おたく文化がアートを通じてGUCCIに吹き込まれる

新感覚のインタラクティブな空間「GUCCI 4 ROOMS」に参加する、Kaikai KikiのMr.の素顔に迫る。

by Kurumi Fukutsu
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17 October 2016, 2:15am

今回の「GUCCI 4 ROOMS」では、"GUCCI GARDEN"をテーマに部屋を作られましたが、どのようなものからインスピレーションを受けたのでしょうか?
"GUCCI GARDEN"というテーマのもと、自由にアイデアを出しながらプロジェクトに取り組みました。自分自身の作風であるアニメキャラクターといったものを、今回の部屋のキーとなるGUCCIのアイテムとバランスを取りながら進めていきましたので、特別なインスピレーションソースはありません。

イタリアのブランドであるGUCCIとのコラボレーションにおいて、西洋のカルチャーを組み込む、そういった点は意識しましたか?
そうですね、逆にそういうものは最初から考えないほうがいいなと思ったので、特に意識しませんでした。最近公開された2016-17年秋冬コレクションの広告のムービーを、この夏、先に拝見したのですが、それが日本のいわゆる日本らしい美しさにフィーチャーしたものではなく、デコトラとかパチンコ屋とかネオン街だとか、日本のニッチなカルチャーや風景にフィーチャーしたものでした。それを見て僕は、僕が普段から作品で扱っているアニメキャラクターだとか自分が日本で撮った写真、日本語で書かれた落書きとか、いつも通りのモチーフや素材を使ってできるなと思いましたね。ですので、僕は外国に合わせてとか、外国のものをわざわざ使ってということは考えませんでした。

これまでにもLucien Pellat-Finet、Supremeなど海外のブランドともコラボレーションをしていますが、日本人が感じるオタク文化と海外の人が感じるオタク文化の間でズレみたいなものを感じますか?
そのズレはすごくあるのでしょうけども、僕は全然気にならないですね。日本人と外国人の間ではそういった文化の受け取り方に必ず違いはあると思いますが、僕はその違いを読めないものだっていう風に割り切って考えていますね。どう違うかっていうのは、推測はできても日本人の僕らには完全には分からないじゃないですか。何が流行って何が受けなかったかっていうのはもう結果論でしかなくて。僕はそのように受け止めています。

Mr.さんの手がける"GUCCI GARDEN"は、2010年に発表された「Mr.の部屋」を彷彿とさせる世界観を感じました。
実際に、僕は自分の汚いアパートの部屋をスケッチしたりしていたのですが、前はどちらかというと、ごちゃごちゃしているガラクタ部屋のようなものでしたね。学生のときは、イタリアの戦後に興った芸術運動「アルテ・ポーヴェラ」に影響されていたんです。ゴミを使ったアートなどが多かったのですが。あとは、70年代末から80年代に興った芸術運動「トランスアヴァンギャルディア」が好きでした。なんとなく、泥臭いというか土っぽいアートが好きだったんです。それに影響を受けてゴミも実際に使っていましたし。綺麗なものが作れなくなり始めたタイミングがあって、今は逆にそういう感覚に戻ってきている気がしています。10年前はもう少し小綺麗な絵を書いていたんですけれどね(笑)。

部屋にある等身大のフィギュアも印象的ですね。あれは特別に作ったものあのでしょうか?
このフィギュアは元々、この展覧会のために作ったものではなくて、ただ制作していたものです。玩具メーカーの「海洋堂」さんと美少女フィギュアを制作するBOMEさんに依頼して、1/7か1/8のサンプルを作ってもらいました。それを3Dスキャンして3Dプリンターで出力したのが、今回展示されているフィギュアなんですよ。150cmの等身大のものなんですけど、まだまだこれから手直しを加えていかなければなりません。

作品制作のインスピレーションを求めて足を運ぶ場所とかはありますか?
靖国神社はたまに行きますね。前はコミケ(コミックマーケット)とかにも行っていました。あとは、レトロな喫茶店とか洋食屋とか好きですね。ナポリタンとか好きなんですよ(笑)。
でも、場所など関係なくアニメは大好きなので。萌えアニメって今、僕ら世代の人が監督を務めているんです。だから、黒電話とか古い扇風機とか、出てくるものが古かったりするんですよね。もしかしたらそういった感じと似ているのかもしれないですね、僕がレトロな喫茶店に行くのも。そこからなにかインスピレーションを得やすいんだと思います。

"キューパ"生まれのMr.さんですが、これまでにどのようにアニメに触れて、アーティストとして活躍するようになったのでしょうか?
絵を描くのは昔から好きでした、もう小さいころから。物心ついたころには家にカラーテレビがあったので、アニメとか特撮とかはひと通り見ています。空気のように無料でそういったものに接することのできる環境にあったのは、この仕事をしていることに影響があると思います。中学生の時はサッカー部に所属していたけれど、ただのオタクでしたし、当時は放映されていたアニメを全部といってもいいほど見ていましたね。それから、高校では美術部に入りました。そして高校3年間美術部に所属したあと、結局8年間も美術系の学校に行きました。どうしてかは分からないですけどね(笑)。そこで、あるとき気づいたんですよ。あれだけ自分が好きだったアニメというものが、どうしてアートの表現に出てこないんだろうって。日本人にとって本当に身近なものであるはずのアニメが表現されないのはおかしいなって思ったんですよね。それで僕はそれからロリコンの絵を書き始めて。それが25歳ぐらいですかね。それから今までずっと、美少女っていうものをモチーフに作品制作しています。

Pharrell Williamsとミュージックビデオ『It Girl』でコラボレーションしていますが、外国人とコラボレーションする中で"オタク"の受け取り方に日本人と違いを感じることはありますか?
オタク的な人たち限定で言えば、けっこう似ている部分もあるように思いますね。フランス人でも、オタクっぽい人はたくさんいますし。でも、日本ではあまり流行らなかったアニメがフランスやイタリアでとても人気だったりするので、やっぱり分からない部分もありますね。

いまオタク文化やアイドル文化を含めて日本が世界的に盛り上がっていますが、Mr.さんが今、注目しているアイドルはいますか?
僕、ある時期からアイドルってものにハマらなくなってしまいましたね(笑)。高校生時代はファンクラブにも入っていたくらい、おニャン子クラブがすごく好きだったんですけれど、ここ最近はいないですね。

アイドル文化とMr.さんの作品はあまりリンクしてないですか?
そうですね、あまりそこはないかもしれないです。アイドルとかアニメキャラもそうですけど、絶対に関われないってとこが大事なんじゃないかなとも思います。だから今、もし自分にアイドルと話ができるチャンスがあっても、僕は絶対逃げますし、絶対に話したくないです。アイドルを全く別の次元のものとして考えたいんですよ。

どうして女性しか描かないという作風を貫いているのでしょうか?
男子を描くこともたまにありましたが、稀です。男か女かと言えば女で、その中でどちらかというと少女でした。戦後、主人公が少年の"ヒーローもの"漫画やアニメが人気でしたが、それが衰え、90年代から少女が物語の中で活躍するものが人気になりました。「男は女を救えない」というような意味が含まれているのかもしれません。僕も勇ましいわけではないので、合っているのだと思います。

最後に、"GUCCI GARDEN"のみどころを教えてください。
これまでに制作した作品や日本の風景、アニメなど、さまざまな僕のアートをGUCCIさんのアイテムにマッチするように部屋を作っています。是非、この世界観を楽しんでください。

Credits


Interview and Text Kurumi Fukutsu
Photographer Kenta Sawada
©2016 Mr./Kaikai Kiki Co., Ltd. All Rights Reserved.

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