ロンドン在住のシネマトグラファーRina Yang。彼女が語ったクリエイティブな制作過程と映画業界の未来について

Netflixのヒットドラマ『Top Boy』から、『シン・エヴァンゲリオン劇場版』のテーマソングとして書きおろされた宇多田ヒカルの『One Last Kiss』のミュージックビデオまで手掛ける、アジア人女性シネマトグラファーのRina Yangへのインタビュー。

by Kazuki Chito
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28 June 2021, 1:28am

Netflixのヒットドラマ『Top Boy』から、Björk、FKA Twigs、Skepta、Jorja Smith、また『シン・エヴァンゲリオン劇場版』のテーマソングとして書きおろされた宇多田ヒカルの『One Last Kiss』のミュージックビデオや大手ブランドのプロモーションビデオまで幅広く制作を手掛けるアジア人女性シネマトグラファー(撮影監督)のRina Yangは、破竹の勢いで次々とクリエイティブな作品を世に打ち出す。今回は業界内で噂され、尊敬を集める彼女にオリジナルな制作過程と映画業界に対する彼女の思いについてのインタビューを行った。

──簡単に自己紹介してもらえますか?

シネマトグラファーのRina Yangです。宇都宮出身で今はロンドンに住んでいます。20か21の時にロンドンに来たから15年くらいになるのかな。

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──シネマトグラファーとしての初めてのプロジェクトは何でしたか?

友達と撮影したインディー音楽のミュージックビデオですね。そこから色々なプロジェクトをやり続けていたらこうなっていました。雪玉みたいに、気づいたらある程度の大きさになっていた感じです。でも、駆け出しの頃は大変でしたね。

──今いる居場所まではどうやって辿り着きましたか?

業界の波に上手く乗れたというのが大きいと思います。私がシネマトグラファーとして活動を始めた当時は、ロンドンでも有名な女性シネマトグラファーが手で数えられるほどしかいませんでした。その頃から「映画業界に女性がもっと必要だ!」という波が丁度動き始めて。なので、自分の努力もあったとは思いますが、仕事をゲットしやすい環境だったからこそ、今の立場を確立できたのかもしれません。

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──映画業界で働く女性の数は未だに少ないと思いますが、働きにくさを感じたことはありますか?

かなりの体力仕事なので、身体的辛さはもちろんあります。でも、自分が居心地悪いと思うような環境には身を置かないようにしています。嫌いだったら、やらなくて大丈夫です。自分がやりたいことをやっていればOKだと思っています。

──脚本やテーマを映像化する際に気を付けていることはありますか?

撮るヴィジュアルが「うるさく」なりすぎないように気を付けています。ドラマや映画でうるさい映像が長時間流れてしまうと、人は疲れるし、どこに注目すれば良いか分からなくなってしまいます。ストーリーが一番大事だし、映像は二の次だと思っています。なので、ストーリーが持つ主張に添いつつ、邪魔しないような映像を作ることに心がけています。映像を撮る理由は私がシャウトアウトするためではなく、ストーリーを伝えるためなので。

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──うるさい映像とはどのような映像ですか?

アイキャンディーな映像です。刺激が強くて、中毒性があまりにも高すぎるような。光がバチバチしているような映像ですかね。

──『Top Boy』など、Rinaさんの映像を見ると色が豊かに使われているような印象を受けます。

よく言われるんですけど、実際あんまり意識はしていません。色って周りに溢れてるじゃないですか。色ありますよね。普通です。この世界は色に溢れています。例えばバーへ行くと、天井に吊るされている照明の光の色、冷蔵庫の中のライトの色、人々が身に纏っている衣服の色、たくさんの色が存在していることが分かります。私はそれらの色を映し出してるだけ。人生で見た色を映像化してるだけなんです。

──『Top Boy』で語られている文化については勉強したりしましたか?

『Top Boy』は東ロンドンで繰り広げられるドラマです。私はずっと東ロンドンに住んでいて、も心は東ロンドンとともにあるので、あまり勉強する必要はありませんでした。私は彼らのような生活環境にはありませんが、どんな生活をしているのかは安易に想像できる環境にありました。なので、私が見る東ロンドンを再現するだけでしたね。

──先日、Rinaさんが撮影されたNIKE KOREAのプロモーションビデオを拝見しました。パワフルなメッセージに溢れていたと思います。

あのストーリー自体に力強い意味があるものでした。だからこそ、前半部分はリアルから離れないように意識しました。現実を忠実に再現するように、余計なものを足さないようにしましたね。後半部分はまだ現実となっていない、私たちが思う理想や未来を物語るものだったので映像を楽しく、希望に満ちたものにしました。ライティングを使って色をたくさん付け加え、緩急をつけるようにしました。

──撮影の際に欠かせないものはありますか?

一緒に撮影を行う良いクルーですね。ビジョン達成に向けて、一丸となって努力できるクルーが必要です。なので、シネマトグラファーとして活躍するためにはコミュニケーション能力とマネジメント能力が欠かせません。コミュニケーションを通して、クルーの管理をするというのが仕事の大半なので。(笑)

──どのようなモノ・コトからインスピレーションを受けますか?

ブラブラ歩きながら見る街の色ですかね。ストリートライトって都市によって違うんですよ。田舎の方へ行くと暖かい色の光が多いし、都会は冷たい色のものが多いと思います。個人的には蛍光灯の色がとても好きで、アジアではたくさん蛍光灯が使われているのでヨーロッパの照明よりも面白いと思います。あと、撮影する内容が決まっていれば撮る対象が自分の目にどうやって写っているかを勉強しますね。リアルさを追求します。

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──映画業界で働くアジア人の数は増えると思いますか?

はい、思います。でも、日本人はまだ少ないですね。韓国ではポン・ジュノのような若く、偉大な映画監督が出てきているのに日本からは若い監督がまだ出てきていません。理解できませんね。日本の映画業界で働いていないのでよく分かりませんが、構造が悪いのでしょうか。

是枝さんは国際映画祭で受賞されたりしていますが、あまりに出てくる数が少なすぎると思います。将来に期待ですね。

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──そんな日本でシネマトグラファーを志す若者にアドバイスはありますか?

多分、若い時代に日本でブレークすることって今はまだ難しいと思います。ヨーロッパでやる方が簡単じゃないんですかね。(笑)まあ、言えることは「作りたいものを作って、一生懸命頑張って、お互いをサポートし合う」ってことですかね。

──日本の映画業界で注目する人はいますか?

山田智和くんとかの映像を見ると、日本も結構イケてるじゃんって思ったりしますね。トランジションが生まれつつあると思います。ビジュアルのクオリティは少しずつレベルアップしてきていますね。10年前の日本との違いが出てきています。でも、もっと若い映画監督に出資してあげて欲しいですね。漫画の実写化ばっかりするんじゃなくて。(笑)韓国に続け!って感じですね。

──Rinaさんの次のステップを教えてください。

これからもシネマトグラファーとして映画だけに留まらず、ミュージックビデオやプロモーションビデオなどの様々な映像を撮っていきたいです。昔は映画を撮る人は映画だけでしたが、私は様々なプロジェクトを通して、自分のスタイルを作っていきたいと思っています。

──Rinaさんが思う、映画業界の未来予想図はどんな感じですか?

もっとエキサイティングになると思います。若い世代がどんどん出てきているし、業界における多様性も増しています。既存のスタイルが壊され、新しい型が生まれていくだろうと思います。ワクワクしますね。

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