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      film Machizo Hasegawa 12 May, 2017

      長谷川町蔵評:『スプリット』

      『ヴィジット』でその鬼才健在ぶりをアピールしたM・ナイト・シャマラン。23人格の男に拉致された女子高生3人の脱出劇を描く最新作を、映画ライターの長谷川町蔵がレビュー。

      長谷川町蔵評:『スプリット』 長谷川町蔵評:『スプリット』 長谷川町蔵評:『スプリット』
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      M・ナイト・シャマランが<『シックス・センス』の〜>と言われるたびに微妙な気持ちになる。というのもあの作品は、脚本がよく書けた佳作でしかないからだ。映画作家としてのシャマランの真髄は、次の『アンブレイカブル』から打ち出された<矛盾だらけだけどある種の人間にとってはメチャクチャ魅惑的なヴィジョン>にこそある。ぼくを含む熱心なシャマラン信奉者、通称"シャマラニスト"はその魔法にこそ喝采を送り続けたのだ。

      ところがその魔法を理解できない映画ファンは矛盾点だけをあげつらって批判した。その風評被害もあってか、大傑作『レディ・イン・ザ・ウォーター』は興行的に惨敗。以降、シャマランの作品には外部の意見が導入されるようになり、個性が薄められてしまった。
      この時期はシャマラ二ストにとって苦難の時代だったと言わざるをえない。しかしシャマランは映画の予算規模を下げる代わりに製作の完全な自由を獲得。軽妙な『ヴィジット』で復調を遂げたのだった。

      2年ぶりとなる最新作の主人公は、はぐれっ子女子高生のケイシー。ある日、彼女はふたりのクラスメイトと、見知らぬ男に拉致されて密室に監禁されてしまう。しかもその男は密室を訪れるたびに声色や動作、年齢、はては性別まで異なって現れる。そう、彼は23もの人格を持つ多重人格者だったのだ。映画は、彼女たちの生存のための戦いを描いていく。

      子どもと危険人物が閉鎖空間内でバトルするという図式において、本作が『ヴィジット』の成功を踏まえたものであることは間違いない。しかし男を前に、自身の過去と向き合う勇気を得ていくケイシーの描写には、シャマランのストーリーテラーとしての成長を感じさせる。俳優としてのシャマランも何気に復活しているし、その調子で次作も頑張れよ……と思っていたら、ラスト3分で椅子から転げ落ちるほどの衝撃の展開が!!!
      このオチ、正直言ってシャマラニスト以外は面白くも何ともないとは思うんだけど、ブロックバスターのシリーズ映画のお約束を脱構築したこのシーンには心底感動した。というわけでシャマラ二ストよ、劇場へ急げ。我々のマジック・キングダムが帰ってきた。

      『スプリット』
      監督・脚本 M・ナイト・シャマラン 製作 M・ナイト・シャマラン ジェイソン・ブラム 出演 ジェームズ・マカボイ アニヤ・テイラー=ジョイ ベティ・バックリー ジェシカ・スーラ ヘイリー・ルー・リチャードソン 2017 アメリカ 117分
      5月12日(金)より全国公開

      Credits

      Text Machizo Hasegawa

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      Topics:film, the visit, m. night shyamalan, shyamalan, james mcavoy, anya taylor joy, betty buckley, jessica sula, haley lu richardson, the sixth sense, machizo hasegawa

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