夏帆インタビュー:中途半端で微妙な“いま”の幸せ

主演、助演を問わず、日本を代表する演出家からのオファーが絶えない夏帆。“清純派”からの脱却を図った20 代前半。さらなる一歩踏み出し、自由を手にした20 代半ば。何が彼女を変えたのか? その素顔に迫る。

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30 October 2017, 9:25am

「もう26歳」それとも「まだ26歳」だろうか?「 三井のリハウス」のCMや映画『天然コケッコー』など、あどけなくも鮮烈な10代の頃を思い浮かべてみると「え?ついこないだでしょ?」と言いたくもなる。しかし、これまでに演じてきた、さまざまな印象的な役柄を指折り数えてみると、10代からのわずか十数年で、これほどのキャリアを積み上げてきたのかと改めて驚きを禁じ得ない。

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「いまが一番、中途半端で微妙な立ち位置にいるのかもって気がしてます。若手でもないし、かといって中堅でもなく。もう学生を演じる年齢でもないし、でも母親にはちょっと早いし……」。そうボヤくように語りつつ、夏帆はその中途半端で微妙な" いま"という時間を楽しんでいるように見える「いやいや、いまだに毎回、現場に入ってから『全然ダメだ!』ってなりますけどね(苦笑)。十数年もやってきて『こんな芝居しかできないのか!』って自分に愕然としますよ」

根はネガティブ。油断するとインタビューでもマイナスな言葉が並ぶが、不思議と彼女の口から発せられると楽観的に響く。デビューから10代を通じて"清純派"というイメージがついて回った。そこからの脱却を図ったのが20代前半の時期。ドラマ『ヒトリシズカ』では闇を抱えた少女を演じ、『みんな!エスパーだよ!』では園子温監督の下でコメディに挑み、映画『パズル』では全身血まみれの姿をさらすなど、イメージを覆す役柄を立て続けに演じ、新境地を拓いた。

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「10代の頃の清楚なイメージ、ひとつのカテゴリに入れられている自分に息苦しさを感じていたんですね。20歳を過ぎて『もっといろいろやってみたい』という意思を周りにもぶつけるようになって、少しずつ世界が広がって……」

20代前半での最初のギアチェンジを経て数年、20代の半ばに差しかかったここ最近で、さらにもう一段、新たなステージへと歩みを進めたように見える。『海街diary』では、アフロヘアといった原作のわかりやすい要素をなぞることなく、是枝裕和監督は、気張らず、力を抜いて自分の居場所を見つける夏帆の本質的な姿に四姉妹の三女の静かな、しかし確かな存在感を見出した。昨今の役柄自体は、20代前半で演じた尖った役と比べるとやや落ち着いた等身大の人物で、一見、地味に見えるかもしれないが、だからこそ彼女の演技力の高さ、そして独特の存在感が光る。気負いから解き放たれ、自由を謳歌しているようにも感じる。

「いまでも、もっともっと自由になりたいって思っています。ただ、最近になってようやく、少し肩の力が抜けてきたのかな……。以前は無我夢中で『新しい自分を!』『やったことないことをやらなきゃ』と思って、次のステップにいくことに必死になっていたけど、やっと少しは自分を客観的に見られるようになったのかもしれません」

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最新主演ドラマ『予兆 散歩する侵略者』で演じている主人公も、夫と暮らす一見ごく普通の女性だが、奇妙な"侵略者"から夫を守るべく、ゆるぎない決意を胸に戦う。同作への出演で何より嬉しかったのが「ずっと憧れていた」という黒沢清監督の演出を受けることができたこと。『海街diary』で是枝裕和監督、ドラマ『東京ヴァンパイアホテル』では再び園子温監督に呼ばれ、今回の黒沢作品に続き、秋には宮藤官九郎脚本のドラマ『監獄のお姫さま』が控える。日本を代表するクリエイター陣からのオファーが続くが「正直『私でいいのかな?』って(笑)。主演でお話をいただくと、嬉しい反面『観る人いるんだろうか?』って思っちゃいます」と、自信からは程遠い言葉が口をつく。

それでも、女優という仕事をやめられないのは、思いがけない瞬間にこみ上げてくるしあわせの味を知っているから。「ふとしたとき――現場で出番を待ってボーっとしている時間や、相手とのお芝居の中で思いもよらない方向にシーンが動いたとき、クランクアップの日、舞台挨拶の壇上で――『ああ、夢みたいだな』って感覚に襲われる瞬間があって。その場にいられることが、たまらなくしあわせに感じるんです」

さらなる自由を求めて、彼女は地図のない旅を続ける。

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Credit


Photography Bungo Tsuchiya
Styling Masataka Hattori
Text Naoki Kurozu
Hair and Make-up Sayuri Yamashita at 3rd.
Photography assistance Masaki Nagahama. Styling assistance Haruna Aka, Yu Araki.