i-D Japan no.6 フィメール・ゲイズ号 「エディターズ・レター」

編集長・林香寿美による「エディターズ・レター」。9月28日発売の『i-D Japan no.6』フィメール・ゲイズ号には、総勢147名の女性クリエイターが参加。 彼女たちとその創造性を祝福します。

by Kazumi Asamura Hayashi
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31 May 2019, 1:00am

女性の作り手とそのクリエイションを祝福したい。本号「The Female Gaze issue」はその一心から始まりました。今回参加していただいたフォトグラファー、モデル、スタイリスト、ヘアメイク、執筆者の総数は147名。イギリス、アメリカ、中国、台湾、イタリアからのコントリビュータにも参加いただきました。

「The Female Gaze issue」が刊行されるのは今回が2回目。というのも、本国のi-Dが2016年8月に出した同名の号が存在するからです。その号は、参加フォトグラファーが全員女性という異例の試みでした。日本でも同じコンセプトで出せないか? そう思わせるほどインパクトが強く、挑戦的な1冊でした。

本号の制作を進めていくなかで、いくつも論点が浮かび上がってきました。たとえば、写真や映画などのビジュアル表現にかかわる男性クリエイターの多さ、そして、そこから生まれる“物差し”に対する疑問です。ビジュアル表現の良し悪しはどう決まるのか? それを判断する審美眼はどうやって育まれるのか? それまで目にしてきたものの蓄積? 評論家、批判家たちによる言説? 一見ニュートラルに見える「美しさ」や「格好良さ」は、もしかするとずいぶん偏ったものなのかもしれない。私たちの目にはきっと女性のクリエイションが足りていない。

本号ではすべての企画で女性のフォトグラファー、スタイリスト、ヘアメイク、執筆者に参加いただきました。制作を通して素晴らしい才能たちと協働できたこと、また、彼女たちと共に、日本のクリエイション制作を取り巻く環境に対する、ひとつの応答を示すことができたことを誇りに思います。

カバーを飾るのは水原希子さん。インタビューの冒頭で「彼女はまだ誰も通ったことのない道をゆく」と野中モモさんが言うように、彼女は自身が発信するクリエイションや発言で人びとを魅了しながら、新しい世代のロールモデルとなっています。彼女の今を写真に収めたのは長島有里枝さん。意外にもふたりが一緒に撮影をするのは今回が初めて。スタイリングに北村道子さん、ヘアメイクに田崎未来(はるか)さんを迎えた撮影は、長島さんの旧くからの友人の家で行いました。このカバーストーリーではふたりの親密な関係性があらわれている。そんなふうに思います。

本号のテーマになっている「フィメール・ゲイズ」についても少し。これは、映画評論家のローラ・マラヴィが、ハリウッド映画における、男性視点の思考によって女性を性的対象化する視線に対して批判的に名づけた「メイル・ゲイズ」に対する造語にあたります。ですので「フィメール・ゲイズ」に明確な定義はありません。本号でもそれを定義づけるつもりはありません。それでもこの(空っぽの)言葉には可能性を感じます。

一人ひとりの作り手がなにを考えて表現しているのか。あなたにとっての「フィメール・ゲイズ」とは何か。そんなことを考えながら、本号を楽しんでもらえたらと願っています。

THE ROOM OF OUR OWN:私たちだけの部屋

この記事が掲載された 『i-D Japan No.6』フィメール・ゲイズ号は全国書店にて現在発売中。