グローバル気候マーチに参加する、放課後の高校生たち

約2800人が参加。9月20日に東京・渋谷で開催された「グローバル気候マーチ」の模様をレポート。気候危機を訴える参加者の中には、学校帰りの高校生たちの姿があった。ビリー・アイリッシュやジャネール・モネイも賛同する​アクティビスト、グレタ・トゥーンベリの活動は世界中に広がっている。

by Sogo Hiraiwa; photos by Hana Yamamoto
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26 September 2019, 9:05am

数日前、ジャネール・モネイのSNSのアイコン画像が一新された。モネイの顔があったそこには今、一人のおさげ髪の少女の写真が使われている。グレタ・トゥーンベリ、2018年から世界で注目を集めている16歳の環境アクティビストだ。

現在NYで開催されている国連の温暖化対策サミットには、燃料を大量に消費する航空機の利用を拒み、自国スウェーデンからヨットで大西洋を横断して出席した。この移動によって巧みにメディアの関心を集めたトゥーンベリだが、彼女が〈アクティビスト〉と呼ばれる所以はそれだけではない。

2018年8月、トゥーンベリはスウェーデンの国会議事堂前で座り込み(シット・イン)を行なった。シット・インは、人種差別の撤廃を訴えた黒人大学生たちが1960年に米ナッシュビルの飲食店ではじめた非暴力の抗議アクションである。その後、公民権運動へと発展していく端緒となった。

トゥーンベリの座り込みもこの流れのなかにある。しかし、彼女には一緒に座ってくれる仲間はいなかった。「気候のための学校ストライキ」と書かれた手製のプラカードを脇に置き、彼女はたった一人で座り込み、静かな抗議を実施したのだ。

この登校拒否のストライキは「#FridaysForFuture(未来のための金曜日)」として世界中に広がり、学生たちを中心に毎週金曜日にデモや集会が組織されていった。「ここまで大きくなるとは予想していませんでした」とトゥーンベリは今年3月のi-Dのインタビューで語っている。この半年でも、抗議運動への参加者はさらに増えている。

9月20日からは世界各国で、気候サミットと国連総会に合わせた、温暖化防止・気候正義を求めるデモやイベントが開催されている。150ヶ国以上で、400万人以上が参加。東京でも約2800人が参加し、渋谷の街を歩いた。

i-Dでは、20日に東京で行なわれたグローバル気候マーチを取材した。

グローバル気候マーチ, 気候変動, 気候正義, グレタ・トゥーンベリ
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午後5時、「グローバル気候マーチ」の開始地点である青山の国連大学前広場に行くと、すでにプラカードを持った人で溢れかえっていた。いい意味で予想を裏切られる。i-Dでは今年2月に、国会議事堂前で行われた日本初の〈学校ストライキ〉を取材したが、そのときの参加者はわずか十数人だった。

「ここまで大勢集まるとは思いませんでした」と語るのは、今回のマーチの主催者団体のひとつであるFridaysForFutureTokyoのスタッフだ。

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一方で参加者からは別の意見も聞こえてきた。「もうちょっといてもいいと思う」都内の高校に通う平澤綾と有吉萌はそう話す。SNSで流れてくる海外でのデモや集会の様子と比べると、どうしても物足りなさを感じてしまうのかもしれない。

今回が初のマーチ参加だというこの2人は、学校終わりに電車を乗り継いで駆けつけた。彼女たちのように放課後に参加していた高校生は多く、リュックを背負った制服姿はラフな格好が多い参加者の中でも目立っていた。

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15歳の小林由奈と16歳の金世琳(キム・セリン)も放課後にマーチに足を運んだ。2人ともこうしたアクションに参加するのは初めて。自分たちにできることは限られていると言い、「(気候危機に対する対策を)国にしっかりやってほしい」と話す。その口調は強く、自分たちだけでは解決できないことへのもどかしさを噛み締めているようだった。

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そうこうしているうちにマーチが出発、青山通りを歩き始めた。人数はさっきよりも多くなっている。テンポの良いカウベルの音と日英混同のシュプレヒコールが表参道に差しかかると、ファッションブランドの店員は何事かと店舗から顔を出す。道路脇の歩道には、肩からカメラを垂らし、持参した脚立に座った人たちがノートパソコンのキーボードを猛スピードで叩いている。新聞社かニュースサイトの記者だろうか。

学校の掲示板でマーチの存在を知ったと話すのは、都内の高校に通う下川美裕だ。彼女は自分から誘ったという母親と並んで行進していた。元々叫ぶつもりでいたのが、当日風邪気味で喉が痛くなってしまいマスクをつけている。声を出せないのは残念そうだったが、マーチの後半で再会したときには友達と合流し、マスクも外していた。

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マーチの途中から合流する参加者は、決して少数ではない。ワイワイ楽しそうに歩いていた都立国際高校1年生の4人組に訊いてみると、そのうちの2人は友達が渋谷の街を行進しているのを見かけて、その場で合流したのだという。この瞬発力、ノリの良さ。最初から参加していた2人は共に女子サッカー部で、部活の先輩に教えてもらいマーチへの参加を決めた。

顔に「Climate Justice(気候正義)」「No Planet B(代わりの星はない)」と描き込んだ彼女たちは、マラカスをシャカシャカ振りながら宮益坂を上がっていく。もう少し話を訊こうとすると、キャッキャとはしゃいでなにやら楽しそうな様子。どうやら、マーチの前方に憧れの先輩がいるのを見つけたということらしかった。

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ここまで触れなかったことに、外国人参加者の多さがある。割合にしておそらく50〜60%。旅行者もいたはずだが、その大半は東京に暮らしている人だ。プラカードのメッセージは英語が多く、フランス語で書かれたものもあった。

香港からの留学生もいた。彼女はこう話す。「参加するのは今回が初めてです。自分の国でもこうした活動に参加したことはありませんが、私は今日本にいるのでここに来ました」

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その言葉に、今回のマーチの意義を痛感した。世界中で同日に開催されたこの「グローバル気候マーチ」は、参加者が地球上のどこにいようとも参加することができる、全世界的なアクションだった。地球上のどこにいるか、どこに住んでいるかは関係ない。気候変動/気候危機においては、全人類が当事者なのだ。

気候変動, グローバル気候マーチ

そこで思い出されるのが、マーベルの大ヒット映画シリーズMCUでアベンジャーズが戦っていた最強の敵、サノスだ。全宇宙の半分の生命体を消し去る凶悪なこのヴィラン(悪役)は、監督のジョー・ルッソによれば「気候変動のメタファー」だった。

気候変動による影響は、指パッチンのように一瞬では現れない。それはきっと、海面上昇や台風や異常気象という現象として、ゆっくりジワジワとやってくる。

ビリー・アイリッシュは20日、「TICK TOCK(チックタック)」と時計が刻む音を表す文字をプリントした服を着たGIFを自身のTwitterに投稿した。

「チックタック! 私たちに残された時間は少ない。気候危機はマジで起こってる。私たちは声を上げて、リーダーたちに行動を起こすよう求めないと」

チックタック、チックタック⋯⋯タイムリミットは確実に近づいている。

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