・ラブーフ 対談

ケビン・アブストラクトが親友シャイア・ラブーフに語る、グループセラピーについて、名声について、そして人生と愛について。

by Ryan White and Shia LaBeouf
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30 October 2019, 7:33am

2018年コーチェラでのパフォーマンスで、Brockhamptonの面々は、それぞれ違う単語がイエローのブロック体であしらわれた防弾チョッキを着用していた。政治的主張が乏しい音楽フェスのパフォーマンスでは、アーティストは連帯、平和、愛など気休めのメッセージを強調することが多いが、グループの創始者でリードボーカルのケビン・アブストラクトは胸に大きく〈FAGGOT(ホモ)〉という単語をまとってステージに登場した。

これは中傷の言葉で、ケビンも今は使っておらず、会話では〈あの言葉〉と濁して言及しているが、その言葉がかつて彼と彼の仲間たちが共有するスラングとして浸透し、彼のカミングアウト後には敵意をもって彼自身に投げ返されるようになった今、防弾チョッキにあしらわれたこの言葉は、大勢のオーディエンス、特に若いファンたちにとって、強さ、そして生き抜くことについてのメッセージとなっていた。

ケビン・アブストラクトの本名は、クリフォード・イアン・シンプソン。テキサス州ヒューストンの北部にある計画都市、ウッドランズで生まれた。母は、彼が4歳のときに職を失い、彼は兄弟とともにフロリダ州のキシミーへ移り住む。キシミーは小さな街だが、多くのテーマパークを抱える隣町のオーランドのおこぼれに預かり、きらびやかな雰囲気だった。

一家はそこからさらに、テキサス州コーパスクリスティの、ブロックハンプトン通りに建つ一軒家に移住。その後、彼の出生地からほど近いヒューストンへと戻る。最終的に彼は、ジョージアの高校を卒業。いつかのクリスマス、彼の母親が、ジョージアに住む姉妹の家に彼を預けることにしたからだ。

米国南部の様々な街をまわり、イアンはケビンという、〈変化〉をルーツとするアイデンティティを生み出す。「なんとかしなきゃいけないから」と彼は語る。多くのひとがそうだ。しかし彼の複雑なアイデンティティは、誰かに、あるいはコミュニティや組織に阻害されることとは別のかたちで、彼の書く歌詞、特に初期の作品にまっすぐな誠実さを与えている。

「俺の親友は差別主義者 俺の母親はホモフォビア」とケビンは2ndアルバム『American Boyfriend: A Suburban Love Story』に収録された「Miserable America」で歌い、郊外という複雑極まりない感情が存在する場所、心からの共感が必要とされる場所について言及する。

このアルバムは、米国の薄っぺらいステレオタイプ、すなわち〈ガール・ネクスト・ドア〉や、〈アメリカン・ボーイフレンド〉という概念をひっくり返す。ケビンは1stソロアルバム『MTV1987』の勢いをそのままに、全16曲の収録曲で、自分という存在と衝突する、米国に蔓延する様々な規範を真っ向から否定した。

『MTV1987』がリリースされたのは2014年。2ndアルバムリリースの2年前だ。ちょうど、彼の高校最後の年の終わり頃のことだった。批評家からは絶賛されたが、本作は現在ストリーミングサービスで聴くことができない。本作はアーティストとしての今の自分を反映していない、とケビン本人が考えているからだ。

彼は高校を卒業するとテキサスに戻り、それからロサンゼルスのサウスセントラルに移り住む。以来、ソロアーティストとして、そしてBrockhampton名義で8枚のアルバムをリリース。そして今回のインタビューの1か月後となる今年8月下旬、彼にとって9枚目のアルバム、Brockhamptonの『Ginger』が発売された。そのサウンドを定義するのはジャンルではない。彼らの野心、個性、エネルギーだ。

今年4月にリリースされ、現時点で彼の最新ソロプロジェクトである3枚目のソロアルバム『Arizona Baby』は、気が触れてしまったかのような、不安定なサウンドで幕を開ける。あまりに不安定で、クイアベイティングやゲイセックスについて煽るような歌詞さえ耳に入ってこないほどだ。

今年の7月に23歳になった彼の人生において、今回の対談は重要であるように思える。名声と成功を手にしたことで内省する余裕もでき、さらに、最近では彼のアイドルであり、俳優/アーティストのシャイア・ラブーフとも親しい付き合いをしている彼は、今、自分を大切にする、というこれまでとは異なる道を歩んでいる。

