THE M/ALL 2019イベントレポ 「開かれた」パーティの可能性

GEZAN、あっこゴリラ、kamui、なみちえ、MOMENT JOONらが参加した都市型フェス、THE M/ALL 2019。参加者2000人以上がアーティストと共に合唱し、食い、話し合った。熱狂の二日間をレポート!

by Sogo Hiraiwa
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19 October 2019, 2:00pm

「音楽」「アート」「社会」をつなぐ都市型フェス〈THE M/ALL〉が、9月7日(土)と8日(日)に渋谷WWWの全会場をぶち抜きで開催された。今年で二度目となる本イベントだが、昨年に引き続き入場料は無料。二日間で2000人以上が来場し、数カ所で進行するライブやDJ、トークセッションを思い思いに楽しんだ。

ここではTHE M/ALL 2019のi-D的ハイライトを紹介していく。

会場に到着して最初に見たのはGREEN KIDS。静岡県磐田市にある東新町団地で共に育った7人によって結成されたラップユニットだ。リーダーのACHAが「今日は全員で車に乗ってきました」「金がなくても夢は見れる」とMCをすると、圧倒的な迫力で「E.N.T」や「Singing for Life」を披露し、マイクをつないでいく。日系ペルー人や日系ブラジル人の4世もいるGREEN KIDSは、疎外される対象として自分たちを“緑の奴ら”と定義するが、照明に当たった彼らは紫や赤へとめまぐるしく色を変えていた。

GREENKIDS, グリーンキッズ
GREEN KIDS

続くラッパーのkamui(TENG GANG STARR)は、登場するやいなや痙攣的な動きで曲を披露し、オーディエンスを一気に沸かす。「韓国と日本が国でバチバチやってるけど、俺は自分ができることをする」というMCのあとで歌った「Aida」には思わず目頭が熱くなった。

《ほんの少しのあいだで良い ここで立ち止まってみて欲しい/自分以外の立場について 君と考えたいんだ》《綺麗事かもね 多分/偽善かもね 多分/誰かにとってはそれでもただいい人間でありたいんだ》

kamui
kamui

kamuiは「あいちトリエンナーレに呼ばれなかったことに憤慨している」と話し会場を笑わせていたが、別会場では「表現の不自由展・その後」が3日で中止となり話題となった〈あいトリ〉を巡って中野晃一と武田砂鉄による白熱したトークが行われた。アーカイブはこちらで視聴可能。

現役藝大生のラッパー、なみちえを見ようと移動をするも、WWW Bはすでに超満員。オーディエンスは入りきっておらず外の階段には、音だけでも聞こうとする人だかりが。「TAMURA KING」や「おまえをにがす」ではところどころ合唱が起こっていた。

なみちえ
なみちえ

THE M/ALL参加者に「今回のベストアクトは?」と訊いてみれば、MOMENT JOONの名は間違いなくその筆頭に上がるはずだ。ステージは昨年と同じWWW、しかし今年は入場制限がかかる超満員。

「マジ卍(Maji Manji)」では、丸山穂高議員の「戦争で取り返すしかないんじゃないですか」発言などをサンプリング。この日初披露となった新曲「手のひら」では、《今ECDさんに会えたら 俺は何を言おうか/マジ怖くて 怖くて逃げたいですとは言えない/でも彼なら俺の言いたいこと 知ってるかもしれない》と歌った。観客は皆自らの手のひらをステージ上に向けて、MOMENTへの連帯とリスペクトを示していた。

モーメント・ジューン
MOMENT JOON
Moment Joon
新曲「手のひら」に呼応する観客

ライブの興奮が冷めやらぬうちに、会場を移してMOMENT JOONとライターの磯部涼による対談が始まった。ここでも立ち見が出るほどの盛況ぶりだ。話題は現在制作中のアルバムからはじまり、「子どもの頃に別れたけど亡くなった後に発見した自分の父」のように感じているというラッパーのECD、『文藝』に掲載されて話題となった自伝的小説「三代」、自身の兵役経験へ。興が乗ってきたところで時間切れ、最後にMOMENTが「皆さんに言いたいことがあって」と会場に次の言葉を送った。

