アメリカン・ドリームを問う英国写真家

ハリウッド・ウォーク・オブ・フェームに残るドナルド・トランプのプレートにおしっこをかけたり、トランプの名前が書かれたコーヒーカップでアメリカの暗部をあぶり出したり——あどけない皮肉を作品に描くデイリーに、ユーモアについて、政治について、そして自分自身でいることの大切さについて聞いた。

by Tish Weinstock
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27 October 2016, 10:52am

ロサンゼルスへと移住したジャック・デイリー(Jack Daly)は、そこで出会った人々や、アメリカの大手マスメディアに見る人々に強い興味を持った。イギリスの田舎町に育ったデイリーは、現在23歳。主に架空のキャラクターたちを被写体とした作風を確立しているが、最新作のシリーズでは、McDonald'sのロナルド、『スターウォーズ』のストームトルーパー、星条旗など、アメリカを象徴するモチーフに焦点を当てている。なかでもデイリーが強い興味をもって迫ったのがドナルド・トランプで、ハリウッド・ウォーク・オブ・フェームにあるトランプの星に小便をしている作品や、トランプの名が配されたコーヒーカップを撮った作品などがあり、デイリーの政治的姿勢は明らかながらも、そこにはあどけない冗談めかした若さが垣間見える。アメリカ大統領選挙投票日が迫るなか、i-Dはデイリーに、ユーモアについて、政治について、そして自分自身に忠実であることの大切さについて聞いた。

あなたがアートでやろうとしていることとは?
物事にユーモアとポジティブさを忘れないようにしているんです。僕には確固たる意見や視点があるわけでもないし、そういったものを作品で訴えようとも思っていませんからね。ただ、いま世界で起こっていることに"笑い"を見出したいんです。僕は実在の人物よりも、作られた架空のキャラクターに惹かれるんですが、伝えたいストーリーを表現する際には、テーマや小道具を使って、現実よりもフィクショナルな世界観に仕上げます。

最新作のコンセプトについて教えてください。
僕は、見る映画のほとんどにアメリカ英語が使われている時代に育ちました。だから、ハリウッドに移り住んで、実際にアメリカン・アクセントで話すアメリカ人たちをこの目で見たときは不思議な気持ちになりました。僕の作品には、いわゆる"ベタ"なロサンゼルスやアメリカを捉えた作品もあるし、そこで出会った人々を記録したような作品もあります。その場で衝動的に撮った、控えめな印象の作風を心がけています。僕は技術を駆使して写真作品を作るフォトグラファーではないので、作品はほとんどが僕の実生活の視点を捉えたものです。そこに僕と被写体だけしかいないようなね——たくさんのスタッフを従えて撮った写真にフォトショップで加工・補正、というような写真家ではないのです。今、アメリカは大統領選に沸いていますから、それをイギリス人の視点から捉えた作品を数点発表しました。

アートは、アーティストの政治的視点を反映させているべきなのでしょうか?
そうは思いません。僕は自分の視点を表現してくれそうなキャラクター、面白い画風を作り出してくれそうなキャラクターを被写体に写真を撮っているだけです。僕が扱う被写体はほとんどが実在しないキャラクターですが、ドナルド・トランプは被写体として面白いし、自らそう自己演出をしているんです。だからこそ恐ろしいですよね。権力を手にしてしまってはいけない実在の人間なのに……あれはマーティン・スコセッシの映画に出てくる面白いキャラクターなどとはわけが違うわけですから。

トランプが大統領になったら、あなたにはどのような影響が及ぶと思いますか?
まず僕がカリフォルニアに来ることは無理になるでしょうね——747機の裏にしがみついて入国しないかぎりは。アメリカが無茶苦茶になるだけならまだしも、トランプがここまで大統領選を勝ち上がってきてしまったことを許してしまっている人類の行く末が怖いです。でも物事にはポジティブな面が必ずあると信じています。トランプをモチーフにしたアートがたくさん生まれるでしょうね。

若いからこそできる最も勇敢なこととは?
自分自身でいるということ。ひとがどう思おうと気にしない、自分がなりたい最高の自分であれるということは、実は最も困難なことだと思います。それができているひとに、僕は無条件で敬意を表します。そんなひとが実在するのであれば、ですが。

@jackdalyphoto

Credits


Text Tish Weinstock
Photography Jack Daly
Translation Shinsuke Kuriyama at WORDSBERG Inc.

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