『odd foot works』track by track

音楽や映画といった多彩なインスピレーションに溢れる新世代バンド、踊Foot Works。豊かな感性を持つメンバー4名が、デビュー・アルバムを丸ごと全曲解説する。

|
jun 27 2018, 9:56am

ラップのPecori、ギターのTondenhey(guitar)、コーラスのfanamo'、そしてベースのSunBalkanの4名からなるミュータント的バンド、踊Foot Works。

すでに発表されている彼らの作品や、ライブの現場、そしてペトロールズのカバーEP『WHERE, WHO, WHAT IS PETROLZ?? - EP』などで、4人が奏でる音を体感しているリスナーも多いはずだ。

2018年4月、待望の1stフル・アルバムである『odd foot works』を発表した彼ら。「2、3か月で作ったアルバムですね」(fanamo’)、「捨て曲なし、というか捨てる必要もなかったくらいのスピード感で出来上がった」(Tondenhey)と語るほど、今の4人のクリエイティビティが濃密に詰まった全9曲で構成されている。また、映画が大きなインスピレーション源になっており、一聴しただけでは足りないほど、味わい深いディープさも感じさせる。

今回、各メンバーを招いて一曲ごとの背景を語ってもらった。

「時をBABEL」
fanamo’(以下 F):トラックは僕が初めに土台を作りました。それに、キイチ(Tondenhey)がギターを入れたり、大学のサークルの先輩や同期に、サックスや鍵盤を入れてもらったりしながらトラックを作っていって。僕がAメロをすでに入れて、キイチがBメロ、Pecoriがフックを作っていきました。
Pecori(以下 P):(タイトルは)曲名の候補を、メモ帳にストックして書いてるんです。『BABEL』って映画があるじゃないですか。この曲は、あのニュアンスだなって。映画自体は、すごく長かったから全部は観てないんですけど。
Tondenhey(以下 T):この曲、最後に持ってくる案もあったんです。
P:これを一曲目に持ってきたのは、ディストピアとか、SFっぽいの世界を表したかったんです。これは現実なのか、仮想なのかをゴチャゴチャにしたかった。そのコンセプトでアルバムを始めたかったんです。
F:作るのに一番時間がかかった曲かもしれないです。それでも二週間くらいなんですけど。
Tondenhey(以下 T):早いときは1日で出来上がっちゃうので。

「Bebop Kagefumi」
T:ジャズの〈ビバップ〉とは違う意味で〈ビバップ〉を用いていて。これは僕がトラックの土台を作りました。
P:僕はジャズを通っていないので、そこに対してのビバップ的なアプローチは全然持っていなくて、「ビーバップ・ハイスクール」とかを見て、〈ツッパリ男道的〉なイメージだったんです。ビーバップ=王道、っていう意味合いで、〈俺らの王道はこれ!〉っていう意思表示として2曲目に入れて。あと、kagefumiって言葉も面白いなと思って。未来にまだ影はないけど、それを手に入れようとする、という意味や、過去の影、すなわち後悔を取り消そうと思っても、それはもう踏むことはできないし。影って色々なメタファーとして使えるなと思って。

「NDW」
(NDWは何の略?の問いに)
全員:ネオ・ダッチ・ワイフ。
P:最初、そのタイトルにしようとも思ったんですけど……。
F:これは、Pecoriがもともと組んでいた二人組のグループ(角巛エンタープライズ)があって、そのトラックメイカーがトラックを送ってくれたんです。それにギターとベースを入れて。タイトルは〈ロボット〉とかって案もあったんですけど、結局〈ネオ〉に落ち着きました。映画が好きなメンバーが多いので、そういうSFっぽい設定が好きなのかもしれないですね。
S:ヴァース2は、Pecoriの元相方がラップしてます。
P:相方と一緒にラップするのは久しぶりでしたね。1年前に出来た曲でもあります。内容的には、ダッチワイフとオジさんの恋の物語なんです。なんでネオなのか俺も分かってないんですけど。
T:ネタ元は「空気人形」じゃないの?
P:あと、「フィギュアなあなた」

「正論」
F:僕がメロを作って、歌詞をTondenheyと一緒に考えて。この曲と「時をBABEL」は僕がメインで詞を書いています。自分は結婚してるんですけど、「奥さんに正論でガンガン詰められて、そんなこと言われたらぐうの音も出ない……」っていう感じのシチュエーションです。そこから飛躍したリリックを書いて。
P:で、俺も勝手に解釈しちゃって、猟奇殺人者の話になっちゃいました。〈天使と悪魔〉みたいな裏テーマもあります。

「nightcrawler」
P:タイラー・ザ・クリエイターをちょっと意識しました。これは、『X-MEN』にナイトクローラーっていうミュータントが出てくるんですけど、あれを元ネタにしています。あと、お風呂。実はアルバム全体は死がテーマになっていて、この曲のテーマもそう。女の人がお風呂場で自殺するんですけど、鏡の中にミラー・ワールドがあって、その奥の自分はナイトクローラーなんです。そこから世界大戦が始まって、マイティ・ソーが出てくる……っていう感じ。

「milk」
F:中村佳穂さんっていう京都のシンガーの方が参加してくれています。
T:中村さんからはパソコンがぶっ壊れるくらいのトラック数のコーラスが送られてきて、天才的な感じでした。
P:バッチリでしたね。思っていたとおりでもあり、それ以上という感じもあった。
T:あと、『時計仕掛けのオレンジ』をイメージしていました。
P:俺はディズニーの『穴/ホールズ』って映画を。欠陥という意味の穴なんですけど、一回埋まっちゃったらどうしようもないっていう意味合いで。

「大家族」
P:団地ゴスペルっていう新しいジャンルを開発したんです。人種差別もなく、子どもからおばあちゃんまでが団地のベランダに出て唄っている、みたいな。
F:「正論」と「大家族」は一応スキット的な置き方をしているので、短いんです。だから、いい意味で適当に作ってる感じもある。
T:オケは5分くらいで作りました。大家族はいちばん早く作れたかもしれない。イメージはシャマラン監督の『レディ・イン・ザ・ウォーター』かも。
P:あと、『アタック・ザ・ブロック』でもあるかもね。

「19Kids Heartbreak」
P: これは、幼少の頃の憧れのヒーロー的なことを歌っていて。個人的に、19歳とハタチって大人と子どものあいだみたいな感覚で。角巛エンタープライズにいるときに、『僕らのナインティーンスクラッチ』っていうアルバムを出していて、そこから持ってきました。これは、ベタに『スタンド・バイ・ミー』が元になってるかも。

「逆さまの接吻」
T: この曲は、カーテンコール的な意味合いで。
P:「19kids~」でアルバムは一回終わってるんですけど、ドリフのエンディングみたいな雰囲気を出したくて。
T:トラックを作ったのは俺です。
P: もともと、全く違うコード感で、この曲のラップをのっけた8小節くらいの曲を(メンバーに)送ったんですよ。適当にコード感を打ち込んで、そこにラップとメロを打ち込んで、それを全く変えたリミックスとして一度作って、さらにそれをオリジナルに変えてしまう、っていう手法で作りました。