ふたりは毎週金曜夜、かつてBrockhamptonの仲間たちで占拠し、今はクリエイティブスタジオとして使われているLAの〈Brockhampton house〉で非公式のセラピーセッションを開催。シャイアはオープンなフォーラムを主催し、参加者であるメンバーの家族や友人と、それぞれ今週はどんな気持ちで過ごしたかを語り合い、彼らを導いている。セラピー体験が初めてだったケビンは、バンドメンバー同士の関係からみんなで作った新曲まで、その影響をあらゆるところで感じることができる、と語る。

今回は脆さ、好奇心、野心を共有するケビンとシャイアの対談の場を設けた。セラピーがもたらした効果について、名声について、そして人生と愛についてふたりが語りあう。

kevin abstract of brockhampton with shia labeouf
Kevin wears hoodie Awake NY.

シャイア・ラブーフ:まず言わせてほしいのは、今回の対談に参加できてめちゃくちゃ光栄だってこと。君は俺の最近の人生において、相当多くの喜びを与えてくれてる…。という感じで緊張もほぐれたから、早速始めようか。まず訊きたいのは、何か俺に訊かれたくない質問ってある?

ケビン・アブストラクト:何でも訊いてくれ。

ラブーフ:オーケー、じゃあ、君に訊いたことない質問。君は何をやってる人間? ほら、俺が君に会ったときはもう君のファンだったから、訊いたことないだろ。

アブストラクト:俺はミュージシャンで、ラッパーで、プロデューサーで、Brockhamptonってグループのリーダー。それに映像作家で、時には写真家にもなる。まあ、まとめちゃえばアーティスト。グループのため、このグループのインディコレクティブ的な活動をサポートするために、しなきゃいけないことは何でもやってる。

ラブーフ:写真、音楽、映像、出来事、グループなど、君が生み出してきたもののなかで、自分にとっていちばん重要な意味をもつものは? その理由も教えてくれ。

アブストラクト:Brockhampton名義の、1stから3rdまでのアルバムだね。適当なコードを弾いてサウンドができて、ラッパーがヴォーカルを重ねて、それに合わせてドラムを乗せただけで最高の音楽ができた。それが、サウスセントラルを出るための手段になった。これを超えるほど重要なものって、この先もないんじゃないかな。俺たちは喉から手が出るほどチャンスに飢えていたから。みんなで力を出し合って、チャンスをものにしたってのは大きいよ。

ラブーフ:もともと、インターネットで結成したブラザーフッドで、それから実際に形になったのがBrockhamptonだけど、今振り返ったとき、これはイケると思った瞬間ってある?

アブストラクト:「Star」をリリースしたときだな。この曲を作ったときは最高だった。自分の部屋でこの曲をリピート再生してて、俺らは何かを掴んだ、と感じた。俺らなりの公式を手に入れたんだ。もちろん今は、その公式から飛び出さなきゃダメだとも感じてるけどね。新しい公式が必要。

ラブーフ:作品をみんなの前で披露するとき、純粋な喜びを感じる? この前の夜、君が「マジで完璧なショーだった!」って言ってて、俺は君にとってはこの瞬間が最高に幸福なんだろうな、って思った。「完璧なショー」にするには何が必要? オーディエンスが何を受け取るか、っていうのも関わってくるよね?

kevin abstract from brockhampton in i-D magazine

アブストラクト:うん、俺らだけの話じゃない。全部自分のためだっていうアーティストもいるけどね。確かに俺も、曲作りのときは自分のことしか考えてないけど、誰かの前で披露したら、自分の作品がいかに広いカルチャーのなかにフィットするかを気にする。ステージに立ってるときは、「みんな、期待できる限り最高の時間を過ごしてくれてるかな?」って考えてる。だって、俺らのパフォーマンスを観たくて、長時間並んで会場に入ってくれたんだ。その価値に見合ったものを届けたい。俺自身も、そうやって長い列に並んで待ってるキッズのひとりだったし、気持ちがわかる。

ラブーフ:これまででいちばん最高のショーは?

