バイヤーへの道 by Machine-A創設者スタヴロス・カレリス

ファッションの世界に生きたいけれど、どんな道を辿れば良いのかわからない——そんなことを考えて足踏みしている読者も多いはず。i-Dファミリーに、彼らがどのようにしてデザイナーに、スタイリストに、ライターに、ディレクターになったのかを聞くこのシリーズ。今回は、Machine-Aのバイイング・ディレクター、スタヴロス・カレリスに話を聞いた。

by i-D Staff
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19 October 2016, 7:50am

「セントラルにいるときは必ずスタヴロスに会いに店に行く」と、ネイサー・メイザーは、i-D記事『ロンドンの伝説的ストアに見るファッションムーブメント』のなかでMachine-Aについて書いている。ネイサー同様、多くのファッション関係者が、ロンドンを訪れる際には必ずSOHOにあるMachine-Aへと足を運ぶ。マッサージ店と美容院のあいだに、融けこむように作られたこのショップ。「有名無名を問わず、若く才能あふれるクリエイターたちを祝福する場を」とスタヴロスが開いたMachine-Aは、そこで作品を扱っているクリエイターたちと共に大きな成長を見せてきた。2017年春夏コレクションの傑作を発掘するためにショーや展示会を駆け回り、ショールームでの商談などに忙殺される日々が予想されるスタヴロス。彼が、ファッションバイヤーになる夢を実現するための秘話を教えてくれた。

何をしているか、そしてなぜそれでなければならないのか。
僕はMachine-Aの創始者であり、バイヤーのディレクターを務めると共に、SHOWstudioのオンラインショップでもバイヤーのディレクターを任されている。任されたのは、まずバイイング。そして、デザイナーやブランドとコラボレーションで取り組んでいるさまざまなクリエイティブプロジェクトをきちんと監修すること。僕の仕事は、ビジネスとして予算が決まっているからこそ多くを要求される、難しい仕事。店として、お客様が喜んでくれる商品を入荷の6ヶ月前に判断しなきゃならないから、どんな判断も間違っていてはいけない。商品の売り上げだけが収入源だから、市場も商品もお客様もデザイナーもブランドも、市場競争も財政も、絶えず分析とレビューを繰り返すことで正確に理解・把握していなくちゃならない。リスクを伴うような商品選びになるけど、そのリスクを負ったからこその成功もあると僕は信じてる。ストレスはあるけど、とにかくエキサイティングな仕事だよ。新進気鋭のデザイナーたちをサポートするのもうちの大きな仕事で、彼らの商品をうちが仕入れて、それが商業的にヒットすることが、大きな喜びと幸せをもたらしてくれる。
若い頃は、よく面白いショップに行っては、その商品を見て回っていた。でも、そこで扱われているブランドや商品が、誰かに選ばれているなんて全く考えなかった。それから少し後になって、このバイイングがファッション業界において最も重要な仕事だって気づいたんだ。そして、自分のショップを構えることになって初めて自分で買い付けをするようになった。バイヤーは、ブランドのメッセンジャーのようなもの。ショーで発表されたものを消費者に「これが着たい」と思わせているのはバイヤーなんだ。バイイング・ディレクターの多くは、まずどこか会社に所属するか、そういった会社をクライアントとしてバイヤーの経験を積むのが一般的だけど、僕はそうした経験なしに自分のショップを立ち上げてしまった。直感で始めて、経験は後からついてきた。もちろん、業界に在籍する素晴らしい友達に恵まれていたからこそ今の僕があるわけで、彼らからは多くを学んだ。スタイリストのアンナ・トレベリアン(Anna Trevelyan)は間違いなくそのひとり。ファッション業界最大のアイコンのひとり、ニック・ナイトは僕にとって真のインスピレーションを体現したひと。でもなんといっても、僕はショップで日々出会うお客様たちからインスピレーションを得てる。彼らこそが最大のインスピレーションだね。もともと、自分の周りにあるものすべてを疑ってかかる性分で、だからいつでも「この方向性でいいんだろうか」「ベストな商品を揃えられているだろうか」「他にすべきことはないだろうか」と考えている。Machine-Aがここまで成功できたことに感謝しているけど、今後はもっと進化したいし、もっと前進したい!

