アメリカ白人社会がかかえる暗部を捉える20代の写真家

うわべだけの完璧さ、そしてそれにヒビが入る瞬間。20代の若き写真家イザベル・マクゴーワンが捉えるのはそんな瞬間に垣間見えるものだ。

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04 October 2016, 10:00am

イザベル・マクゴーワン(Isabel MacGowan)の写真のなかでも特に目を引く作品がある。パステルカラーのレオタードを着て髪に飾りをつけた白人の女の子3人が、芝生の上でそろって股割りをしてこちらを見つめている作品だ。真緑色の芝生には白いフェンスが張り巡らされている——アメリカの郊外を舞台にした映画で必ず目にするあの景色だ。

この写真はマクゴーワンによるシリーズ作品『Cygnets(白鳥のひな)』の1枚だ。彼女はこのシリーズの大半を、イェール大学のMFA美術修士号過程の最中に撮った。マンハッタン出身の元バレリーナであるマグゴーワン。この美しくもどこか不気味な写真を撮ったとき、彼女は『白鳥の湖』に登場する子供の白鳥たちのことを考えていたという。このシリーズには他にも、人形ビーニーベイビー(Beanie Babies)に囲まれて泣きじゃくる赤ちゃんや、娘のピンク色のドレスを仕立て直している母親を捉えた作品などがある。

マクゴーワンはまた、白鳥たち(そして小さな女の子たち)が持つダークな側面についても考えていたという。子供のころ、彼女が頻繁に訪れた祖母の家には「白鳥の家」と呼ばれた母屋(白鳥を象った塩コショウ瓶があった)と、「白鳥のひな」と呼ばれたゲストハウスがあった。ある時、友達と水遊びをしようと湖へ行くと、そこでマクゴーワンは大きな白鳥に襲われた。「白鳥ってとても怖い動物なのよ。邪悪なの」と彼女は思い出しながら語る。

絵画的な美しい風景に暗部が潜む——それがマクゴーワンの作品を彼女の作品たらしめている重要な要素のひとつだ。しかし、彼女が撮る若い女の子たちにはすべてが未知数のままだ。未来を切り開くのは、ほかでもない彼女たち自身なのだから。「彼女たちはこれから大人の女性になろうとしているところ。これから彼女たちが受け取るメッセージと、彼女たちがそれをどう考えていくかによって、彼女たちが根暗で冷酷な人間になるかどうかが決まるのよ」

社会から距離を置くことでアートを創造するエレガントな女性はこれまでもたくさんいた。ジュリア・マーガレット・キャメロンやイーディス・ウォートンなどはそうした女性の代表だ。ソフィア・コッポラもそのうちのひとりだろう。マクゴーワンが写真を撮り始めたのは3年半前。しかし彼女はすでに、自身がよく知る世界に疑問を持ち、それを写真で捉えるという手法を自分のものにしている。彼女の作品に登場する被写体のほとんど——両親、いとこ、親友たち——は彼女が直接的に知るひとびとだ。「"外見は大切。ひとはまず外見で判断するんだから"と言われて育ったし、私もそう信じて育ったの。"他の女の子たちみたいな格好をしなくてもいい。だってこれが私なんだもの"とは考えなかった。上流・中産階級的な考えで、気持ち悪いでしょう。うぬぼれや物質主義、情熱といった、私の育った環境から形成されているに違いない事柄——それが私の追求するテーマなの」

Video Still, Isabel MacGowan

そして、リリー・ピュリッツァー(Lilly Pulitzer)が描く花の絵のような理想の世界が崩れたとき、一体何が起こるのだろうか?「一般的な意味での"期待"という概念に興味があるの。具体的にいえば、"期待には答えられないと悟ったときに何が起きるか"。ようは脱落よね」と彼女は説明する。「教えられた通りに生きるのはイヤという、それは一体どういうことなのか」

彼女が持つ"期待からの脱落"への関心は、自身の経験に端を発している。絵に描いたようなバレエのキャリアが崩れ去り(そこに腰の手術が繰り返され、自分探しの時が続き)、そこで彼女は「自分とは一体何なのか?」という疑問と直面した。「バレエを辞めたとき、ものすごい葛藤を感じたわ。わたしは決して何かを突き詰めて勉強してきたわけでもないし、アーティストでもない。才能も、自分を表現する方法も持たない、ただのエキセントリックな人間みたいに感じたわ」。そこで彼女が始めたのが写真だった。

そして映像も。彼女が撮った映画『ケーキ・レディ(Cake Lady)』は、頭のおかしい女性がおとぎの国のキッチンで繰り広げるクレイジー版『ヘンゼルとグレーテル』といった世界観の作品だ。「私はトリックとセットに興味があるの」と彼女は言う。「1ヶ月半で『くるみ割り人形』を24回もやってた頃のことをよく考えるのよ。いつもセットにいて、ステージではニセモノのお菓子やケーキを食べる演技をする。本当に美味しそうに見えてくるんだけれど、それは作り物だから実際には食べられない」。その後彼女が制作した映像作品にはマクゴーワン本人が登場しているものもあるが、衣装とセットも手伝って、ティナ・バーニーの写真作品を悪夢的に作り変えたような世界観を作り出している。

マクゴーワンは生活のため、ポートレイトを撮る仕事もしている。撮影では、子供を自分の思い通りにさせようとする母親の姿を頻繁に目撃するという。「一見、お母さんが子供の体を優しく撫でているように見えるんだけど違うの。あれは、子供をコントロールしようとする巧妙な手段なのよ。そういったふたつの相反するものが同時に起こっているのがリアルな瞬間なんだと思う。私は自分の作品を単なるきれいな写真にはしたくない。見るひとに共鳴して、見るひとがなぜだかわからないけど心動かされるようなものが作りたいのよ」

isabelmagowan.com

Credits


Text Rory Satran
Photography courtesy Isabel MacGowan
Translation Shinsuke Kuriyama at WORDSBERG Inc.

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