愛を念頭に置いて。kZmが描くユートピア:interview

自身のスーパーヒーローだと語る、野田洋次郎(RADWIMPS)や5lackとの共演も果たし、生み出した2ndアルバム「DISTORTION」は、瞬く間にApple Musicアルバム総合ランキング1位を獲得。表現に対する欲求の赴くまま突き進む、kZmの今夢に描かれたユートピア。

by Sota Nagashima; photos by udai
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10 June 2020, 8:00am

YENTOWN所属のラッパー、kZm。2ndアルバム「DISTORTION」は、豪華かつ個性的な客演陣を招きながらも、抜群のバランス感覚で見事にひとつの作品へと昇華された。騒がしい社会的状況の真っ只中でもリリースすること止めなかった背景や、音楽によって切り開かれてきたこれまでの人生について話を聞いた。

—— まずは、kZmさんの最近のムードを聞かせていただきたいのですが、今音楽を聴く際に一番身近にある感情って何ですか?

もちろん悲しさなどもあったりはしますが、気持ちいいという感情になる音楽を聴いてることが多いですかね。単純に気持ち良いと感じる曲もあれば、このビートにこういう乗せ方するんだという様な気持ち良さもある。音楽を始めてから、そういう俺だったらどうするか、などをやっぱり考える様になってしまって。昔はもっと単純にこの曲ヤベェと楽しめていたものが、最近は食らっちゃうことも増えた。それは良い面であり悲しい面でもありますね。

—— kZmさんが今思う「気持ち良い曲」を3曲教えてください。

Yung Laenの「Boylife in EU」、Octavianの「Poison」、Tychoの「Weather」。

—— それぞれ選ばれた理由も聞いて良いですか?

Yung Laenの曲は、ビートにしろ乗り方にしろ本当に聴いたことない。最初は違和感があったけど、聴いている内に段々表情が変わっていく感じが好きです。Octavianの曲は、去年の秋ぐらいからテクノやハウスの四つ打ちをすごい聴くようになった脈絡で、アフロビートやダンスホールなどの暖かい曲にも興味が湧いてきてたので選びました。単純に外で聴きたいですね。

—— 3つ目のTychoは前述のアーティスト達とまた違ったジャンルですね。

そうですね。すごく個人的な話なんですけど、「DISTORTION」をリリースする日の夕方が、そのジャケットの写真の夕焼けとすごく似て綺麗だったんですよね。それで一人でビルに登って、ずっと屋上でTychoの曲をアルバム単位で聴いてたんですけど、すごいエモが入っちゃって(笑)。なんか今日からまた新しい日が始まるんだろうなとか。Tychoはそんなこの日の夕焼けにすごい合っていて、その時の良い体験を思い出させてくれる曲です。

—— 1stアルバム「DIMENSION」は、ヒップホップの枠から脱した物を作ろうとされていたんですよね? こうやって普段から色々なジャンルの音楽を聴かれているからこそ生まれた考えだったのでしょうか?

自分は色々な音楽を聴くインプットがあったから音楽的にも色々な表現の幅ができるなと思っていたし、その頃流行っていたトラップにも飽きていた。後は、感情的にも表現したいことが攻撃的なラップだけじゃなかったから、自然と歌も入ったり。「DIMENSION」は次元という意味なんですけど、やっぱり1stアルバムって名刺みたいな物だから、自分の根幹を作ろうという意識があって。それで枠から脱したいというか、新たな自分の”次元”を作りたいと。好きな美術家の荒川修作さんもよくインタビューなどでDIMENSIONと言っていて、頭に残っていたキーワードなんです。

—— 昔から実生活でも枠にハマるということは嫌いでしたか?

良いことか悪いことか分からないですけど、決められた遊び場で遊ぶというよりかは、遊び場を勝手に作っちゃうという様な節はありましたね。単純に昔は金が無かったというのもありますけど(笑)。誰も知らなかった楽しみを知るのが、好きなのかもしれないですね。

—— 今回リリースされた2ndアルバムを「DISTORTION」というタイトルにした理由は?

世の中やっぱり、1stが一番と言われるアーティストが多いと思うんですけど、自分も前作である程度評価してもらった分、それは絶対に更新させていきたかった。よくよく考えると、「DIMENSION」で自分の次元を作りたいという考えが、自分の次元に捕らわれているんじゃないかとも気付いて。ディストーションは歪みみたいな意味なんですけど、宇宙のビッグバンのように最初にポッと出てきたものが歪んでいって爆発するような、自分で作ったものを一回歪ませて円になって戻ってくるという作業をしたかったんです。

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—— なるほど。

音楽的にもラップした声を歪ませるエフェクトや、トラックの音色的にもディストーションは自分に合うなと思っていたので、色々なジャンルのディストーションを使ったものを自分流に落とし込んでいった感じです。

—— そんな「DISTORTION」はApple Musicアルバム総合ランキング1位という快挙を成し遂げましたね。リリース前、そんな未来は想像していましたか?

全く想像してなかったです。前回「DIMENSION」は6位とか7位であんまりピンと来てなかったので、数字とか順位はあんまり気にしてなかった。でも、今回短期間でもサブスクで日本一聴かれていたと思ったら、すごい嬉しかったですね。分かりやすいので、親とかもすごい喜んでくれて。

—— 手応えももちろんあったと思いますが、これがチャートで1位を獲るんだ、という逆に驚きもありませんでしたか?

驚きしかないです。シンプルに嬉しかったのと、日本でこういうことをやって一瞬でも1位になるんだという驚き。だって、GABBAっすよ(笑)?

