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掲載禁止に追い込まれたトレンスジェンダーの写真

ドイツ企業がこの写真を“性差別的”として掲載を拒否。それに対して、張本人のカルシスは「人々の中に根付くトランスフォビアが問題」と話す。

by Hannah Ongley
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23 May 2016, 1:54am

heathercassils.com

カナダ出身のアーティストでありボディビルダーのカシルス(Cassils)は、簡単にはカテゴライズすることができないパワフルな体格の持ち主だ。カシルスが今回、写真家のロビン・ブラック(Robin Black)とコラボレートした作品「Advertisement: Hommage to Benglis」は、リンダ・ベングリス(Lynda Benglis)が1974年に発表してアート界に議論を巻き起こした作品「Advertisement」へのオマージュになっている。トランスジェンダーや、心と身体の一致しない人々に対する、未だ変わらない不当な扱いを直に訴える作品だ。だからこそ、この作品がドイツ全域で展示禁止となった今回の動き、そして、LGBT(性的マイノリティ)のアートショー広告が禁止されたという現実は、悲しいの一言に尽きる。「ARTnews」によると、ドイツ鉄道ドイチェ・バーン社が、カシルスのヌードが写るポスターを"性差別的"、"性的特徴の誇張"、"ポルノ的"として、管轄内である国内外線すべての駅での掲載を拒否すると発表したのだ。「ホモフォビア(同性愛嫌悪)だ」との抗議を受けたドイツ鉄道は、その後この掲載禁止を取りやめた。しかし、カシルスは次のように話している。「本当の問題はトランスジェンダーに対する嫌悪、トランスフォビアです」と。

カシルスによる『Homosexuality_ies』は、マルチメディアを用いて同性愛とクィアアイデンティティの歴史150年を探る展覧会だ。「同性愛というセクシュアリティと、生まれ持った身体と心でジェンダーが一致しない人々が、これまでいかに犯罪として規制され、病気として扱われ、社会からは排除されてきたか」−−それを世間に広く知ってもらうことを目的としている、と去年この展覧会を開催したドイツ博物館は書いている。『Homosexuality_ies』はこれまでにも、ベルリン市内で2回開催されているが、広告ポスターが批判の対象となることはなかった。このポスターが大きな議論を巻き起こしたのは、この展覧会がミュンスター市のヴェストファーレン州立芸術文化史博物館に巡回した時のことだった。

同展のオーガナイザーのひとつであるゲイ博物館(Schwules Museum)は、メディアに向けて声明を発表し、ドイツ鉄道のトランスフォビアについて抗議をした。「我々は、ドイツ鉄道による主張と広告掲載禁止令を、不適切にして間違った行動だと考えます」と彼らは主張する。「ヘテロセクシュアル(異性愛)のヌードであれば、問題なく広告に使用してきたこれまでの経緯を考えると、今回のドイツ鉄道の動きは実に興味深いと言わざるをえません。ジェンダーの概念を問う内容となると途端に"検閲"がなされ、公共の場で陳列するには不適切だと判断されるのです」

米ノースカロライナ州では、LGBTの人々による公衆トイレ利用法について取り締まる法案が検討され、これがアメリカ全土で大きな議論を巻き起こしていた。カシルスは、これにも同様の問題が見られると主張している。「カシルスの裸に嫌悪感を示すということは、より広い意味でのトランスフォビアを示すことに他ならず、それは結果的にトランスジェンダーや、心と身体の一致しないジェンダーを、公共スペースから排除することに繋がるのです」と自身のウェブサイトで訴えている。「トランスジェンダーの存在が様々なジャンルで脅威となるほどに活躍を見せている一方で、心と体のジェンダーが一致しない人々、とりわけ有色人種は、身の危険すら感じながら生活している状況があります。カシルスが発表したようなアート作品は、トランスフォビアと闘う運動の一部として絶対的に必要なものであり、今回起こった掲載禁止の動きは、このような作品の必要性を浮き彫りにしているのです」

カシルスは、すでに広告掲載場所を移してしまった今、ドイツ鉄道による掲載禁止令の取り下げは無意味だとも綴り、人々にこの広告写真をダウンロードして、ドイツ鉄道の駅に設置されている"性差別的"で"異性愛者のみ正常"とする広告の上に貼るよう呼びかけている。

Credits


Text Hannah Ongley
Image via Facebook
Translation Shinsuke Kuriyama at WORDSBERG Inc.