イングランド北部が世界に与え続けてきた影響

北半球のなかでも北に位置するイングランド。そのさらに北の北部は、南部とは相容れない特異な文化をつねに発信し続けてきた。リアルだからこそ生まれるもの——「ザ・ノース」の底知れぬ力とは?

by Matthew Whitehouse
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14 December 2016, 7:00am

Photography Brett Dee, The Anarchy Issue, no. 82, 1990

「ザ・ノース」という言葉は、私たちイギリスに暮らす者の心のどこかに、特別な意味を持って響く。ノースに縁もゆかりもなく生きてきたひとの心にも、どこか響くものがあるのだ。雑多な要素がひとつのまとまりあるカラーを打ち出して広がりを見せるサウスに対し、ノースはある意味でコンセプチュアルな、定義し難い"空間"とも言うべき存在感を持っている。ロンドンから2時間ほど北上すると、なにか境界線を跨いでしまったような錯覚に陥るときすらある。文化の違いは政治的・言語的・風土的なものでもある。なにしろノースは、頑固で陰鬱で複雑でパワフルな「サウスではない」なにか——底知れぬオーラを持った、大きな存在なのだ。

しかし、だ。ノースは質素な料理を食べ、サッカーに熱狂するだけの国民性ではない。いや、ある意味ではそれがすべてでもある——だからこそそこには大きな存在感が生まれている。政治の影響を色濃く映す生活がそこにはあり、だからこそのユーモアがそこに生まれ、それが詩的に、ロマンチックに描かれてきた。そこには美と真実がある——そんなノースという世界を祝福するエキシビションが来年、リバプールのOpen Eye Galleryで開催される。

Photography Jason Evans, Untitled, Manchester, 1997

SHOWstudioのルー・ストッパード(Lou Stoppard)と、フォトグラフィー集団Preston Is My Parisの立ち上げメンバーで自身もノース出身のアダム・マレー(Adam Murray)が共同キュレーションを手がけたこのエキシビション『ノース』。「写真やアート、ファッションでノースがどのように語られ、イメージ構築され、祝福されてきたか」を探る内容となっている。

1月6日にオープンするこの展覧会には、ジェイミー・ホークスワースやアラスデア・マクレランの初期作品から、クリストファー・シャノンやジョン・スケルトンの服飾作品、そしてOff-Whiteのヴァージル・アブローとHaciendaのベン・ケリー(Ben Kelly)によるコラボレーション作品などが展示される。デザインやメディアで繰り返し打ち出されてきたノースのイメージやテーマを紐解くと同時に、ノースに関係する作品が一同に会することで「ノース」の明確なヴィジョンを構築しようというのが狙いだ。

「イングランド北部『ノーザン・イングランド』という土地的アイデンティティは、これまで常に私の創作活動において原動力のコアであり続けています」とマレーは話す。「私を魅了し、そして私に私という人間の存在を意識させてくれたアーティストたちの作品に触れることで、人々がそれぞれの人生経験と照らし合わせ、人生について考えてくれればと考えます。これまで世界のクリエイティブ・カルチャーにおいて大きな存在感を放ってきたリバプールを軸に、ノースに関連した作品を一挙に展示する最高の機会をOpen Eye Galleryから頂いのだと、嬉しい気持ちでいっぱいです」。鬱屈としたノース——しかし、ノースに生まれた作品はどれも、ノースという土地がリアルだからこそ生まれた、血の通った作品ばかりなのだ。

Raf Simons autumn/winter 03. Image courtesy of Raf Simons.

Photography Alasdair McLellan, Boy at the Saint Leger Fair, Doncaster, September 2005

Photography Stephen McCoy, From the series Skelmersdale, 1984

Credits


Text Matthew Whitehouse
Translation Shinsuke Kuriyama at WORDSBERG Inc.

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