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間違ってもクリスマスに家族と観ちゃいけない映画5選

くれぐれも、家族団らんの時間は壊さないように。

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21 December 2018, 4:31am

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i-Dから「クリスマスに家族と観ないほうがいい映画を教えてほしい」と依頼が来たとき、私の頭のなかには大量の候補が浮かんでいた。『大脱走』や『ハリー・ポッター』シリーズなど、いわゆる年末にふさわしい作品がテレビで放映されるのは知っているけれど、私が好きなのはそういう作品ではない。認めよう、私は残忍で祝祭感とはほど遠い、鼻持ちならないヲタだ。具体的にいうと、近親相姦モノとか、ポルノ三昧とか、性的倒錯シーンを含む作品、この手の作品は厄介だ。個人的な経験では、家族で観る映画のルールは、映倫が定める規定と同様に、勝手でめちゃくちゃ。すなわち「暴力は基本オッケー、セックスはダメ」というものだ。家族というものは必然的にセックスを内包しているはずなのに、不可解だ。もし私が選んだ映画のなかに、「これはいうまでもないだろ」と思うような映画があるとしたら、「というか、ここでこの作品を選ばない手がない」という事実をぜひとも認識していただきたい。だって、約30センチの巨根(ニセモノ)だよ? クリスマスイブの乱交パーティだよ? 母と息子のセックスに、ワーグナーをBGMにしたポルノだよ? 今回選んだ5作品は、ここで選ばれる理由がありすぎる。気まずさ満載!

『アイズ ワイド シャット』(1999)
今作は、ニコール・キッドマン演じるアリス・ハーフォードのこんなセリフで幕を閉じる。「私はあなたを愛してる。私たちが今すぐにしなきゃいけない、とても大切なことわかるでしょ。〈ファック〉よ」。ニコールがその言葉をささやいた相手は、夫役、そして実際に当時の夫であったトム・クルーズ。カメラはそのとき彼の後ろ姿をとらえるのみで、観客には彼の反応は観えないが、これまでの約150分から察するに、このセリフを耳にした彼が興奮したはずがない。スタンリー・キューブリック監督の遺作を観たい、という気持ちはもちろん誰にでもあるはずだ。それは私も理解できる。しかもこれは、古典的な〈ボーイ・ミーツ・ガール〉の物語だ。ガールが他のボーイとの浮気願望をボーイに語り、その暴露でボーイが悶々として、最終的に幻想めいたサイコセクシュアルな冒険譚となっているだけ(クライマックスは、ボーイの乱交パーティ参加シーン)。しかも本作の舞台はクリスマスの浮かれたニューヨークで、つまりこれは、まごうことなきクリスマス映画なのだ。でもやっぱり個人的にはおすすめしない。それは乱交パーティのシーンのせいというよりも、実際に夫婦だった主人公夫婦のあいだに、あまりにときめきが欠けているからだ。「私たちが今すぐにしなきゃいけないとても大切なことは〈ファック〉」というセリフがここまで薄っぺらく聞こえる夫婦は映画史上いない。

カナダの新聞『The Globe and Mail』が、2014年に本作を振り返り書いた記事によると、「キッドマンとクルーズ夫妻の関係性は、ビンゴゲームのように冷めきっていた」そうだ。本作が初めて上映されたのは1999年7月。その年の3月にキューブリック監督が亡くなっており、2001年8月にはふたりは離婚。ここまでけなしといて嘘だろ、と思われるかもしれないが、私はこの映画が好きだ。しかしこの作品は、観たら不幸が降りかかるタイプの〈呪いの映画〉だ。死、結婚生活の死を記録しているんだから。両親とは観ないほうがいい。さもなくば、両親が離婚を検討し始めてしまう。

『ジョルジュ・バタイユ ママン』(2004)
天才イザベル・ユペールが出演するもっとも気まずい映画を選ぶのは、マーク・ウォールバーグが出演するもっともバカげた映画を選ぶくらいに難しい。たぶん不可能だ。レイプ魔と合意の上の性行為を続ける役を彼女が演じた、ブラックを通り越して真っ黒な〈レイプコメディ〉、ポール・バーホーベン監督の『エル ELLE』も脳裏をよぎった。あるいは彼女がカミソリで股間を傷つけたり、他人のカーセックスをのぞきながらウンコ座りで放尿する、ミヒャエル・ハネケ監督の『ピアニスト』も考えた。それでも『ジョルジュ・バタイユ ママン』を選んだのは、単純に、実におフランス的で生々しい近親相姦映画を両親と観る、それ以上に気まずく吐き気を催す行為はなかなかない、と思ったからだ。原作はジョルジュ・バタイユの遺作、『わが母』。本作の英語版ウィキペディアのあらすじで、こんな1文を見つけた。「エレーヌは息子に、マスターベーションをしながらカミソリで彼女の腹部を切りつけるよう命じた。息子が達したそのとき、彼女は自らの喉に刃物を突き立てた」。不朽の1文だ