——(笑)。たしかに。

日本の音楽は、ある程度強い事務所のアーティストが日本向けに作っていたりするじゃないですか。それを一瞬でも風穴を開けれたのは嬉しかったですね。

—— 枠を超えて表現しようと色々な要素を詰め込んだ結果、自然と様々な人が聴ける作品になったのかなと思います。

そうですね。広がれば良いかなぐらいで、元々たくさんの人に聴いて欲しいという意識よりかは、ただヤバいアルバムを作りたいと思ってました。

—— SNSなどでは、リリース時期の葛藤などについても長文で話されていましたね。

リリースのタイミングで、今回のコロナで状況がどんどん悪くなってきて。やっと出来たのにマジかよ、っていう。そこでちょっと頭良くなって、リリースしないでおこうとすることもビジネスやお金の面を考えれば出来たんですけど。ここで俺らまで止まっちゃったら世の中は本当につまらないし、このタイミングで出来たということは何か意味があるとも思えたので。正直に出した方が良いかなと。

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—— あのコメントの最後で「愛を念頭においてやりたい事をやってきます」と発言された意図は?

最近色々なニュースがありますが、こういう社会全体の状況悪くなってくると、ストレスや人の粗探しが直接ネット社会に出るじゃないですか。それってマジで意味ないと思うんです。覆面で永遠と煽り合いみたいなのを続けている人達を見て、これをやって何になるんだろうと。目的が見え無さ過ぎて萎えたっすね。発言した人も別に発散はされないと思うし、全体の気が下がるだけ。だから、あの時は全部をマイナスに考えるんじゃなくて、ポジティブに考えれば良いのにと思って、愛を念頭においてと言いました。

—— 逆にkZmさんがこれまでの人生で辛かった時、音楽に救われた瞬間はありましたか?

前のグループを辞める前、三ヶ月ぐらい誰とも連絡取らずに家から出なかったことがあって。音楽を辞めようと思って他の仕事を考えたり、本当に色々あったんですけど。そんな時に5lackの「NEXT」という曲の「考え込むな」っていうリリックを聴いて、そうっすよね、みたいな(笑)。しかも、「考え込むな」と言う奴って、絶対考え込んだことのある奴の台詞だろうから。同じ痛みが分かる人なのかなと思って、すごく背中を押してもらえました。

—— そんな恩人とも言える様な人と、今回も一緒に曲を作ってるというのはすごい事ですよね。

そうですね、よく分からないんですよ。5lack君も、(野田)洋次郎君も俺の中でスーパーヒーローなので。夢なのかなってマジで思いますね(笑)。自分がずっと聴いてきたアーティストが認めてくれて、つるんでくれるのはなかなか良い人生だなと思います。

—— 普段どんな話をされるんですか?

本当に下らない話ばっかりで、そこは他のみんなといる時と変わらないと思います(笑)。でも、ふとした時の考え方だったり仕草の中にトラックの上にいる時の5lack君が垣間見えて、やっぱり音楽からそのまま出てきたような、本当にリアルな人なんだなって思います。

—— 逆に野田さんとは?

洋次郎君は、天才タイプで俗世の人間と関わらない様な人だと思っていたんですけど、人としても出来上がった方でビックリしました。普通に飲んだら朝9時とかまでいくような人なのに、家に行ったらアカデミー賞のトロフィーとかあって、ちょっとよく分からないです(笑)。でも、あの人もお客さんが求めている事と、自分のやりたい事をすごいバランスよく魅せれている人だと思うので、そういう点も見習いたいと思いますね。

—— 挫折しそうになってもここまで音楽を続けてきたからこそ、今ではそういう憧れだった人達と一緒に音楽を作れている。これから夢を追う若者の活力にもなる話だと思います。

ずっと親には、お前には絶対に好きな事で飯を食うなんて出来ないと反対されていて。結構仲も悪かったんですよ。でも、見てろよと思って、ずっとやり続けて。今こうやって音楽で飯を食えるようになって親もすごい喜んでるので、それは嬉しいですね。

—— 今後、アーティスト・kZmはどこを目指して活動していこうと思ってますか?

それこそRADWIMPSや、宇多田ヒカルなどオーバーグラウンドでもちゃんと本物で評価されている人もいるので。自分の表現を崩さないまま、そういう所に自分もいけたらなと思います。大衆に向けたビジネスライクなことは自分にできないので。

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kZm 「DISTORTION」
Release Date:2020年4月22日(水)
Label:YENTOWN / bpm tokyo

Tracklist:
01. Intro – Distortion – (Prod. Chaki Zulu)
02. Star Fish (Prod. Chaki Zulu)
03. GYAKUSOU (Prod. Kenny Beats)
04. 27CLUB feat. LEX (Prod. SIL V3 R 100 & Chaki Zulu)
05. JOZAI (Prod. Haaga)
06. Anybody.. feat. 小袋成彬 (Prod. Chaki Zulu & 小袋成彬)
07. Skit
08. バグり feat. MonyHorse (Prod. Chaki Zulu)
09. G.O.A.T (Prod. Chaki Zulu)
10. Give Me Your Something feat. Daichi Yamamoto (Prod. DISK NAGATAKI & Chaki Zulu)
11. Fuck U Tokio I Love U! feat. 5lack (Prod. DISK NAGATAKI & Chaki Zulu)
12. 追憶 feat. Yojiro Noda (Prod. Chaki Zulu)
13. Half Me Half U (Prod. RRAREBEAR)
14. Yuki Nakajo (Prod. VaVa)
15. 鏡花水月 (Prod. U-Lee)
16. But She Cries Remix feat. BIM (Prod. Chaki Zulu)
17. TEENAGE VIBE feat. Tohji (Prod. Chaki Zulu)

Instagram: @kzm9393
Twitter: @kazuma9393


Photography udai at YouthQuake.
Interview and Text Sota Nagashima

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