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「『ゲット・アウト』はコメディではなく、ドキュメンタリー」 ジョーダン・ピール監督が抗議

ユニバーサル・スタジオはこの大ヒット作をゴールデン・グローブ賞の「ベスト・コメディ」部門の候補として申請した。

by André-Naquian Wheeler; translated by Atsuko Nishiyama
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20 November 2017, 7:50am

Screenshot via YouTube

This article was originally published by i-D US.

ジョーダン・ピール監督の『ゲット・アウト』は、今年公開された映画の中で紛れもなく最強の一本であり、ジャンルの枠組みにとらわれない作品である。『シャイニング』や『ジョーズ』『招かれざる客』など、さまざまな古典的名作の要素を引きながら、人種差別や異人種間の恋愛、黒人への暴力などの問題への示唆に富む内容だ。ところが映画賞シーズンを前にして、ユニバーサルは『ゲット・アウト』を驚くべきカテゴリーに含めることを決定した。同スタジオはこの大ヒット作をゴールデン・グローブ賞の「ベスト・コメディ」部門の候補として申請したのだ。より権威があり競争率も高い「ベスト・ドラマ」部門ではなく。ファンはこの決定に納得していない。

「『ゲット・アウト』を観て、これは笑える、と思うことこそ白人の特権」とファンの一人はツイートする。「『ゲット・アウト』がコメディ作品としてノミネートされたこと自体が、白人が人種差別をどう考えているかをそのまま表している」と別のファンの意見。「彼らにとっては有色人種が「ゲット・オーバー(乗り越える)」しなくてはいけないことなど、ただのジョークに過ぎない。私たちにとって人種差別は止まらず流れ続ける滝のようなものだというのに」

「白人文化が『ゲット・アウト』を処理する唯一の方法は、軽くとらえて冗談として受け流すことだ、これでわかった。賞を獲るのがコメディ部門以外なら、映画に描かれた内容が正確だと認め、批判を自己に向けざるをえないから」

「『ゲット・アウト』はコメディじゃない。スタジオが、映画の背後にあるメッセージを押し出すことより賞を獲ることを優先したのが問題。コメディとレッテルを貼るのは危険だ。実際にレイシストがこの映画を観て、何かを学ぶ代わりにメッセージを一笑に付すことを承認するようなものじゃないか」

ジョーダン・ピール監督本人までが、ユニバーサルの決定には反対している。昨晩ツイッターに現れた彼は、『ゲット・アウト』はコメディでも風刺的なホラーでもない、と述べた。「『ゲット・アウト』はドキュメンタリーだ」と書き、主人公クリスが経験することは痛ましくもフィクションより真実に近いと指摘した。

ゴールデン・グローブ賞の〈ベスト・コメディ&ミュージカル〉部門はそもそも、やや曖昧で、わかりにくいところがある。例えば2016年、この部門の受賞作はマット・デイモン監督のSFドラマ『オデッセイ』だった。これまでの受賞作は他に『ハングオーバー! 消えた花ムコと史上最悪の二日酔い』『グランド・ブタペスト・ホテル』そして『ラ・ラ・ランド』など。確かに『ゲット・アウト』に笑える要素はあるものの、それらはほぼ、アメリカ合衆国の人種問題がまるで不条理ドラマのような状態にあることへの居心地の悪い反応という形で現れている。

ユニバーサルによるカテゴリー分けは、ゴールデン・グローブを受賞するための単なる戦略的采配だという議論もある。ホラー映画が最優秀賞に選ばれることは稀だと「インデペンデント」紙は記している。その上、今年の競争は熾烈だ。『Call Me By Your Name』や『ダンケルク』、『The Post』(これらの作品は『ゲット・アウト』と異なり、初めからオスカーやゴールデン・グローブ候補と噂されてきた)などが最有力候補と言われている。

本当に問題なのは、今年最も評判の高い作品に数えられる『ゲット・アウト』でさえ、未だに従来的な意味で賞レース向きとされる他の作品とは競合しえないと考えられていることだ。ブラック・フィルムが業界の認知を得るには、ある特定の美学や系統、あるいは人種差別の描き方を含んでいなければいけないのだろうか。もしハリウッドがこれからも多様性を進めていきたいのであれば、有色人種の映画もみな平等に受賞に値するという視点は不可欠だろう。

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