「ずっと厄介者だった」レジー・スノウが語る、過去の孤独と最新アルバム『Baw Baw Black Sheep』

9月に初来日を果たし、東京・大阪でライブを披露したラッパー、レジー・スノウ。初めて訪れた日本の印象や製作中のアルバム『Baw Baw Black Sheep』、華やかなレジー・スノウの裏側にいる〈アレックス〉について語ってもらった。

by MAKOTO KIKUCHI
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05 November 2019, 1:30am

レジー・スノウ初来日公演のニュースを聞いて、i-D Japanの編集部は浮き足立った。アイルランドのダブリンで生まれ育ち、サッカーの奨学金でフロリダの大学へ進学。留学中にエルトン・ジョンが設立したロケット・マネージメントからオファーを受け、本格的なデビューを果たした。ジャジーなサウンドとアイルランド訛りが混じった心地よいラップで世界中の若者から絶大な支持を得ている。

そんな彼が、大阪と東京でライブを披露するという。当然のごとくチケットは即完売。レジーへ取材のオファーをしたいという話が編集部で持ち上がっていた矢先、なんと本人から、i-D JapanのインスタにDMが届いた。

「9月に東京に行くんだけど、どこか良い場所知らない?」

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こうして取材はスムーズに実現した。彼の東京公演の翌日、集合場所は原宿にある刺繍グラフィックを特徴とする葵産業のアトリエだった。お気に入りの刺繍デザインを選びながら、昨日の公演について「いいエネルギーだった」と振り返る。公演中、彼が微笑むたびに会場から「かわいい!」という声があがっていたことを伝えると、「君たちもかわいいよ」と照れたように笑う。

「最近は自分に自信を持てているし、自分の在り方みたいなものもわかってきた。だからライブ中も笑顔になってたんじゃないかな。前はもっとネガティブで、うつむいてる感じだったんだ。全然気づかなかったな。僕は気が散りやすいから、パフォーマンス中は他のものに目をむけないようにしてる。でも僕が笑顔になってほかの人が幸せな気持ちになるんだったらそれはすごくいいことだよね」

そんな彼に日本の印象を聞くと、「すごくいい印象だね。個々性が強いんだ」との返答が返ってきた。「洋服のスタイルとかもそうだけど、個人がやりたいようにやっている。それってロンドンにもどこにもないような気がする。すごくインスパイアされた」

現在インスタグラムで19万人近いフォロワーを持つレジー。特にアルバム『Dear Annie』をリリースしてからは、ロンドンの街中で声を掛けられることも増えたという。「原宿で何度か僕のことに気づいた人に声を掛けられたんだ。ロンドンから遠く離れた東京で気づいてもらえるのは嬉しいね」

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2016年にNoiseyで公開されたレジーのドキュメンタリー映像を見るとダブリンの街で地元の仲間と遊んだり、彼の祖母(レジーは大のおばあちゃんっ子だった)を尋ねる様子が映し出されている。日本でいうところの「地元レペゼン」的な感覚はあるのだろうか。

「そもそもラップが自分のルーツやバックグラウンドを辿るものだっていう考え方はあるよね。最近のラッパーだと、それをエピソードとして曲にする人も多い。でも俺にとって実はラップはそれ以上のもので、自分のためでもあるし、友人や家族に向けたものでもある」

レジーと一度話したことのある人は誰もがこう言うであろうが、彼は「人気ラッパー」のステレオタイプにまったく当てはまらない。インタビューのあいだも相手の目をきちんと見て、リスペクトを持って話してくれる。その印象をそのまま彼に伝えると「自分は自分だから」と話す。「すべての人と平等に接したい。はじめから今の状況みたいだったわけじゃないし。『ファックユー』って態度になっていいわけじゃないでしょ」

「音楽的にもステレオタイプには当てはまらないんだ。ラップ自体自分ではそんなに聴かないし、他のジャンルの曲のほうがよく聴く。ポップソングもつくりたいなと思ってる。自分に余白を持たせたい」

話を聞いているうちに、とある疑問が浮かんだ。彼は、レジー・スノウでいることに嫌になったりしないのだろうか。レジーではなく、ダブリン出身のアレックス(本名)だったらと願うことはないのだろうかと聞くと「毎日。毎日そう願ってるよ」と答えた。

「レジー・スノウでいるあいだは、みんな俺のことを知りたがる。でも俺はプライベートなタイプだから、それに疲れちゃうんだ。でも自分がこれまで出会ってきた人たちのおかげで〈レジー〉が出来上がったと思っていて、それにはすごく感謝している。もちろん若い子たちが自分に憧れたり、音楽を聴いたりしてくれるのもすごく嬉しいし、それが音楽をつくるモチベーションにもなってる。俺はレジーであり、でもいまだにアレックスでもある」

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「もうすぐまた新しいアルバムを出すんだ」とレジー。「前回のアルバムよりもずっとパーソナル。Dear Annieは20曲も収録したんだけど、すごく気分が落ちていた時期だった。今回のアルバムは12曲、自分のなかで消化できてると思う。すべての曲に納得がいってる。『Baw Baw Black Sheep』っていうタイトル」

ブラック・シープ、英語で「厄介者・はみ出し者」を意味する言葉だ。「俺はブラック・シープだから。少なくとも昔はそう思ってた。アメリカに行くまでは黒人の友達がいなかったから。いつも「他と違う」っていう立ち位置。このアルバムでは音楽を通じてそれを表現してる」

インタビューの後日、彼から「また日本に行きたいな」とのメッセージが送られてきた。きっとすぐ来るんでしょう、と送ると数分後に返信が来た。「日本で〈アレックス〉は存在できると思う?」もちろんできるよ、と返しながら、そうであってほしいと心から願った。

Credit


Photography Kazumi Asamura Hayashi
Text Makoto Kikuchi

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