Photography Marion Leflour

「ポストカードのような風景を舞台にしたかった」Jacquemus 2020SS

サイモン・ポート・ジャックムスはブランド10周年を祝い、南仏の太陽降り注ぐラベンダー畑で歴史に残るショーを披露した。

by Steve Salter; translated by Ai Nakayama
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04 July 2019, 8:12am

Photography Marion Leflour

南仏プロヴァンス出身のサイモン・ポート・ジャックムスは、ブランドの10周年を祝い、2020年春夏コレクションのショー会場に同地のヴァランソル高原を選んだ。「詩的なショーにしたかったんです」と彼はショーのあと、夕暮れの光が降り注ぐなか、なだらかに広がるラベンダー畑で語った。

このラベンダー畑はインスタ映えスポットとして有名だ。満開のラベンダーがみられるのはたった1カ月間。SNSに公開する写真を撮るためにインフルエンサーや恋人たちが集まる。あまりにもインフルエンサーが殺到するからだろう、道路にはドライバーに注意を促す〈インフルエンサーに注意〉の看板が立てられている。

Jacquemusにとっては初めての男女合同ショーとなった今回、サイモンと彼のチームは熱波による猛暑のなかショッキングピンクのランウェイを設営し、様々な色が咲き乱れる、歓びに満ちたコレクションを発表した。「ポストカードのような風景を舞台にしたかったんです。ちょっとできすぎてる、というくらいの風景がよくて」とサイモンは笑い、片目をつぶる。

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「僕が重要だと考えているのは、紋切り型をアーティスティックなものに昇華させること。ラベンダー畑の真ん中に走るピンクのランウェイは、まるでクリストのインスタレーション、あるいはデヴィッド・ホックニーの絵画を思わせます」

〈#outofoffice(バカンス中)〉というハッシュタグが付けられたInstagramの投稿のような完璧な景色は、長いファッションウィーク期間の美しい小休止となり、また、サイモンがよく知る南仏、彼のインスピレーション源であり続ける南仏を、私たちにも体験させてくれるショーだった。

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「みんなに無理だ、といわれたけど、他に選択肢がなかったんです」とサイモンは、彼の白昼夢を現実に立ちのぼらせたかのような景色に驚嘆する私たちに語った。「Jacquemusでは、論理的ではないことを実現しなきゃいけないんです。物事を大きく考えないと何も達成できません。自分と他人を比較したり、ルールに従って動いていたらうまくいきません」

独学で服づくりを習得し、母の急逝後すぐにJacquemusを立ち上げたサイモン。以来、彼が前進する力となってきたのは、既存の基準を打ち壊すその姿勢だった。最初の頃は、Diorのショーの会場前でゲリラ的にプレゼンテーションを行なっていた彼だが、2015年にはLVMHプライズの審査員特別賞を受賞。今や世界中、計230店舗と取引を行い、パリでもっとも話題の、そしてもっとも成功したデザイナーとしてその名を轟かせている。

3度目の南仏でのショーとなる今回は、まさに故郷への最高の凱旋だ。屋外のランウェイは印象派の絵画のように美しく、彼の追求する美学を表現していた。

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「ただ衣服をつくるんじゃない。まずは物語を書き、それから服に落とし込むんです」とi-Dによる2014年のインタビューで彼は語った。サイモンの服づくりは、彼の人生や愛する者たちへの楽しく、自由で、官能的な歓びに溢れている。一般的なファッションショーよりもゆったりとした雰囲気で、少数の幸運なファッション業界人たちがブランドの仲間や友人たちに加わった。

会場には明らかに、ポストカードのような景色以上の何かがあった。自然が私たちを癒し、心を落ち着かせるラベンダーの香りが私たちの五感を高める。波打つように一面に広がるラベンダー畑。紫色の花と麦が混ざり合い、つぼみからつぼみへと虫が跳びはねる。その景色を照らすプロヴァンスの太陽。それこそがサイモンの眼に映るフランスであり、彼はそれを服で語る。その服の根底には田舎の純朴さがありながら、比類なきパリの影響がより豊かな表現を実現していた。

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コレクション全体に漂っていたのは、プロヴァンス的なポップネス。柄やカラーパレットからは、ホックニー、セザンヌ、ジャン・リュルサなどの作品が想起された。大胆で鮮やかな色づかいと、温かみを感じさせるパステル、そして日焼けして褪せたような色が混在している。

女性モデルはXLサイズのメンズのシャツとシアースカートを、男性モデルは花柄のシアーなウインドブレーカーとショートの作業着パンツを合わせている。砂時計のようなコルセットが施されたドレスとシャツはすらっとしたシルエットを描き、テーラードジャケットとスーツは風になびくようなカットだ。身体の線に沿ったレザーエプロンも、ベストと融合したようなジャケットも、ポプリンのアウターウェアも、全てのルックがシンプルで、着心地が良さそうだ。

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色あせたギンガムチェック、トロンプルイユのシャツストライプ、サイモンの祖父母からインスパイアされた、遊び心のあるデザインのアーティチョーク、野花やラベンダーの小枝、市場に並ぶ野菜。全ての柄がプリント、刺繍、レーザーで生地に描かれており、今回はサイモン史上もっともグラフィック要素の強いコレクションといえるだろう。アート要素の強かった彼の初期コレクションに漂っていた素朴な雰囲気を思い出すと同時に、彼の成長もはっきりみてとれる。

今コレクションの遊び心は、ビスケット缶を模したウィメンズのバッグ、絵が描かれたキャンバスバック、ラベンダーのサシェを模したバッグ、道具箱のようなバッグをはじめとするアクセサリーにも表れていた。男性モデルはキャンバス地の、もしくはスパンコールに覆われた収穫用袋や、日常づかいのために再解釈されたカゴバッグを持っていた。

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また今回は、Swarovskiとのスペシャルなコラボレーションが実現。38万5000個のラインストーンが使用され、クリスタルメッシュのポロシャツ、クリスタルパッチワークのドレス、ウィメンズのヒールに流れるように輝くクリスタルディテールとしてブランドの10周年を祝う。「Swarovskiのすばらしいクリスタルが、空想のキャラクターたちのイメージを強化してくれています。文脈的にはかけ離れた洗練さがある」とサイモン。「このショーにおいて、クリスタルの輝きは、みんながJacquemusのショーに期待する決まりごとから自由になるための出発点でした。でも同時に、ブランドの核にある職人魂とも呼応しているんです」

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「今回のコレクションのテーマは、プロヴァンスではなく、ブランドとしての決まりごとなんです。プロヴァンス以外の、他の場所についても言及しています。私のインスピレーション源となってくれた、プロヴァンス出身ではない女性たち、着飾りすぎる女性たち、そしてプリントばかり着る男性たち。それでも彼らはクールな装いをしているようにみえる。そんなひとたちのためのコレクションです」。それこそが、純度100%の飾らないJacquemusなのだろう。酷暑のなかで、幻想は現実になった。

10周年おめでとう、Jacquemus。そしてインスタ映えするショーをありがとう。このパーティは、みんなの記憶に残るだろう。

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Credits

Photography Marion Leflour and courtesy of Swarovski.

This article originally appeared on i-D UK.

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