写真家・阿部裕介がビーチクリーンをする理由

写真家の阿部裕介が五島列島の福江島で、高校生らと共にビーチクリーンを実施。今問題視されているマイクロプラスチックとは? なぜ写真家である彼が海洋汚染に興味を持ったのか。本人に訊いた。

by i-D Japan
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20 November 2019, 11:00pm

「海洋汚染」ときいてあなたは何を思い浮かべるだろうか。四方を海に囲まれた島国でありながら、ここ日本において、このグローバルな問題に対する意識は決して高いとは言えない状況だ。これを書いている私も例外ではなく、「海に流されたプラごみが小さく分解されて、海洋動物がそのマイクロプラッスチックを餌と間違って食べてしまう」というぼんやりした認識があるくらいだ。

そんなときに見かけたのが、写真家・阿部裕介のインスタ投稿だった。

TAKAHIROMIYASHITA The soloist.をはじめとしたブランドのルックブックやファッション誌の撮影も数多く手がけている彼だが、ヨーロッパ・アフリカ・欧米・アジア諸国を巡りながらの撮影を行なうなど、その活躍の幅は広い。THE NORTH FACEの広告に起用されたヨセミテの山景や、よさこい祭をドキュメントした写真集『ヨサリコイ』で彼の作品に触れている人も多いはずだ。

その投稿には、透き通ったサファイア色の海とビーチでゴミ拾いをする学生たちの姿があった。続いて、海洋プラごみ回収装置〈シービン〉が海面に浮遊しているごみを集めている写真もアップされた。どうして阿部裕介が海洋ごみを?

早速、本人にその疑問をきいてみた。

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海面に浮かぶゴミや油を吸いとるシービン

写真の真っ青な海と白い砂浜は、五島列島の福江島。阿部はこれまでに度々その地を訪れており、海洋汚染への問題意識はそうしたなかで生まれていった。美しい海と流れ着くゴミのコントラストに衝撃を受けたのだ。そこで思いついたのがビーチクリーンだった。「島の高校生がゴミプロジェクトを行なっていたので、一緒にやってみようと計画しました」

砂浜に流れ着いたゴミはどのようなものなのだろうか。

「発砲スチロール、ペットボトルなどが細かく削り落とされて、砂に混じり込んでいました。取れません。それらが海に流れて、魚が食べて……そのあとは想像がつきます」

魚を食べる私たちに帰ってくるのだ。意外にも、ゴミプロジェクトに参加していた高校生たちでもそのような事実に気がついている人が少ない印象を受けたと阿部は話す。

「高校生が、外国から流れ着いたゴミを拾い、『外国からのゴミがたくさんある』と見せてくれたことがありました。それはそのとおりですが、裏を返せば、こちら側のゴミもどこか違う国に流れ着いているということです」

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砂浜で拾われたゴミ
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ビーチクリーンを行う高校生

「いちど海に流れたゴミは、回収するのがとても困難になります。細かく削れたプラスチックは言うまでもありません」

マイクロプラスチックや海洋汚染に関するニュースはマスメディアでもいまだに取り上げられることも少なく、ローラのような著名人がごくたまにSNSで発信するくらいだ。海外ではハーリー・ウィアーをはじめ、プラスチック汚染をテーマにしたプロジェクトを行なう作家も多い。しかし、日本では社会的なアクションを行なうクリエイターもほとんど見当たらない。このような状況を阿部はどのように見ているのだろうか。

「クリエーションをしている人が、その現実を目の当たりにしたら変わるはずです。僕はそうでした。人々の目が環境問題に向くよう無理強いすることはできません。けれど、僕らが見本になって行動することで、それを見る人が興味を持つ可能性はあると思います」

虚実があいまいになり、日常的な情報のほとんどをSNSを介して触れている今、リアリティを自身の目で見ることの重要性は高まっている。現実や社会に対して鋭い審美眼や批評眼をもっているのがクリエイターだとすれば、いち早く問題に気づくのは彼らであるはずだ。阿部のような作り手がおそらく日本にはもっと必要だ。


Credit

Photography Yusuke Abe
Special Thanks Sustainable Japan

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Photography