Photography Mitchell Sams

ローカルこそ贅沢? Charles Jeffrey Loverboy 2020秋冬:原始へ還れ

フューチャリズムは終わった。チャールズ・ジェフリーはブランドの行動指針を記したマニフェストで「経済的成長だけじゃなく、人間の幸福も同様に追求していく」と宣言。製造のローカライズやアップサイクル率の増加を推進させていく。

by Osman Ahmed; translated by Ai Nakayama
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20 January 2020, 9:43am

Photography Mitchell Sams

〈2020年〉はなんともSFチックな響きだ。けれど、年明けに始まったメンズウェアコレクションをみていると、未来はもう今ここに来ているのだと実感する。それについて言及するデザイナーもいる。チャールズ・ジェフリーもそのひとりだ。

彼はどうやら、実現している未来には満足していないらしい。今回の彼のショーでは、稲光と雷鳴のなかで叫び声が響き、死へと捧げる生贄の舞を思わせる。これまでのショーも同様だったといえるだろうが、かつてロンドンのクラブキッズの帝王として君臨し、ダンスフロアに漂う幸福感をかたちにしていた彼が今回、快楽の代わりに追求したのは原始的なものだった。

「昔の、隠れた世代の人間たちは、残忍な計画を実行してきた。そしてそれらに起因する惨事を、私たちは受け継いでいる」とショーノートに記されている。「彼らが傍観する先で、私たちはその結果を甘受している。代償を血で払っている」

そしてチャールズは自然のなかにインスピレーションを求め、古代の儀式をショーに取り入れた。ステージには穴のあいた樫の木。それを飾るのは、月光を受けてチラチラと光るCDだ。まるで丑三つ時に執り行われる異教徒の儀式、あるいは林のなかで開催されるレイヴのよう。

エドワード7世時代のテディボーイのようなテーラリングや、精霊のようなドレスをまとったモデルたちが、樫の木に向け舞のような動きを献じる。渦のようなものが描かれた絵画的なプリントは木漏れ日を思わせ、自然界のスピリチュアルなパワーを利用しようとしているかのようだ。マジックマッシュルームにインスパイアされたプリントは、シャーマンが唱えるまじないに説得力を加える。

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チャールズが見つめたのは自然だけではない。彼はデザイナーとしての自身の進化を、口先だけではなく実に意義のある行動で証明した。ショーノートと共に配布された、Loverboyブランドの行動指針を記したマニフェストでは、今後「経済的成長だけじゃなく、人間の幸福も同様に追求していく」と宣言されていた。

これから先ブランドは、化学薬品不使用のデニム、オーガニックコットン、アップサイクルの金属製品だけを使用し、製造もローカライズして、自社のチームが直接監査した工場で行う。それにより、Loverboyが祝福してきた、社会から追いやられたひとびとに機会を与え、廃棄物を減らし、サンプル作りのプロセスにおけるアップサイクル率を高めることが約束された。

この宣言のなかでも特に重要なのは、彼とチーム(毎週オンライン授業でサステイナビリティについて学んでいる)が厳選した素材、工場を使用することだろう。可能な限り近くですべてを調達できれば、大量のプラスチック製パッケージや空輸も必要ない。チャールズはグラスゴー出身なので、もちろん素材を調達するのも、職人を雇うのもスコットランドだ。

「ブレグジットがあったから、僕らはみんな出身地を振り返って、ローカライゼーションを検討することにした」とショーのあとに彼は語った。「Matty Bovanが欲しいならヨークシャーへ、A-COLD-WALL*ならイーストロンドンへ。Loverboyはグラスゴーまで買いに行こう、って」

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ロキャロン社のタータンチェック以外の素材を探すため、彼はグラスゴー美術学校とミッチェル図書館のアーカイブを精査し、アーツ&クラフツ運動の推進者として有名なチャールズ・レニー・マッキントッシュの妻で、グラスゴー出身の伝説的なアーティスト、マーガレット・マクドナルド・マッキントッシュを本コレクションのミューズに掲げた。

彼女のユニークな髪型は綿菓子のようなふわふわした飾りとなり、彼女の絵画作品はチンツ加工された花柄ドレスや、逆さを向いたバラの花が何本もあしらわれたドレスに変身した。馬具を模したアクセサリーやポンポンがあしらわれたドレスは、オークニー諸島で200年続く〈馬祭り〉(※島の子どもたちが、手作業で刺繍された豪華な装飾品を身につけてクライズデールという品種の馬に扮する祭り)を参照している。

また、タモシャンター帽を小粋にかぶっていたり、スポーラン型のハンドバッグを合わせたりと、スコットランドの民族衣装からのインスピレーションも豊富だ。

クライマックスは、雷鳴と稲光。最後のルックをまとったモデルが死者に捧げるようにバラの花をランウェイに撒き散らしながら会場を去ると、ダンサーたちが踊り出し、最後にひとりが樫の木に向かって、激しく身体を震わせながらのたうち回る(かつてマイケル・クラーク・カンパニーに所属していたダンサー、ケイト・コインが手がけた振付だ)。

それは不気味で、怒りが満ち、楽観的な要素はかけらもない。世界を救うには遅すぎる、というメッセージは明白だ。しかし、環境保護にアプローチする新しい戦略を整えたチャールズとLoverboyファンたちの未来は、光に照らされているようにみえる。

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This article originally appeared on i-D UK.

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