『ハンター×ハンター』は私のキャリアに影響を与えた: LIA LIA Interview

ベルリン在住のシンガー・ソングライターLIA LIAが、最新曲「I’m a Moth!!」の制作秘話と、少年漫画の魅力について熱く語る。

by MAKOTO KIKUCHI
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05 April 2022, 8:00am

ベルリン在住のシンガー・ソングライターLIA LIAは、架空のキャラクターから実在の人物へと転換の時期を迎えつつある。アーティストとしてのLIA LIAが誕生したのは、とあるアートイベントのオープニングで開催されたガレージ・ライブだった。客の大半がバイカーという初ライブとしては特異な状況のなか、ドイツと中国にルーツを持つシャイな少女は金髪のウィッグを被り、舞台に立った。「他人に自分をそのまま曝け出すのは勇気がいることだから、舞台上ではキャラクターを演じることにした。本当の私はあんまり自分に自信がないし、超セクシーでイケてるってわけでもない。でもLIA LIAは他人がどう思うかなんて気にしない。私にとってのスーパーヒーローみたいな存在なんだ」

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KNITTED FLOWER EMMA HASSELBLAD. WAISTCOAT MAGLIANO. DRESS AND SHORTS (WORN UNDERNEATH) SIA ARNIKA. SOCKS FALKE. OTHERS STYLIST’S OWN.

地毛と見た目の印象が全く違うため「ライブ会場でウィッグを外していたら、スタッフに気付かれないこともあった」という彼女。ウィッグを被って活動していた時期を「ハンナ・モンタナみたいだった」と振り返る。髪を金髪に染めてからは、ステージ上でも本来の自分を曝け出せるようになってきたそうだ。「最近は少しずつLIA LIAと本来の自分が重なってきている感じがする。前ほど無防備でいることを恐れなくなったし、自信も付いてきた。自分だけのスーパーヒーローや架空の友達を持つのは素晴らしいことだし、そのおかげで今の自分がある。でも、本当に人に何かを感じて欲しいなら、たまにはレイヤーを外して無防備になる必要がある」

これまでのLIA LIAらしさを払拭するような新曲「I'm a Moth!!」は、そんな彼女の転換期を飾るのにふさわしい。ギターを搔き鳴らして、大声で自分は蛾だと叫ぶ彼女は、これまでにないほど無防備だ。ミュージックビデオを監修したのはLIA LIA本人。インパクト抜群の蛾をモチーフにした衣裳は、彼女の親友であり、デザイナーのクララ・コレット・ミラモンと共同で製作した。「曲を書き終えてすぐに衣裳のイメージをスケッチした」とLIA LIAは話す。「自分自身を説明するような服にしたかった。私はドジで危なっかしくて、トラブルに巻き込まれがちだから、腕や膝にプロテクターを付けてる。必要があれば敵を蹴飛ばせるように、大きなブーツも履いてるんだ」

この楽曲が制作されたのは、南国での旅行中に寄生虫に感染して長期療養していた頃。「パラダイスにいたはずが病気で2ヶ月も療養しなきゃいけなくなるなんて、本当冗談みたいな話」と彼女は語る。「部屋のなかで毎日曲を書いてた。どう頑張っても悲しくて暗い曲にしかならなくて、フラストレーションを感じてるときに、ギターを手に取って思いっきり肺から声を出してみたんだ。歌詞はそのとき無意識のうちに引き出されてきたもの」。この曲の歌詞を「自伝的」だとLIA LIAは説明する。ドイツの田舎町と、父親の出身地である中国の大都市、成都を行き来しながら育った彼女は、「よそ者」として常に戦ってきた自身の姿を、その羽の生えた小さな昆虫と重ね合わせながらこう話した。「何者でもない、誰も気にも留めない存在だけど、私はここにいるんだって主張したかった」

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JUMPER SIA ARNIKA. SHIRT STYLIST’S OWN.

親元を離れてからも東京、上海、LAなど様々な都市を転々としてきた彼女。「両極端な環境で育ったからなのか、自分のホームだと思える場所がない。どこにいてもエイリアンって感じがする」と話す。「自分のバックグラウンドについてあまり話してこなかったのも、それが理由。どこにも属してると思えないのに、特定のカルチャーやコミュニティを代弁することなんてできない。結局大事なのは、場所じゃなくて人。どこにいるから誰と一緒にいなきゃいけないなんてことはないし、一緒にいる人や何をするかは自分で選べるものだと思う」

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2020年春、世界中がパンデミックの脅威に襲われていたとき、LIA LIAは日本への移住のため、東京行きの飛行機に乗っていた。到着まであと5時間というところに飛び込んできたのは、入国規制が始まったとのニュースだった。「ようやくビザを手に入れて、住んでいた家も手放したところだったのに、空港からとんぼ返りしなきゃいけなくなった。本当に絶望的だったよ」。彼女が初めて東京を訪れたのは2019年。「刺激的だった」とそのときの日々を回想する。「東京にいたときはとにかく金欠だったから、コンビニのおにぎりとゆで卵が主食だったんだ。それでも、雑誌の撮影に参加したり、友達とパーティーに出かけたり、喫茶店のメロンソーダに感動したり、とにかく濃い時間を過ごした。ラッパーのTohjiやDJのエレナ・ミドリとよく遊んでたよ。東京のパーティーシーンにはコミュニティがたくさんあって、みんなそれぞれ仲間がいる。私にとってはそれがすごく楽しかった」

中国から父親がお土産として買ってくるDVDで、幼い頃から日本のアニメを見ていたというLIA LIA。「本をたくさん読む子供だったから、違う世界に入り込んでいく感覚が好きなんだと思う」と話す。「中国語の字幕でジブリをよく観てた。『千と千尋』や『もののけ姫』は本当にすごい作品だよね」。10代になるころには、自分で日本の漫画やアニメを深掘りしていくようになったという。今でも気分が落ち込んでいるときは、決まってアニメを見るのだそうだ。「西洋のドラマに出てくる登場人物よりも、アニメのキャラクターのほうが感情移入できる。見た目がもっと自分に近いからかな」。矢沢あいの『NANA』は、彼女がパンクにハマっていた時期に最も影響を受けたという作品だ。どちらの「ナナ」に憧れるかと聞くと、「もちろんミュージシャンのほう」と即答した。「まあだいぶ程遠いんだけどね。かと言ってもうひとりのナナ(ハチ)ほど男の子にモテモテなわけでもないから、私自身はその中間地点にいるかな」

「キャリアに大きな影響を与えた」作品として彼女が挙げるのは、『ハンター×ハンター』や『ワンピース』といった少年漫画だ。「少年漫画の主人公達は技術を磨き続けることを決してやめない。彼らにはそれぞれ強い師匠がいて、その師匠ですら毎日努力を続けてる。こんな労働観に他で触れたことがなかったから、すごく刺激を受けた」。少年漫画の魅力はそのメッセージ性にある、と彼女は続けた。「自分自身でいることを恐れずに、ゴールや信念を忘れることなく努力して、友情を大切にする。少年漫画が伝えるメッセージは本当に力強くて元気付けられる。私も頑張らないと、って思えるんだ」

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JUMPER SIA ARNIKA. SHIRT STYLIST’S OWN.
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KNITTED FLOWER EMMA HASSELBLAD. DRESS AND SHORTS (WORN UNDERNEATH) SIA ARNIKA. SOCKS FALKE. OTHERS STYLIST’S OWN.

Credits


Photography Rita Lino
Styling Max Jolivet
Hair Masayuki Yuasa
Production and text Makoto Kikuchi
Production assistance Jee Hye Lee

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