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      film Machizo Hasegawa 27 January, 2017

      『沈黙 -サイレンス-』映画レビュー

      世界20カ国以上で翻訳された遠藤周作の名作小説『沈黙』をマーティン・スコセッシが映画化。日米の豪華キャストが集結したこの映画を、映画ライターの長谷川町蔵がレビュー。

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      遠藤周作の原作を読んで以来、構想28年。その甲斐あってかマーティン・スコセッシの『沈黙 -サイレンス-』は、日本を舞台にした外国映画の中では最高傑作になったと思う。

      もちろん弱点もある。たとえばイエズス会の宣教師を英語圏の俳優に演じさせたせいで、日本人が"天国"のことをポルトガル語で「パライソ」と言っているにもかかわらず、宣教師が「それはパラダイスのことか?」といちいち聞き返すところとか。

      でも本作におけるスコセッシの仕事ぶりには9割方驚嘆するほかない。まず印象に残るのが映像の美しさ。東アジア特有の湿気を帯びた空気感はどうだ。しかし、こうした自然描写は、ニューヨーク生まれのスコセッシにとって実は新境地だったりする。

      これを例に挙げるまでもなく、スコセッシは『ヒューゴの不思議な発明』(2011)以来、一作ごとに新たなチャレンジを行うことで、演出家として何度目かの黄金期に突入した気がする。ロドリゴ役のアンドリュー・ガーフィールドと同僚フランシス役のアダム・ドライバーの若さ、未熟さの描写は、前作『ウルフ・オブ・ウォール・ストリート』(2013)で獲得したものだろう。スコセッシは、日本の実態を良く分からずに来てしまった<意識高い系>の浅はかさを、ふたりに体現させているのだ。

      そんなふたりと対比するかのように、窪塚洋介をはじめとする日本人俳優は皆陰影深く描かれているのが印象的。それにしても、イッセー尾形のダイアローグなのにモノローグに聞こえがちなセリフ回しや、浅野忠信のいささかフラットすぎる演技といった、時としてマイナスに働くことがある個性を、抑えるのではなく作品のテーマに沿った形で有効活用してしまうのだからスコセッシは凄い。もっとも個人的なベストアクトは、原作のイメージにとことん寄り添った塚本晋也なのだが。前半における彼の熱演があるからこそ、終盤に付け加えられた映画オリジナルの痛切なラスト・シーンが、観客の胸に突き刺さるのだと思う。

      映画『沈黙-サイレンス-』
      原作:遠藤周作「沈黙」(新潮文庫刊) 原題:Silence
      監督:マーティン・スコセッシ 脚本:ジェイ・コックス、マーティン・スコセッシ
      撮影:ロドリゴ・プリエト 美術:ダンテ・フェレッティ 編集:セルマ・スクーンメイカー
      出演:アンドリュー・ガーフィールド リーアム・ニーソン アダム・ドライバー
       窪塚洋介 浅野忠信 イッセー尾形  塚本晋也 小松菜奈 加瀬亮 笈田ヨシ
      配給:KADOKAWA

      Credits

      Text Machizo Hasegawa

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      Topics:film, silence, martin scorsese, yosuke kubozuka, tadanobu asano, ogata issei, shinya tsukamoto, nana komatsu, yoshi oïda, machizo hasegawa

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