あなたに導かれて:Jenny Fax 19SS

運命的な出会いによって、浮遊する心の動きをエネルギーに変えたJenny Faxのちょっと新しい表情がこちらを覗く。

by i-D Japan
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23 October 2018, 8:09am

今回シュエ・ジェンファン監督のもと描かれた主人公は、80年代アメリカの田舎で暮らす一人の少女。「あなたのような人が私を好きになるなんて夢にも思わなかった」。恋愛映画であればおそらく田舎で退屈してる可愛い女の子が、イノセントな表情で母親の車に乗り込み、一緒にデートのための花柄ドレスを買いにいくところだろう。しかし、ここで繰り広げられるストーリーは少し歪む。遊びゴコロとダークサイドがついてまわる、そんなエンディングをみんなが待ち望んでいるのだから。

今回ジェンファンはホラー映画好きな主人公を中心に、アメリカンカルチャーのダークサイドを描いている。ここは誰かの家なのか、彼女の妄想の中なのか、少女が恋心を抱いた後の出来事なのか。宙に浮かぶアンティークの二人掛けのソファや赤色の照明におどろおどろしい展開を想像してしまう(まだ脱ぎ捨てた洋服や刃物がないだけ悲劇ではないかもしれない)。

jenny fax
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Jenny Faxはこれまで、身近な家族——母、妹、そして彼らの不揃いな愛らしさを表現してきた。彼女のイメージする少女像は「優等生じゃなくて、何かで“スペシャル”になりたい子」。2012年春夏のデビューコレクションには、実の妹がKISS風のメイクと厚底のラバーソールを履く姿に「普通の女の子も個性に自信を持ってほしい」という想いを込めていた。その後も彼女は、レースやリボン、パステルカラー、学生服を再構築したものを組み合わせ、服ひとつで少女特有の複雑な感情を個性として開花させてきた。自身のお母さんとの記憶を巡ったり、故郷・台湾を懐かしむノスタルジックでレトロな服作りで、彼女はいつだって個人的で、内面的なものと向き合っている。

ファーストルックは、Jenny Faxのシグニチャー的なディテールであるビッグショルダーが、より過剰に膨らんだつなぎ。メイクの仕方なんて知らず、お気に入りのステッカーを無茶苦茶に顔に貼り付ける姿、シンプルでどこか懐かしみのあるロング丈のドレスの上に田舎のおばあちゃんのぶかぶかな下着を履いたり、おばあちゃんの入れ歯で“お洒落な”チョーカーをつくってみたりして今シーズンのイメージはどんどん膨らんでいく。愛らしいドレスの数々や、大胆に再構築されたシャツやスカートなどは、前シーズンに引き続きジェンファンの母にインスパイアされたものだ。フィナーレで先頭を歩いてきたピンクの水玉模様のルック。それは“少女”のお気に入りの一着にも見えるし、一方で、狂気的な道化師のようでもある。そんな二面性が、今シーズンのJenny Faxのドレスに込められたストーリーだ。

jenny fax
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今回のショーのスタイリングは、VETEMENTSやBALENCIAGAのスタイリングも手がけるロッタ・ヴォルコヴァ。彼女はジェンファンの手を引き、フェミニニティをコレクションに差し込んだ。少女のお腹がシャツの隙間から覗いたり、手にパンティを握りしめたり......。意図的に魅せる素肌が、こちらをドキリとさせる。ロッタは楽しそうにショーを振り返る。『ツインピークス』やゾンビ映画、B級映画などをリファレンスに「ジェンファンが描く今回のイメージを共有してもらって、お互いに何かキャラクターを立てたり、脱構築を重ねた」と語った。

このショーで一組のデザイナーとスタイリストが初恋のような運命的出会いをはたし、ジェンファンが描く主人公もまた他者との触れ合いにドギマギしていた。けれど、最後には心を開いたクレイジーでキュートな女の子がランウェイへと歩をすすめたのだ。

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