ロンドン・ファッションウィーク Day 1

ロンドン・ファッションウィークが幕を開け、Ashley Williams、Marta Jakubowski、Le Kilt、Caitlin Price、そしてCSMがランウェイの先陣をきり、時代を映し出す作品を次々に発表した。

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feb 21 2017, 11:45am

Photography Mitchell Sams

アシュリー・ウィリアムズ(Ashley Williams)

「Go into the garden, go under the ivy / Under the leaves, away from the party(パーティから抜け出して庭へ出て / アイヴィーの下へと潜り葉の下に隠れよう)」 Ashley Williamsの2017年秋冬コレクションのショーノートには、ケイト・ブッシュ(Kate Bush)の歌詞が力強いフォントで印刷されていた。トニー・ホーネッカー(Tony Hornecker)による緑と家具とカラーコーンいっぱいのセットを、カットソー・トラックスーツやボマージャケットなどをまとったモデルたちが闊歩し、ケイト・ブッシュの世界観を共にしていた。退屈なパーティから都会のジャングルへと逃げ出すにはうってつけのルックの数々——「MISERY」と大きく書かれたモチーフで、パーティ参加者には退屈しているあなたの気持ちが伝わってしまうかもしれないが……。昨シーズンから引き続きの登場となる、ボリュームあるドロップ・ショルダーのマトン・スリーブは、ベビーピンクのシャツドレスや、ストレートカットのジーンズにたくし込まれたモノクロのハワイアンシャツ、「Classic」や「GIMMIE FIVE!」などのスローガンがプリントされたフーディなどに配されていた。

アメリカの映画カルチャーに大きな影響を受けていたというデザイナーのアシュリー。2017年春夏コレクションではそれから少し距離を置き、80年代初期にイタリアのミラノを中心に巻き起こったサブカルチャー、パニナロにインスピレーションを得たという。アシュリーは大学の論文制作で、このパニナロをテーマに選んだそうだ。「パニナロは、80年代初頭にミラノのティーンたちの間で巻き起こったアメリカン・カルチャー崇拝のサブカルチャー」とアシュリーは、ショーのバックステージでi-Dに語ってくれた。「アイヴィー・リーグをはじめとするプレッピーなもの、カウボーイ、煙草のマルボロが広告で打ち出した世界観などを、ミラノのティーンたちはあくまでもイタリア流に解釈して真似たのです。そうして生まれたものはとてもスタイリッシュだったんですよ」と彼女は説明する。「通常、サブカルチャーといえばパンクやエモなど反逆的な姿勢が特徴的ですが、パニナロはただスーパー・メインストリームの雰囲気を作り出すというものだったのです」

パニナロの影響は、アシュリーの親友クレア・バロウ(Claire Barrow)がショーでスポーティなクロップド・ダウンジャケットと合わせていたプレッピーなキルトや、タッグ入りワイド・パンツに感じられた。また、フリンジが付いたレザーやポニースキンのカウボーイ調テールコート、ブラックのスポーティなレーサーネック・トップス、そして環境問題と戦うGlacier Girlに着せた「Save the Planet」スローガン・ドレスなどもまたパニナロの影響が垣間見えた。頭には、気取ったカウボーイハットが合わせられるか、もしくは「Paradise」「Paranoia」という文字が光るキラキラのヘアクリップがあしらわれていた。

Text Charlotte Gush

Image via Instagram

マルタ・ジャクボウスキ(Marta Jakubowski)

ゲイリー・カード(Gary Card)によるセットにチャカ・カーン(Chaka Khan)やシャーデー(Sade)の音楽が流れたMarta Jakubowskiのショーは、ロンドン・ファッションウィーク初日の話題をさらった。デザイナーのマルタ・ジャクボウスキは、2017年秋冬シーズンに明るく大胆でカラフルなヴィジョンを打ち出した。ヒラリー・クリントンを思わせるパンツスーツを虹のごとくあらゆるカラーで展開し、パワフルな女性のストーリーをそこに描いた。

Text Felix Petty

Photography Mitchell Sams

セントラル・セント・マーチンズ(Central Saint Martins)

CSMのショーはいつでも特別だ。ショーで特別な才能に出会える(CSMにとっては「生んだ」ということになる)というだけでなく、とにかく感動的な雰囲気が支配するショーになるからだ。友人や家族、ファッション関係者が一体となって、過去、現在、そして未来のファッション界のスーパースターたちをサポートし、思い、そして讃えるイベントなのだ。