「ここに来ている人たちは、自分たちが享受している文化やコンテンツがいわゆる“日本のメインストリーム”とは違うって意識してはると思うんですけど、その考え方を変えてもらいたいんですよ。(…)皆さんがど真ん中なんです。僕がど真ん中なんです。僕がやってるヒップホップが正しいヒップホップだと思ってやってます」

GEZAN, マヒトゥ・ザ・ピーポー
GEZAN

一日目のトリにはGEZANが登場。WWW Xのドアを開けるとすでに演奏が始まり、フロアを埋め尽くすオーディエンスの熱気は最高潮に達していた。ボーカルのマヒトゥ・ザ・ピーポーが「この曲をやりにM/ALLに来ました」と言って歌い始めた「東京」では《一億総迷子の一人称》《新しい差別が人を殺した朝/悲しさってなんだろう》と言葉を重ねていき、東京の今の姿を歌う。「東京」とは彼が暮らす街の名であり、ひいては日本全体のことだと言える。彼は何度も《応答してよ 東京》とシャウトしていた。

「NO GOD」では、冒頭から野獣のような唸り声が会場を包み込んでいく。マヒトは「答えがわかんなくても叫んでいい」とMCをしていたが、不条理だらけで物事が複雑化していく現代を生き抜くためには、理知的な言葉と同じように(あるいはそれ以上に)叫び声を上げていくことが必要なのかもしれない。

GEZAN
マヒトゥ・ザ・ピーポー

二日目は10:30から始まった。この日はトークセッションが多く、一本目はライターの佐久間裕美子と、アーティスト/モデルとしての活動する白濱イズミ(らぶり)がワークショップを行ない、どうしたら投票率を上がるのか?を観客と共に思考していった。

トークが二本続いた後に登場したのは、ラッパーのあっこゴリラ。その場にある椅子やスピーカーの上に乗り、「GOOD VIBRATIONS」や「余裕」を披露した。トークを聴く姿勢だったオーディエンスにレスポンスを煽り、どんどん場の熱を高めていく。「権力者たちは身勝手なことをするけど、私たちはグッド・バイブレーションを保っていきたい」あっこゴリラはMCでそう強く言い切った。

あっこゴリラ
あっこゴリラ

ライブ後には、DJのSapphire Slowsとトランスジェンダー活動家の畑野とまとが「クラブ」の歴史を紐解くレクチャーを行い、クィアの人々がいかに「クラブの誕生」に貢献していたかを豊富な資料と共に示した。クラブが元来、差別から身を守りながら安全に楽しむための場所「セーフ・スペース(もしくはセイファー・スペース)」を作る試みだったとすれば、いまだ日本のクラブで起こっている差別やセクハラは、お門違いもいいところの愚行でしかない。

The M/ALL 2019
無料開催を実現するためにアーティストやイラストレーターがデザインしたTシャツの数々
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会場には本屋やブリトーやカレーを提供する飲食店も出店していた

今回、受付で来場者に配られたリストバンドにはこう書かれていた。

「THE M/ALLは、人種、ジェンダー、宗教、年齢に関わらず、全ての人が安心して楽しめるスペースと時間を参加者全員で作っていくイベントです。差別的な行動、ヘイトスピーチ、痴漢行為、暴力行為、等があった場合はスタッフにお声かけください。すぐ対応します! みんなで助け合いましょう。MAKE PARTY!」

いい飲食店はいい客がつくるというけれど、いいパーティにもいいオーディエンスは欠かせないはずだ。THE M/ALLはエントランスフリーで敷居を下げながらも、同時に強く理想を掲げ、来場者に参加を促していた。パーティはたしかにそこにあった。

畑野とまと, サファイアスローズ
超満員のSapphire Slowsと畑野とまとによるトークセション。あっこゴリラも参加した
Eric, 香港デモ,
香港出身の写真家エリックによる、香港デモに参加する若きプロテスターの写真展示
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