アブストラクト:ヒューストンで観た〈Watch the Throne〉ツアー。ずっとカニエとジェイ・Zを観たくて、クリスマスプレゼントとしてチケットを取った。フロアシートだった。最高の時間だったよ。『channel ORANGE』をリリースしたばかりのフランク・オーシャンも観た。やばいくらいにぶっ飛んでた。

ラブーフ:君の人生の中で、いちばん感謝しているものは?

アブストラクト:友だち。いわば自分で作った家族だよ。いろんなかたちで俺の命を救ってくれた。もし明日すべてが終わったとしても、友人だけは失いたくない。若い頃に経験したことが、人間への好奇心や思いやりを養ったんだと思う。それ以来たくさんのひとに出会えて、感謝してる。

ラブーフ:君はこれ以外の道を進もうと思ってなかったというけど、それって盲信に近いものだった? それとも絶対に成功するっていう自信があった?

アブストラクト:どっちもかな。君は電話帳を見てエージェントを探した、っていう話を読んだことがあるけど、実は俺も10歳のとき同じことしたんだ。コーパスクリスティのスタジオに電話して、予約しようと思って。勇気あるよね。あと11歳のときDef Jamにも電話した。CEOと話がしたい、って。当時のCEOはジェイ・Z。本当に彼に会いたかったんだよ。

ラブーフ:昔から有名になりたかった? 今の自分は、かつての自分が憧れた姿になれてる?

アブストラクト:うん、ずっと有名になりたかった。なんでだろうね。きっと、昔から注目されたがりだったんだ。かつての自分が憧れた姿になれてるか、っていったら答えはノー。憧れてた姿ではない。業界で自分の居場所を探そうと努力してる今は、「おい、ガキの頃の俺が夢みてたのと全然違うじゃん!」って思ってる。

ラブーフ:子どもの頃の自分は、幸せだったといえる?

アブストラクト:幸せな子ども時代だった。何もかもが輝いてみえてた。でも今思い返すと、最高ではなかったかな。最低でもなかったけど。『フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法』がキシミーで撮影されたんだけど、子どもたちは大興奮で、すごく楽しそうだった。映画に出てきた子どもたちと同じ年代の頃、俺もキシミーに住んでたから感動したよ。振り返ると、うわ、こんなとこに住んでたのか、って思うけど、当時は魔法みたいだった。

ラブーフ:汚い現実に相対したとき魔法は消えてしまうけど、今は子どもの頃に感じた〈魔法〉が再び戻ってきた、って感じる?

アブストラクト:うん、そう思う。

kevin abstract from brockhampton in i-D magazine
Jeans Vetements. Briefs GAP.

ラブーフ:魔法の粉が肩にかかり、チョウチョが飛んできて、魔法が再び息を吹き返したのっていつだった?

アブストラクト:テキサスからLAに越してきた瞬間からかな。『American Boyfriend』っていうソロアルバムを出したけど期待通りの出来にはならなくて、その代わりにグループで実現しようと思ったんだ。俺らの体験してきた苦しみを全部持ち寄って、音楽や映像に昇華したとき、俺たちは〈魔法〉を手にした。2017年のサウスセントラルだよ。

ラブーフ:もし、グループの歩みのなかで何かを変えられるとしたら、変えたいと思う? Brockhampton全体の歴史において、何か変えたいところはある?

アブストラクト:ない。Brockhamptonには変化の可能性があって、自分たちが望めば、どんなものにも形を変えられる。そんなところが好きなんだ。だから何も変えたくないよ。

ラブーフ:グループのメンバーたちはみんな最高の奴らだよね。

アブストラクト:ありがとう。

ラブーフ:自分自身、そしてグループの未来について知りたいことってある?

アブストラクト:どれくらい続くか、かな。

ラブーフ:何が?

アブストラクト:成功とか世間からの注目じゃなくて、この友情がどれくらい続くか。俺、あんまりひとを信用できないから、そんな質問をしてみたいって思ったのかも。

ラブーフ:その問題っていつ頃から抱えてる?

アブストラクト:ずっと。成功してからさらに気にするようになったけど、基本的にずっとギリギリな感じ。簡単にひとを信用できるようになりたい。ひとを信用できないってイヤだよ。

ラブーフ:納得。金曜日のセラピーでも、君は誰よりも口数が少なかったもんね。そんな物静かな君が、グループを率いるリーダーでもある、っていう二面性が不思議なんだけど、昔からリーダーになりたかった?

