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家族、人生、KANDYTOWN

早耳リスナーの間で噂となっていた世田ヶ谷・喜多見を拠点とする総勢16名のヒップホップ・クルー、KANDYTOWN。ラッパーのIO、YOUNG JUJU、DIAN、MUD、ビートメイカーのNeetz、MIKIにとって特別な場であるグループについて語ってくれた。

by Yu Onoda
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27 October 2016, 8:50am

加熱する日本のヒップホップ・シーンにあって、BAD HOPやYEN TOWNといったクルー形態のグループが注目を集めている。しかし、鶏が先か、卵が先か。とかく、形ばかりが模倣される傾向にある日本において、ラッパーやビートメイカー、DJや映像作家らからなる総勢16人のヒップホップ・クルー、KANDYTOWNはその悪例に当てはまらない。喜多見など世田ヶ谷エリアを中心に、音楽を始める以前からよく知る幼馴染みである彼らは、BANKROLLとYaBastaという2つのクルーでの活動からナチュラルに発展を遂げたホーム・グロウンな集団だ。

「僕らの周りでは年上のIOくんやRyohuくんたちがやっていたBANKROLLが一番格好良くて、彼らに触発されてYaBastaは活動していたんです。そして、その2つのクルーの間では、例えば、IOくんとYOUNG JUJUが一緒に曲作ったり、そういう親交は日常的にあったので、"じゃあ、KANDYTOWNっていう名義で作品を出そうよ"ってことになったんですよね」(DIAN)

「クルーのルーツがどこなのかって問われたら、世田谷区の喜多見って答えているんですけど、IOくんやNeetzくんだったり、年上チームが喜多見出身で、俺ら年下チームは経堂や千歳船橋、祖師谷が地元なので、地元をレップする感じでもなくて。まぁ、音楽の地域性を敢えて言うなら、"CITY"って感じではなく、まさに"TOWN"な感じ……なのかもしれないですね」(MUD)

ミックステープや限定のストリート・アルバムのリリースで注目を浴び、メジャー・ディールによる初のアルバム『KANDYTOWN』を完成させた彼ら。サンプル・オリエンテッドなトラックで複数のMCが次々にマイクを捌く、その楽曲は洗練されたスムースなタッチにシティポップと通底する特徴があると評されている。しかし、都会幻想を背伸びするように具現化したシティポップに対して、KANDYTOWNの作品はむしろリラックスしたフィーリングに東京ドメスティックなリアリティが感じられる。

「トラックに関しては、意識しているわけではないんですけど、いま流行ってる音楽より、(90年代のスタイルである)サンプル主体のヒップホップが新しく感じるってことなのかな。昔のスタイルを焼き直しているわけではなく、かといって、90年代リバイバルや今の時代を殊更に意識しているわけでもない。実際、僕がトラックを手掛けた「R.T.N」は5年前の曲だったりしますからね」(MIKI)

「どんなアルバムにするか、自分は全く考えなかったし、今回は格好いいことやってるやつ、ちゃんとやってるやつが自然とフィーチャーされる回数が多くなったというだけ」(IO)

この取材も当初伝えられていた人数から増え、ラッパーのIO、YOUNG JUJU、DIAN、MUDに加え、ビートメイカーのNeetz(彼はラッパーでもある)とMIKIという6人が当日の現場に現れた。

「レコーディングの皆勤賞はGOTTZくらい? 作ったビートは最初にスタジオで聞かせるので、その時にいれば、フィーチャーされる回数も自然と多くなるし」(MIKI)

「トラックも最初は俺が全部やってやるっていう勢いだったんですけど、MIKIもいいビートを作ってきたし、Ryohuくんも作ってきたので、アルバムは結果的にいいバランスになりましたね」(Neetz)

クルーでの活動に加え、今年2月にソロアルバム『SOUL LONG』をリリースしたIOに続き、YOUNG JUJUもソロアルバム『juzzy 92'』を完成。KANDYTOWNをプラットフォームに、今後はメンバーそれぞれの活動も精力的に行っていくようだ。

「KANDYTOWNは、簡単に言えば、ソロ活動で外に出ていって、帰ってくるところ。一番近い言葉は"ホーム"になるのかもしれないですね。そこでは何かしててもいいし、何もしなくてもいいし、何もしてなかったら、「なんかやれよ」って言われたりもするし。そして、そこで一緒に過ごしている時間は自分の親よりも長かったりするので、そういう意味で、家族、人生って感じなんですよね。みんな表現者として何かやってないと落ち着かないっていうだけであって、音楽をやってるから、KANDYTOWNってことではなく、音楽をやめても、KANDYTOWNって言ってるだろうし、俺たちのなかではヒップホップクルーとして捉えてないんですよ。公園で遊んでた仲間の遊びがヒップホップになっただけ。だから、解散も集合もない。じゃあ、KANDYTOWNは何なのかって? あまりに自然で、うまく説明出来ないんですよね」(YOUNG JUJU)

Credits


Text Yu Onoda
Photography Shun Komiyama