L'Orealプライズ受賞者のふたり、ニットウェアコースのゲイブリエル・スキューカス(Gabrielle Skucas)とファッション・テキスタイルコースのステファン・クック(Stefan Cooke)は、やはり技術面でも表現面でも秀でていた。麗しい女性が次から次へとランウェイに登場し、彼女たちがまとったブラックのプリーツスカートは様々な丈にデザインされて、その上にはクリーム色のカシミアブラウスが合わせられた。シャープでモダン、そして知的な世界観には、敬虔な宗教信者の雰囲気にしてロマンチックで、しかし意図的に抑えられた美しさが漂い、「#Looks」「#LooksToTry」などのハッシュタグでソーシャルメディアを騒がせるに違いないと思わせた。一方のクックは、だまし絵の手法とテーラリングを用いた、緻密に考え抜かれて技術が光るコレクションを発表した。デニムやタータンのプリントに覆われたソフトなシフォンブラウスが、シックなパンツに合わせられるなどした。

ウィメンズウェアのデザイナーたちの間では、ディスコ・フィーバーが巻き起こっていた。エマ・チョポーヴァ/ローラ・ロウェナ(Emma Chopova/Laura Lowena)とガブリエア・サルデーニャ(Gabrila Sardena)などがその筆頭だ。フューシャ、レッド、明るいグリーンの数々、そして装飾が多く盛り込まれた両者のコレクションは、派手を極めたファッションを果敢に主張する世界観を打ち出した。これはファッションの世界で失われがちな世界観であり、特に学生たちは模索すべきものだ。大胆な女性像を見せてくれた両者に喝采を送りたい。素晴らしかった。

メンズウェアのデザイナー、ロバート・サンダース(Robert Sanders)は、スタイリングとテクスチャーで、大きなデニムやウール、カットソーに遊びを加え、素晴らしい世界を見せてくれた。ベーシックなアイテムを遊び心いっぱいに解釈し、クールに見せてくれた。オリヴァー・テーム(Oliver Thame)の美しいトライバルプリントと男性性の祝福の世界は、ランウェイにパワフルなヴィジュアルを描いていた。ここで挙げたスターたちは、今後多いなる活躍が期待できるだろう。

Text Bojana Kozarevic

Image via Instagram

Le Kilt

サム・マッコーチ(Sam McCoach)は、180 The Strandで開催した2017年秋冬コレクションのショーで、彼女がもっとも得意とする世界観を打ち出した——イギリスの感性をイギリス製の服で表現する、というものだ。『A Perfect Contrast』と題された今回のコレクションで、マッコーチは生地のチョイス(今季はカシミアを使用していた)を改善し、手作業によるスカート最終制作工程をスコットランドで行なうなどして、彼女のトレードマークともいえるキルトを次なるレベルへと押し上げた。ディテールへのこだわりはスカートだけに留まらず、手作業で染めたジャンパーに取り付けたバッジやボタンなどのディテールは、マッコーチの親友でありエディンバラ芸術大学生徒のクリスによる作品を用いている。他にも、マッコーチはレインコート界の王者Macintoshと組んで、突然の天候変化にも対応できるゴム製のコートやドレス、ジャケットを作り出していた。このコレクションには全体的に60年代の感覚が溢れており、メイクを担当したトム・ウォーカー(Thom Walker)はビート世代女性の美的感覚にインスピレーションを求めて、厚塗りのまつ毛やコール・アイライナー、太い眉毛などを現代的に解釈してみせた。グルーヴィー!

Text Lynette Nylander

Image via Instagram

ケイトリン・プライス(Caitlin Price)

すっかり成長したケイトリン・プライス。今季は、自身にとって5度目となるコレクションを発表した。CSMの卒業生であるプライスだが、昨シーズンまで見せていた甘いアルコールドリンクと快楽主義の世界を卒業し、今季はより構造的な世界を探求していた——照明がアップされた時に登場すべきパワー・ドレスの一種だ。プライスのトレードマークともいえる生地使いとラッピングは健在で、今回もこれまでに続きアート・ディレクターのジョセフ・ボンド(Joseph Bond)とのコラボレーションによるショーとなった。しかし、そこにはこれまでプライスが繰り返し探求してきたティーンや思春期の世界観はなく、今季プライスのコレクションはただグラマラスだった。威厳さえ感じさせるものがあった。もちろん、ハイとローのミックスは引き続き健在で、ハイネックのトップスやクロップドのボマーなどにはプライスがスポーツウェアに対して持つ愛が感じられた。しかし、シックなスカートやタフタの風合いには、プライスが辿り着いた成熟とエレガンスの世界が感じられた。とても気に入った。

Text Matthew Whitehouse