日々の仕事
ははは!通常の1日を言葉にするなら、こんな感じ。
ビジネスマネージャーのミア・ポアリエ(Mia Poirier)と、バイヤーのハリー・フィッシャー(Harry Fisher)とのミーティングで1日が始まる。発注や受注、出荷、新しいデザイナーやブランドとの打ち合わせなど、バイイングにおけるその日のタスクを、3人で確認するんだ。それから、ショップマネージャーのレイ・ナダール(Rei Nadal)と一緒に、どの商品のウケが良く、どれが売れていないか、どう改善すべきかといったことを話し合う。そうやって、商品の展示をタイミング良く変えていかないといけない。その後は、ブランドや代理店にフィードバックを伝えて、うちのソーシャルメディア・マネージャーのアキラ・モーガン(Akira Morgan)とスケジュールについて打ち合わせをする。その後は、eコマースのチームと前日の売り上げについて話し合い、指示を出して、出荷のスケジュールを確認する。その後は、うちのチームから受けた報告をビジネスパートナーたちと話し合う。昼が来たら、そこからは限定コラボ商品や限定コレクションの開発、その他のクリエイティブプロジェクトについてデザイナーやブランドとミーティングをするけど、その合間を縫って僕自身も店頭に立つようにしてる。お客様と実際に話をして、彼らがどんなものを好きで、何を求めているかを感覚的に把握するためにね。この店頭での時間が、僕にとって最も重要な時間。その後は、次の日についてミーティングで話し合う。
ファッションウィーク開催期間中はうってかわって、ショーをまわり、ショールームをまわり、発注をして回るめまぐるしい日々が続くよ。年間を通して、この時期が一番エキサイティングな時期だし、最も集中しなくちゃならない時期。この時期に起こることが、その後の6ヶ月を左右するからね。レポートから読み取る売れ筋情報に加えて、小売の現場やオンラインから読み取れるデータも分析をして、スケジュールを最終調整したら、実際にショーやショールームを回って商品のセレクションをする。そこで忘れてはならないのが直感と、自分の服の趣味。安全すぎるセレクションをして成功するなんてことは絶対にありえないからね。ありきたりで面白みにかけるセレクションの店なんて、絶対に成功しない。

「あれがあったから今の自分がある」と思う出来事
「このひとと出会っていなかったら今の自分はない」と言い切れるひとが3人いる。ひとりはニック・ナイト。まだ無名のMachine-Aと僕に「一緒にやろう」と言ってくれたんだからね。ニックが組んでくれたことで、他の人たちが僕たちのことを真剣に受け止めてくれるようになった。ニックにとっては勇気がいる決断だったに違いないのに!あれは本当にインスピレーショナルな出来事だったよ。もうひとり、頭が上がらないのがサラ・モーア。彼女が業界に持つ影響力が大きいのは誰もが知るところだし、彼女自身もそれだけの敬意が払われていることは知っている。サラが僕とMachine-Aにサポートの姿勢を示してくれてようやく「正しい方向性に進んでいるんだ」「今やっていることは間違っていない」と信じることができたんだ。そして3人目は、SLAM JAMのジョヴァンニ・デ・マルチ(Giovanni De Marchi)。彼は兄貴的な存在で、仕事で困って電話をするといつでも専門知識と経験をもって的確なアドバイスをくれる、偉大なビジネスマンなんだ。

大学には行くべきか、行かざるべきか
専攻がどんなものであれ、大学に通うということは、どんな仕事にも要求される規律の精神を養ってくれるものだと思う。少なくとも僕には、仕事で必要なツールやスキルに加えて、仕事の現場では決して学べない種類の強さや知識を与えてくれたと思ってる。
とはいえ仕事の現場で得られる経験は同じだけ、もしくはそれ以上に大切だよ!どんな環境でも対処できてきちんと機能できる自分を形成するうえで、絶対的に必要な学びのプロセスだと思う。この業界で仕事をしたいと思うひとは、気高く、努力をすること、どんな小さなことでもやるべきことはきちんとやることを忘れずに。学んだことはどれも、あとになって必ず、何度も使うことになる。自分に与えられた仕事環境に敬意を忘れず、自分にチャンスをくれた人たちに敬意と感謝の気持ちを持って接すること!この業界は案外小さいから、同じひとに何度も会うことになる。だから、誰にでも気持ちよく接すること。
僕がこれまでに学んだなかで最もためになったのは、なにより努力をするということかな。それと、誰にでも気持ちよく接すること。そして、少々のことではへこたれないこと。計画通りに物事が進まないときもあるけど、そんなときはそこから何を学ぶべきかを考える。それと、あまり自分に厳しくなりすぎないようにすること。がっかりするような経験がたくさんあったからこそ、今の自分があるんだ。どんなことが起こってもそれに対処できる強さは、過去の困難があったからこそ得られたもの。「夢は夢」なんて言うひとには耳を傾けないこと!

「あの時に知っていたら」と今思うこと
16歳のときに自分が思っていたほど、タバコを吸うのはクールなことじゃなかったってことかな。僕がいまとても大切にしているひとが「人生一度きり。正しく生きるだけで精一杯でしょう」って言っていて、すごく納得したんだ。

自分と同じ道を切り開いていきたいという若者たちへのアドバイス
同じ道をたどっちゃいけないよ!自分にしか切り開けない道を進まなきゃ!人生の一瞬一瞬を楽しんで、ひとには期待せず、でも欲しいものはすべて手にいれるつもりで生きる!そして素敵に生きて!

明日が楽しみ。なぜなら……
DELADAが今後、存在感あるブランドに成長しそうで楽しみだね!無限の可能性を秘めているような気がして、Machine-Aの今後も楽しみで仕方がない。そろそろリリースするプロジェクトもたくさん控えているしね。クリエイティブであることに限界なんてない。人と出会い、彼らとものづくりをするのに限界なんてないんだ。みんなで一緒にものをクリエイトするのが今という時代。自分が尊敬する人たちとこの気持ちを共有できるのは素晴らしいことだね。

Credits


Text Stavros Karelis
Images via Instagram
Translation Shinsuke Kuriyama at WORDSBERG Inc.

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