リタッチより大事! 体型の多様性

Photoshopによって保たれるモデルの“完璧”な体型が問題になり、広告に「補正アリ」と警告が入ることもしばしば。しかし、それだけでは効果がないことが科学的に裏付けされた。

by Hannah Ongley
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10 June 2016, 2:25am

世の女性は、"パーフェクトな女性"のイメージを繰り返し見せつけられることで、自分の身体に劣等感を抱く。先進国で自らを女性と自認する者なら誰しも理解できる、負の思考回路である。近年、ブランドと広告会社はこの問題に対し、ふたつの対策を講じてきた。ひとつは、広告に使うモデルの体型に多様性を持たせるという策。もうひとつは、ビキニから除湿機に至るまでイメージ補正がされている広告には、「レタッチが施されています」と明記することを義務化させる取り組みだ。しかし一般的な感覚や日頃の体験においては、広告に警告を表記すればいいというわけではないらしい。そんな事実が、女性の体に関する今回の調査で科学的に裏付けされることとなった。タバコのケースとは違って、レタッチの明記や"パロディ広告"が女性たちの身体にポジティブに作用することはないようだ。

チャップマン大学の心理学者たちは、そのような記載・警告の効果について、平均年齢35歳の女性2,288人を対象に実験を行なった。最初のグループにはスレンダーな女性が起用されている無修正広告が見せられ、第2のグループには、使用されている画像は全く同じだが、「警告:この画像には補正が施されています」という文言が赤く印刷されている広告が見せられた。また第3のグループには、同じ画像で「この腹筋はフォトショップによるもの」というメッセージや、「最後に食べたハンバーガーが忘れられない……もう5年も前のことなのね」とモデルから吹き出しが出ている画像が見せられた。それ以外に、女性の臀部のみを写した画像に、「身体の部分を性的なものとして強調するのではなく、顔もあれば素敵な個性も持ち合わせている、ひとりの人間として女性を見せる方法はないの?」というメッセージが添えられた広告などもあった。

「補正の記載や警告付きの広告を見せられた女性たちが感じる自身の身体への満足度が、無修正の広告を見せられた女性たちに比べ高いということはなかった」とこの調査は結論付けている。しかし、チャップマン大学心理学部の助教授で、この調査のチームリーダーであるデビッド・フレデリック博士は、断定を避けつつも、大柄な体型のモデルを起用した広告を展開するより、セラピーやメディア・リテラシーを促進するプログラムのほうが効果は期待できるのではないかと提案した。

「広告における警告が、女性が自らの身体に対してもつイメージの改善や、劣等感や痩せたいという思いの軽減に影響するかどうかを調べた研究は、これまでありませんでした」と彼は話す。「しかし今回のリサーチにより、警告がある広告をただ見るだけでは効果がないということが分かりました。一方で、メディア・リテラシーのプログラムや個人的なセラピーなどのアプローチは、より効果的だという研究報告は出ています。パロディ広告を見ることには効果がなくても、自らの体に劣等感を抱く女性がパロディ広告を自ら作るのは、ポジティブな体験として有効かもしれません」。

補正されていない完璧な身体と、同じような体型だが補正がほどこされている身体を並べて分析したら面白い結果が得られたかもしれない。広告会社は、キャンペーンにジゼル・ブンチェンのようなモデルを起用するよう求められるが、それは、誰でも毎日3回のジムに行って、休暇中にビーガンダイエットを続ければ、完璧なプロポーションを手にいれることができるのだと世に叫ぶようなものだろう。ひとつだけ確かに言えるのは、地下鉄のポスターのほうがセラピーよりもずっと安いということだ。

Credits


Text Hannah Ongley
Translation Shinsuke Kuriyama at WORDSBERG Inc.

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