The VICEChannels

      music Francesca Dunn 18 May, 2017

      シェイムが解説する、サウス・ロンドンの音楽シーン最前線

      ブリクストンのライブハウス<The Windmill>でともに切磋琢磨してきたバンドやアーティストと、地方遊説さながらのイギリス国内ツアーに出るShame。ツアーを目前に控えた彼らが、最新ビデオ「Tasteless」をリリースした。

      シェイムが解説する、サウス・ロンドンの音楽シーン最前線 シェイムが解説する、サウス・ロンドンの音楽シーン最前線 シェイムが解説する、サウス・ロンドンの音楽シーン最前線

      シェイム(Shame)がイギリス各地をまわるツアーに出る。ツアー最終日となる5月11日は、ロンドンのライブ会場<The Dome>で、彼らの音楽友達が大集結するというから見逃せない。頭からツノを生やし、目から血を流しているように加工したテリーザ・メイ首相の写真をツアー用アートワークに使うなど、積極的に政治を持ち込むシェイムの5人——ファンたちに6月8日の総選挙で投票をするように促しながら、メイ首相について歌った曲「Visa Vulture」で聴衆に教育をほどこしている。しかし、そんなことをここに書き連ねている暇はない。ここでは、彼らの最新ビデオと、音楽の地方遊説ともいうべき彼らのツアーについて書きたいのだ。

      シングル「Tasteless」は、惰性の社会に中指を突き立てる内容の曲で、彼らは繰り返し、「I like you better when you're not around(一緒にいないときのほうが、君をいい人と思える)」と歌っている。シェイムのフロントマンを務めるチャーリー・スティーンと、ファット・ホワイト・ファミリー(Fat White Family)との頻繁なコラボレーションで知られるルー・スミスが共同でメガホンをとった「Tasteless」のMVは、薄暗いクラブに入って来た中年男性が、スペース真ん中、シェイムのライブ映像が映写される布の前に座り、若者たちが布に火をつけるのを見て楽しむという内容。困惑させられる映像だが、バンドいわく、「崩壊というものには奇妙にも、快感が得られるもの——無への衝動というかね。ここで描きたかったのは、僕たちが作り出したはずの世界から、僕たち自らが取り残されてしまっている状況。ひとりの人間の単なる思いつきで、そこに存在するものがナイフでズタズタに切り裂かれ、落書きをされて汚され、最後には燃やされてぶち壊されてしまう——このMVは、思考や論理を放棄してしまっている世の中へのメッセージなんだ。『永遠に続くものはない』『本当にオリジナルなものなんてない』ということを受け入れ、それを理解することでしか、人間は進歩できないと訴えているんだ。僕たちは現実から目を背けがちだけれど、現実こそが僕たちを分断していると思う」

      現在のロンドンについて、シェイムのチャーリー・スティーンが語る。

      「ロンドンで誕生し、ときにロンドンを超えてイギリス全土、そして世界に羽ばたく多種多様なバンドを、ただ"シーン"として片付けてしまうのは、彼らを過小評価していると思う。サウス・ロンドンに渦巻く音楽的な仲間意識が、サウス・ロンドンのものとしてしまうのも間違っている。その流れの中にいるバンドの多くはブリクストンの<The Windmill>を中心に活動をしているけど、出身はロンドンだけじゃない。イギリス各地、そしてかつてはイギリスと密月関係にあったヨーロッパ全域から生まれたバンドがたくさんいる。

      Sorry (FKA Fish), 元々はFishとして活動していた、現在のソーリーは、僕たちが恐れるロンドン北部からこのムーブメントに参入したんだよ。でもソーリーのパフォーマンスを見るためなら、僕たちはロンドンのどこにでも行く。イーストでもね。ステージでのソーリーには成熟した世界観がある——パフォーマンスに対して変な気負いがないというか。好かれようとしてないし、観客の中にいるかもしれないスカウトマンに気に入ってもらおうともしないんだ。彼らは、ただ音楽が好きだからそこにいるんだよ。アシャ・ロレンツ(Asha Lorenz)の歌詞を聴いても、音楽で訴えている問題を考えても、彼らが他のバンドの一歩も二歩も先を行っていることは明らか。実に多才で、知的で、そして独創的。4月から5月にかけて僕たちが行なう国内ツアーには絶対にソーリーに参加してもらいたかったんだ。混沌としたこの国に、あの類稀なる才能を見てもらって、何かを感じてほしい。