『ブギーナイツ』(1997)
先ほど、マーク・ウォールバーグ出演のいちばんバカバカしい映画を選ぶのはたぶん不可能、と書いたが申し訳ない、あのときの私は不誠実だった。マークのバカバカしい映画なんて、彼が人間VS植物の戦争に巻き込まれる役を演じた、M・ナイト・シャマラン監督の『ハプニング』一択だ(家族で観ても気まずくないが、とにかくクソな映画)。そして彼の最高傑作といえば、ポール・トーマス・アンダーソン監督のポルノ大作『ブギーナイツ』。しかし家族での視聴をおすすめしないのには、2つの理由がある。まずひとつは、これがポルノについての映画だから。そしてふたつめは、この作品に、映画史上最長として知られる立派なペニス(ニセモノ)が登場するからだ。マーク演じるダーク・ディグラーがついにイチモツをあらわにするあのシーンについて監督はこう語っている。「あのシーンの撮影中、私は考えてました。『ジュラシック・パーク』の恐竜、『ジョーズ』のサメ、あるいは『E.T.』を初めて観たときと、まったく同じだなって。隠されたモノがついに登場する瞬間です」。思えば私は『E.T.』や『ジョーズ』を初めて観たのは家族とだった。『ブギーナイツ』はありがたいことにひとりで観た。だって監督、人喰いザメも宇宙人も、巨大人工ペニスとはまったく違うからね?!

『ニンフォマニアック Vol.1』『ニンフォマニアック Vol.2』(2013)
ラース・フォン・トリアー監督の『ニンフォマニアック』二部作。内容は置いといても、クリスマスに観る映画として選ばれる可能性はかなり低い。いかんせん長い。ダーク・ディグラーのシリコン製イチモツ並みに長い。ディレクターズカット版を2本合わせると、7時間近い上映時間だ。しかもディレクターズカット版で監督が復活させたシーンは、過激とは程遠い哲学問答なので、拍子抜けする。ただ、自宅中絶のシーンはあまりに血まみれで、観ているのがつらくなるくらいだが。主人公の女性は色情狂を自認する女性、ジョー。若きジョーを演じるのはステイシー・マーティン、後半生を演じるのは、シャルロット・ゲンズブール(すばらしい)。ここまでメジャーな映画スターたちが出演した作品で、これほど過激な映画はないだろう。実は、性行為のシーンを本人たちが演じているように見せるため、ポルノ俳優たちが電子機器を使った身体計測までされているのだ。しかも、ほとんどすべてのシーンがカメラでしっかり撮影されている。あえて性的興奮を促さないようなつくりで、辛抱強さが試される本作は、本物のポルノ作品よりも過激で、衝撃的で、かつイライラする。いくらオープンマインドな家族でも、この作品だけはひとりで観たい、と思うはずだ。もちろんこんな映画が好きなおばあちゃんだっているだろう。でもだからといって、クリスマスの家族団らんの時間に観るべきではない。

『ビジターQ』(2001)
10代半ばの私に、初めて三池崇史監督を教えてくれたのは、私の母親だった。60歳で、もう孫がいてもおかしくない年齢だが、過激なアート系映画を好み、少々変わっている母親が教えてくれたのは1999年のサイコスリラー『オーディション』(トラウマにはならなかった)。私の家族は特殊だが、『ビジターQ』の家族はウチとは比べものにならないくらいぶっ飛んでいる。だからとりあえず鬼畜な三池監督が精魂込めてつくったこの作品は、家族で観ないほうが賢明だ。「パパとしたことある?」という質問から始まるこの作品。援助交際をする自分の娘を〈買い〉、セックスをする父親、恋人に授乳する母親、死体が脱糞して中断された死姦…。これ以上グロテスクな映画作品がないわけではないが、私史上トップ5には入るグロテスクさだ。個人的に、この映画は嫌いだとは決していわないが、あまりおすすめもできない。しかも聖夜だ。クリスマスといえば、美味しい食事とキリストへの祈り。ウンコ絡みのユーモアは似つかわしくない。『ビジターQ』を観たあとには、クリスマスプディングでさえ魅力的には思えないはずだ。いや、考えてみれば、何も食べたくない。

This article originally appeared on i-D UK.