「何気ない私たちの行動全てが、 世界のどこかで竜巻を起こしてしまっているのかもしれない」自主隔離フォトダイアリー:Jo Motoyo
東京を拠点に活動する映像作家、Jo Motoyoの目を通して見る自主隔離の日常。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)によって浮かび上がった問題がひとつではないように、日常も多様な顔をもっている。見慣れた日常の風景も、今では少し違ってみえている。それではさて、写真家たちは目下のコロナ・デイズに何を見出し、どこでシャッターを切るのか。
〈自己隔離フォトダイアリー〉第6弾は、国内外の活躍が期待される映像作家、Jo Motoyo。脚本・監督を務めたショートフィルム『0時(英題:Midnight)』は、アジア最大級の広告祭であり若手映像作家の登竜門 Adfest 2019で Fabulous Five 2019 観客賞を、Young Director Award 2019 短編フィルム部門で日本人女性初となるシルバー賞を獲得した。さらに、書き下ろし企画が、Tsutaya Creators’ Awardにて監督賞を受賞し、長編映画監督デビューが決定している。今後の飛躍が期待される映像作家のひとり。
新型コロナウイルス(COIVID-19)の感染拡大の前と後で変化した自分の考え方や、社会への認識について。
ここのところ、実は誰のことも恋しくない。薄情だろうか。
そのくせ積極的に近所の人には挨拶する。
「こんにちは」「いい天気ですね」まで出かかって、毎回言わずに終わる。
多分言わないままここを去るんだろうな。
企業がロゴを離す。世の中にエモい言葉が氾濫する。
そしてそういうときは啓蒙的な言葉も氾濫する。
「飽きた」ってヤマダくんが言う。
「StayHome まじ耳タコ」って友達が言う。
うん、うん。
そうだね、そうだね。
電話でそう返事をしながら、
彼らとのこのもどかしい距離感がとても心地よいと感じている自分がいる。
もしかすると会いたくて会いたくて震えるくらいが私には丁度いいのかもしれない。
自粛期間が終わったとき、私は確実にこの時間のことを恋しく思っておセンチになると思う。
必ず終わってしまうこのサナギの期間。
ヤマダくんはやりたいことが出来なくて気持ちが沈んでいるみたいだけど。
いつかこの快適なサナギを突き破ってまた外に出ないといけないのかと思うと、
もう既に面倒な気持ちでいっぱいである。
サナギはサナギの中で上手く機能しはじめてしまっていた。





今後の社会に期待することについて。
バタフライエフェクトという概念が昔から好きでした。
ブラジルにいる一匹の蝶の羽ばたきによってテキサスで竜巻が起きるかもしれないという学説です。
自分の気付かないところで、世界はゆるやかに繋がっているのだと想像させてくれる素敵な概念だと思っています。
私や、これを読んでくれている方や、
風で揺れるベランダの草木、
手の中にある見慣れたカネとテレビの中の政治家、
そしてブラジルにいる一匹の蝶は、
見えないようなとても細い糸で繋がっている。
そして互いに作用し合っている。
もしそうなのだとしたら、何気ない私たちの行動全てが、
世界のどこかで竜巻を起こしてしまっているのかもしれません。
他人事などこの世にはないのかもしれません。
私たちの小さな羽ばたきが、
誰かを笑わせているのかもしれないし、その逆もありえるかもしれない。
最近は少しだけ野菜を多く食べています。
週に一度、肉を食べない日も作っています。(出来ない日もあるけど )
私たちの小さな羽ばたきが世界をベターな方向に揺り動かしていけばいい。
できることから少しずつ。
何事も無理する必要はないように思います。
その中で出来る私やみんなの、小さな羽ばたきが、
いつか竜巻になるまで。




All images courtesy Jo Motoyo