BALENCIAGA2020春夏キャンペーンは終末世界のニュース番組
ライブストリーミング映像を通して、バレンシアガの政治に対する姿勢は新たな局面を迎えた。

世界の政情が困難を極める今、私たちの時事問題の認識をかたちづくる情報は、今まで以上に厳しい目に晒されている。従来の大手メディアはかつての信用を失い、ニュースの消費者たちは各々の確立した思想に直接的に訴求する、党派性の強いプラットフォームをあてにするようになりつつある。

そんなメディア業界に、つい最近意外なプレイヤーが参戦した。それがBALENCIAGAだ。ここ数ヶ月で、自らの可能性を押し広げ続けている同ブランドは、今年1月、52年ぶりにジョルジュサンク通りの伝説的なアトリエにてオートクチュールを再開すると発表。また、2020年春夏コレクションのイメージとして、クリエイティブディレクターのデムナ・ヴァザリアは、政治キャンペーンを専門とする写真家のローレンス・シャペロンとタッグを組み、選挙ポスター風のスタイルでモデルたちを撮影した。
〈Love Is For Everyone(愛はみんなのために)〉などのあえて陳腐なスローガンや、メゾンのスローガンでもある〈The Power of Dreams(夢の力)〉といったメッセージが重ねられたこれらのポスターは、私たちが嫌というほど目にしている曖昧な〈公約〉を伝えている。
意欲的な挑戦を続けるBALENCIAGAは今回、報道の世界にも足を踏み入れた。Twitterの公式アカウントでは、まるで不祥事を起こした政治家が心機一転を図るかのように、過去のツイートがすべて削除され、BALENCIAGAの報道室からの〈ライブストリーム〉映像が繰り返し流された。

映像中では、ディープフェイクで合成されたようなキャスターたちが、本コレクションのEU職員風のスーツ、ボディガードのようなアウター、エレガントで風変わりなドレスに身を包み、不気味で漠然としたニュースを最前線から生放送で伝えている。
ヘッドラインには「水はどこへ?」「渋滞解消!」「惑星直列──サングラスの着用を」などの文字が並ぶ。
これらのニュース速報の影響はまだわからないが、報道プラットフォームを選ぶさい、信ぴょう性よりも個人的な美学や意見に合うかどうかが重視されている時代において、BALENCIAGAのイブニングニュースは、私たちが注目すべき唯一のニュース番組といえるだろう。
This article originally appeared on i-D UK.
- Tagged:
- Balenciaga
- ss20