アブストラクト:俺はずっと自分のものを手にしたかった。小さい頃は自分のレーベルが欲しいと思ってたし。そういう意味ではずっとリーダーになりたかったんじゃないかな。

ラブーフ:リーダーであることって大変じゃない?

アブストラクト:大変。でも、他人に自分の行動を指示されるほうが大変だよ。前に入ってたグループでは俺はリーダーじゃなくて、でも俺の頭のなかには強いヴィジョンがあったから、そこを抜けてBrockhamptonをつくったんだ。前のグループの奴らに電話して、「こんなのつくってる。リーダーになりたい。お前らにもグループに入って、これをやってほしい」って伝えた。俺はグループについて明確でまっすぐな考えがあったから。

kevin abstract from brockhampton in i-D magazine
T-shirt Calvin Klein Jeans. Jeans Vetements. Briefs GAP.

ラブーフ:セラピーを始めたとき、君はセラピーの目的について、もっとグループと近づきたいから、と言ってた。ソロアルバムをリリースしたばかりで、グループと改めて繋がりたい、グループの奴らに弱みを見せたい、と考えてた。メンバーの前で泣いたのっていつ? 君はリーダーとしてグループを率いなきゃいけないから、って結構我慢してるんじゃ?

アブストラクト:確かに我慢してる。たとえ小さな悩みでも、それを伝えたほうがいいっていうのはわかってる。何事も明らかにするのが大事だから。今、いちばん大事なのはこのアルバムを完成させること、俺らができる限りの最高傑作をつくること。だから俺は、こんな小さなことで影響されたくない、今の俺は弱くないし、こんな小さな悩みがだんだん大きくなっていって不満に変わることなんてない、って必死で思おうとしてる。Brockhamptonの完璧なサビを書こうと頑張ってるけど、そういう気持ちに負けてくじけてしまう。

ラブーフ:最後に泣いたのはいつ?

アブストラクト:ずっと泣いてるよ。最近は特によく泣いてる。ステージでは見せないようにしてるけど。後ろを向いたりね。別に、弱いと思われてしまう、とか考えてるわけじゃないんだけど、人前で泣くのが怖いんだと思う。

ラブーフ:大変だな。最後にステージで泣いたのは?

アブストラクト:何回か前のショー。

ラブーフ:泣いた理由は?

アブストラクト:ノルウェーでのショーだった。俺は空を眺めていて、イヤモニを外して観客の声を聞いた。そしたらみんなが、ジョバのヴァースを歌ってたんだ。それで、サウスセントラルでこの曲を制作しているときのこと、何もなかった俺らのことを思い出した。ここまでいっしょにやってきたこと、何かを生み出せたことに感動したんだ。

ラブーフ:もしスタジオが火事になって、ライブラリから1曲しか持ち出せないとしたらどの曲を選ぶ?

アブストラクト:新曲の「Dearly Departed」かな。最新アルバムに収録される。

ラブーフ:その曲マジでやばいよな。オーケー、最後の質問。君は何者?

アブストラクト:どう答えればいい? 名前とか? 職業?

ラブーフ:好きなように答えてくれ。

アブストラクト:常に変わっていくからな。俺はケビン・アブストラクト。日々様々なものを探求しているアーティスト。これがいちばん的を得てると思う。

ラブーフ:愛してるぜ。また早く会いたいよ。君の誕生日をいっしょに祝うのが楽しみだ。

アブストラクト:うれしいよ。今回は付き合ってくれてありがとう。

Kevin Abstract's interview originally appeared in i-D's The Post Truth Truth Issue, no. 357, Autumn 2019.

KEVIN ABSTRACT on the cover of i-D
Kevin wears all clothing Calvin Klein Jeans.

Credits


Photography Mario Sorrenti
Styling Alastair McKimm

Hair Bob Recine for Rodin.
Make-up Kanako Takase at Streeters.
Nail technician Honey at Exposure NY using Dior.
Photography assistance Lars Beaulieu, Kotaro Kawashima, Javier Villegas and Chad Meyer.
Styling assistance Madison Matusich, Milton Dixon III and Yasmin Regisford.
Hair assistance Kabuto Okuzawa and Kazuhide Katahira.
Make-up assistance Kuma.
Production Katie Fash.
Production assistance Layla Néméjanksi and Adam Gowan.
Creative and casting consultant Ruba Abu-Nimah.
Casting director Samuel Ellis Scheinman for DMCASTING.

This article originally appeared on i-D UK.

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