限りなくアブストラクトに近いレスラーたち

ニューヨークを拠点に活躍するファッションフォトグラファーTAKAYが、初の写真集リリースに伴い個展『ECHOS』が開催中。i-Dでキャリアをスタートした彼に、今回のプロジェクトについて、i-Dでのエピソードについて独占インタビューを行った。

by i-D Staff
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14 July 2016, 5:10am

イギリスのi-Dでキャリアをスタートさせたファッションフォトグラファー、TAKAY。現在ニューヨークを拠点に活躍している彼が、今回、自身初となる写真集を出版し、東京で個展『ECHOS』を開催している。レスラーを被写体に「肉体」の力強さと妖艶さ、そして美しさを映し出した。今回、彼の写真集を出版した経緯や彼のルーツとなるi-Dでの思い出エピソード語ってもらった。

今回の写真集制作のきっかけを教えてください。
ある時、レスリングの試合に行ったんです。戦っているレスラーの肉体の動きを見て、魅了されたんです。それで、そのなかで気になった選手たちに声をかけました。ロンドンには中東からの移民が多く、レスリングは彼らの間でとても人気があるんですよ。今回撮影した2人もイラク出身です。

この作品はレスリングそのものというよりも、レスラーたちの身体に焦点が当たっていますよね?
彼らも最初は、いわゆるスポーツ写真を撮られることを想像していたみたいです。実際にはレスリングのコスチュームもブーツも黒で揃えてモノトーンにしました。彼らの肉体に集中したかったんです。でもいざ撮り始めると、彼らの動きについていけませんでした。かと言ってスポーツカメラで撮ることはしたくなかった。それでも2回、3回とセッションを重ねていくうちにお互いが少しずつ見えてきたんです。彼らも仕事があってなかなか時間も合わず、撮影するのに時間はかかりましたね。

このプロジェクトのタイトルやコンセプトについて教えてください。
今回の写真集と個展のタイトルを『ECHOS(エコース)』とつけました。それというのも、ふたりのレスラーを撮っているうちに、彼らの呼吸みたいなものを感じたんです。その呼吸や、ふたりが呼応し合っているところからこの題名に決めました。肌の露出も多く一見セクシャルに見えるかもしれないのですが、ふたりが組み合って踊っているかのようなアブストラクトな写真になっています。関節同士が絡み合っているところをズームして撮ったりしていると、自分でも縦なのか横なのかわからなくなったり。撮影しているなかで、そうした発見もあり、「肉体」というコンセプトを作り上げていきました。出来上がった写真を見てみると、セクシーな絵に見えたりして、さまざまな見方ができて、面白いコンセプトになったなと思います。今までの自分が撮ってきたファッションポートレイトとは異なるアプローチになりましたね。今までとは違う、自分のなかでは新しい表現です。

レスリング選手のどのような部分に魅了されましたか?
僕のなかで無意識に、強いアスリートやボクサーに対する憧れがあるのかもしれません。自分にないものなので。

ボクサーではなくレスラーを被写体にしたことには何か理由があるのでしょうか?
肉体の動きや筋肉を撮ろうと思ったんです。今回のプロジェクトの前には、ボクサーのポートレイトを撮ったこともありました。その時は、殴っている姿よりポートレイトの方が緊張感が伝わる気がしたんです。でも肉体を撮るなら、絡み合ったりぶつかり合っているレスリングの方が面白いと思ったんです。2人のあいだの距離がボクサーはリーチの分あるけど、レスリングはゼロじゃないですか。2人がくっついて見えるということに興味があって、レスラーの方が絵になると思いました。

ECHOS』はファッションポートレイトではない写真表現での写真集となりましたが、意図的な部分があったのでしょうか?
作品のテーマが生っぽいので、プリントの質感はあえてペイントに近いものにしました。額装にもこだわりましたね。飾ってある写真を見た瞬間は気持ち悪いと感じるかもしれませんが、よく見ると絵として綺麗なものに出来上がっていると思います。

ロンドンにいた時代から、すでにこのプロジェクトは始まっていたのでしょうか?
そうですね。撮り始めたのが2010年で、2011年の夏に渡米するまでの1年半くらいで撮ったプロジェクトです。この作品はそれまで誰にも見せてなかったんですけど、イタリアのインディペンデント系出版社のSundayにベタ焼きを見せたら興味を持ってくれて、写真集として出版することになりました。400部限定で、イタリアとフランスではすでに販売しています。版元の意向で、日本でも80冊の限定発売です。

今回初の写真集ということですが、今後撮りたい写真などありますか?
ファッションの作品中心の写真展もしたことはあったのですが、写真集はこれが初めてです。ファッションは今も撮り続けているので、まだ作る気はありませんが、いつかはファッション写真でも写真集を出したいですね。あとは日本をテーマにした写真を撮りたいと考えています。僕は20年以上海外にいて、日本のことをあまり知らない。僕から見た日本を、ファッションでもなんでもいいので撮りたいんです。前回、『i-D Japan』創刊号でやったエディトリアルもすごく楽しかったですし。

i-Dではどのように撮り始めたのですか?
22歳の時に渡英して、24歳からi-Dで撮り始めました。初めはテスト撮影をしてi-Dに持ち込んで、6ページのモノクロストーリーで載せてもらったんです。そこから、Levi'sからキャンペーンの撮影を頼まれたりと色々声がかかるようになりました。当時は英語も全然話せなくて、右も左もわからない状態でした。アシスタントを2年、独立してからは18、19年経ちました。けっこう長くなりましたね(笑)。

いままでi-Dで印象に残っている撮影を教えてください。
いっぱいありすぎるなあ(笑)。そうですね、昔テリー・ジョーンズと一緒に撮影をした時に、映画の『欲望』をテーマに写真を撮ろうということになって、主演のデヴィッド・ヘミングス(David Hemmings)の息子で俳優のノーラン・ヘミングスを主役にして撮ったんです。彼と女優のジョアンナ・プレイス(Joana Preiss )の2人を撮ったんですけど、その写真はテリーに唯一「この写真を焼いてくれ」と言われました。すごい似てるんですよ、顔がデヴィッドに。あとは、8人のモデルを撮る撮影の当日、モデルがひとり来なくて、急遽カムデンタウンにモデルを探しに車を飛ばして。そこで、ポーランドから前日ロンドンに着いたばかりという素人の男の子を捕まえて、代役モデルをしてもらったんです。そうしたら2ヶ月後、その子が、マリオ・テスティーノが撮り下ろしたV magazineでカバーを飾っていたんですよ(笑)。

http://takayphotography.com

TAKAY "ECHOS" EXHIBITION
開催期間:開催中〜7月24日(日)
時間:11:00-20:00
会場:BOOKMARC
住所:東京都渋谷区神宮前4-26-14 B1Fギャラリー

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