ビョークの問いに川久保玲はどう答えたか? 作業空間から男性アーティストのエゴまで

The Interview Magazineに掲載されたコムデギャルソンの川久保玲とビョークのメール対談が話題となっている。二人は何を語ったのか? 気になる話題をピックアップした。「空気が淀んでいるような、不快な空間では働きたくないですし、そこにいたくもありません」

by Sogo Hiraiwa
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15 October 2019, 9:54am

コムデギャルソンのデザイナー川久保玲の最新インタビューが「The Interview Magazine」に掲載された。聞き手を務めたのは、世界的なシンガーとして活躍し、現代屈指のイメージメイカーでもあるビョーク。

ふたりのファンはもちろん、最も尊敬する人のひとりとして川久保の名前を上げているビョーク自身にとっても夢のような企画だったはず。メールを介しての対話にもかかわらず、前のめりになっている彼女の姿が文面から伝わってくる。一方の川久保も「あなたは本物のアーティスト」だとビョークに賛辞を送っている。こんな幸福な対話がほかにあるだろうか。

ここでは、そのインタビューのなかでも特に気になった川久保玲の発言を紹介。

新しいものを作るのに経験は邪魔?

ビョークは、アーティストたちの作業空間に興味があるようだ。最近になって彼女は、ミュージシャンや作曲家の多くが最終的に、田舎や街の喧騒からほど遠い場所での隠遁生活にいきついていることに気づいたという。また、その法則が視覚的なアーティストには当てはまらないということを。それは目と耳のメカニズムの違いに原因があるのかもしれないとビュークは問いかける。

それに対して川久保は、自分の頭のなかに存在するスペースについて触れている。「私に必要な空間は、50年間の経験が消え去るスペースです」。新しいものを作るには、これまでに見聞きしてきたものが邪魔になるということのようだ。

また、実空間についてもこう答えている。「けれども、空間それ自体も重要です。空気が淀んでいるような、不快な空間では働きたくないですし、そこにいたくもありません」

ドーバーストリートマーケットの寛大さ

ビョークは、川久保の経営者としての側面にも関心があったようだ。コムデギャルソン=川久保玲という名の下において、その地位やヴィジョンを共有し、若いブランドやデザイナーを支援しているドーバー ストリート マーケットを賞賛し、そうした気前の良さは家母長制ならではのものではないか、と分析している。「有名な男性デザイナーが、他のデザイナーたちのための傘づくりに勤しむ姿は想像もつかない」と。

川久保はそれに対して、「私は結果を考えながら仕事をしたことはありません。この50年間、毎日まいにちそれを積み重ねてきたにすぎないのです」「意識したことはないし、どんな意図もありませんでした」と答えた。

また、ドーバー ストリート マーケットに関しては、異なるイメージや目的、パーソナリティがぶつかり合っている様を楽しんでいると述べた。

ファッション業界の男女差、真の自由

2016年12月、ビョークは自身のFacebookに、音楽業界における女性差別についての長文を投稿している。差別に対する彼女の関心は強い。今回のインタビューでも、川久保玲の特異な立ち位置・功績を称えながら、何度もその話題に水を向けている。

「(どんなものでも白黒はっきりつくものではないし)家母長制と家父長制という二元論は危ういものだけど」と前置きした上で、ビョークは、子どもが求めている栄養を与える“母親”に対して、他人をサポートしようとしない男性のあり方を問う。「何世紀ものあいだ、男性アーティストのエゴは、彼のアシスタントや助手や協働人が成長できる余地を与えてこなかった。私たちが、彼/彼女らの名前を耳にすることも珍しいくらいです」

この指摘をうけて、「女性であるということが自分の仕事にどのような影響を与えているのかを意識したことはありません」と川久保は答えた。「もちろん、私はどんなものであれ差別は好きではないし、日本でビジネスウーマンでいるのはいつの時代も決して容易なことではないけれど……」

また「あなたの指摘する二元論は興味深い」としながらも、川久保はビョークに問いかけるようにして次のように述べている。「純粋なクリエーションがいちばんよく人を育てられると私は思います。そして真の自由は、左と右、現実と非現実、男性と女性といったあらゆる二元論を超越したときにはじめて実現する……そう思いませんか?」

ビョークの答えはこうだ。「100万パーセント同意!!!!!」

『The Interview Magazine』に掲載された川久保玲×ビョーク対話の全文はこちら

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