      もうひとつ、いまこの国に必要なバンドは、僕たちのサウス・ロンドン仲間であるMõnk。ジャンル分けや言葉で説明したりできないバンドで、実に多種多様なアーティストからの影響を得ていながら、オリジナルで芯があってエネルギッシュなものを作っているよ。オーゴスト(Augosto)は、ステージ上を汗だくになりながら飛んで、暴れ回りながらも、トム・ウェイツが震え上がるような声で歌うんだ。Mõnkは、レゲエでもパンクでも貪欲にマスターしていくバンド。残念ながら彼らはまだ大学生だから、よほどの追っかけでもないかぎり彼らのパフォーマンスを見られるチャンスは少ないけど、だからこそ貴重なライブ体験になる。

      現在のサウス・ロンドンに起こっている音楽シーンと、それを盛り上げているミュージシャン一人ひとりについて話すには、この記事に収まりきらないほどの言葉が必要になる——辛いけど、それが現実だね。たとえばHMLTDなんか、メンバー一人ひとりの髪型について説明するだけでも3,000文字をゆうに超える。ゴート・ガール(Goat Girl)が遂げている進化と、彼女たちが歌で訴える事柄はとても要約できないし、ポーツマスが生んだ至高のバンド、ホテル・ラックス(Hotel Lux)は、定義づけできないサウンドを作り出している。

      といいつつ、まだライブも披露したことがなく、音楽シーンに大々的な参入をしていない、あるアーティストについて、ここで話したい。長年、彼は何をリリースすることもなく音楽に取り組み続けてきて、自分の音楽を確立するまでは人前で演奏することすら拒否し続けてきた、真の完璧主義者。これまでにPolydorやEMI、XLといったレコード会社が彼に契約の意思を示してきたけど、彼はそれをすべて蹴って、Fnordと契約したんだ。近いうちに、7インチの限定版レコードで傑作を世にリリースする予定で、僕たちはワクワクしているよ。彼以上におすすめできるアーティストはいない。彼の名前をよく覚えておくといいよ。Iniqoというアーティスト。

      現在のサウス・ロンドンの音楽シーンがユニークなのは、バンド、アーティスト、そしてシーンに関わる人たちがそれぞれ独自のアイデンティティとサウンドを築き上げているところ。10代の若さと経験不足が共通点となって結束力が生まれているのかもしれないけど、シーンとして、僕たちはジャンルを超えて、様々なパフォーマンスやレコードを作り出している。でも、このムーブメントはバンドのものだけじゃなく、そこに生まれる幅広い芸術的要素が人たちを惹きつけて成り立っているんだ。写真家とかね。そのひとりルー・スミスは、これまでこの音楽シーンをつぶさに写真に収めてきて、観客が2人のライブでも200人のライブであっても必ず最前列に陣取ってくれている。ティム・ペリー(Tim Perry)をはじめとするプロモーターのみんなも——ティムは、この10年間、ブリクストンの<The Windmill>で週に7つのギグを実現し続けてくれているひと。それも「ゲストリストは作らない」というモットーのもとにね。Spit Teaseの名で活動するマック・ウエストウッド(Mac Westwood)とフロー・ウェッブ(Flo Webb)は、ソーリーをはじめ多くのバンドのアートワークを手がけている。この音楽シーンは、特定の人物やジャンル、スタイルによって定義づけできるものじゃない。ただ、いま起こっていることと、これまでに起こったことが一緒くたになってできあがっているんだ。要は「この混乱のうちに答えを求めているシーン」ということだね。

      Credits

      Text Frankie Dunn
      Translation Shinsuke Kuriyama at WORDSBERG Inc.

      Connect to i-D’s world! Like us on Facebook, follow us on Twitter and Instagram.

      Topics:music, shame, south london, music interviews, south london music scene

      comments powered by Disqus

      Today on i-D

      Load More

      featured on i-D

      More Features