フェティシズムと花を融合するブラジル人写真家

極右のジャイル・ボルソナロ政権の発足により、ブラジルに暮らすLGBT+たちは歴史上最もその存在を脅かされている。そうした中、ボンデージを題材に詩情あふれる作品を撮っている写真家がいる。ファビオ・ダモッタその人にインタビューを行なった。

by Luke Smith; translated by Nozomi Otaki
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09 March 2020, 5:52am

クィアであることはヘテロノーマティビティに対するアンチテーゼであり、BDSMは型にはまったセクシュアリティの転覆だ。では、すでに〈転覆〉されているものをさらに覆すことは可能なのだろうか。

その質問に答えたのが、アーティストのファビオ・ダモッタだ。BDSMは過激にも詩的にもなり得ると信じる彼は、BDSMに柔らかさを加えて、私たちのフェティシズムの認識を押し広げる。

さらに彼は、ボンデージの目的は相手を服従させることだけだという考えを根底からひっくり返し、抑圧されたクィアの身体に光を当てることで、BDSMは自由をもたらすこともできる、と証明した。

ブラジル南部に生まれたファビオは、19歳でグラフィックデザインと写真を学ぶためにサンパウロに引っ越す。大学卒業後は、有名なブラジル人ファッションジャーナリスト/ブラジル版『L’Officiel』元編集長のエリカ・パロミノのもとで働いた。ファビオは彼女を親しみを込めて「もっともホットなファッションエディター」と呼ぶ。

「毎晩のように、ファッションウィークや楽しいパーティなど、素晴らしいサンパウロのカルチャーイベントに出かけていました」とファビオ。「アンダーグラウンドシーンのおかげで、僕は自分のことを理解できたんです」

Fabio Da Motta photography

しかし2004年以降、ファビオは自らの作品づくりを追求するようになる。シンプルながら複雑にみえる結び方を用いる日本のボンデージ〈縛り〉を取り入れることで、フェティッシュの神秘性をひも解こうとするファビオの写真は、詩的な美しさを湛えながらも強烈な印象を残す。

彼がBDSMを知ったきっかけは、恋愛で何度も〈ご主人様〉としての役割を経験してきたことだという。それをひとつの芸術形態として用いるというアイデアは、クィア雑誌で働いていたときに生まれたそうだ。

「フェティッシュなフォトシュートをしたいと思っていて。僕たちは緊縛師を雇ったんですが、彼の美しい作品に魅了されました。クリーンな結び目やさまざまな縛りの形をつくりだすアートに恋に落ちたんです」

ファビオの作品はBDSMのイメージを覆し、より広範な解釈を探るという点で、アートであるだけでなく政治的な行為でもある。

「僕は世間が考えるボンデージの可能性にひねりを加え、ありふれた色使いとは距離を置きたい」と彼は明言する。「もっと別のアプローチを試したい。僕のアートはそこにある」

彼は縛り上げられた裸体に柔らかな色合いや花を組み合わせることでそれを実現し、BDSMは単にエロティックなだけでなくエレガントにもなり得ることを提示している。

Fabio Da Motta photography

BDSMのイメージを覆すだけでなく、ファビオはクィアの身体を解放したいと考えている。裸のクィアのモデルを起用することで、彼は「ブラジル社会の基盤となっている伝統的なカトリック思想に逆らっている」という。

彼の作品は「現政権が陰に隠そうとしている問題を明るみに出し」、「今のブラジルでゲイのアーティストとして生きること自体が反逆行為である」ことを明示している。

2019年は特に、彼の活動の挑戦的な意味合いが強まった。ホモフォビアを公言する極右のジャイル・ボルソナロ政権下で、多くのブラジルのLGBT+コミュニティは、国からの支援をほとんど得られず不安を感じていた。

国によるクィア番組への投資の取りやめ、ゲイツーリズムへの妨害、ホモフォビアを犯罪化した最高裁判所の決定への批判など、ボルソナロ政権はブラジルのLGBT+の人権運動における進歩を逆行させた。

Fabio Da Motta photography

現政権の〈ドミノ効果〉は国中のいたる所で散見され、ファビオもさまざまなボンデージショーを回っているあいだにあることに気づいたという。

「ブラジルの他の地域では、セクシュアリティを隠しているひとがまだ多い。今の政権のせいで、ブラジルでのクィアとしての生活はより大変で、危険になっているんです。残念ながら、僕が覚えている限りでは、ブラジルの同性愛者は1985年の軍事独裁政権の崩壊以来、最悪の時代を迎えています」

ファビオは現在、3冊目となる自費出版のアートブック『BRA ZINE』の制作に取り組んでいる。彼が国中を回り、InstagramやGrindrを通して知り合ったひとびとと行なったボンデージセッションを収めた作品だ。また、ヨーロッパでボンデージパフォーマンスのツアー中のアーティストを追った短編ドキュメンタリー『Motta』も制作中だ。

「作品は自分を思ってもみなかった場所に運んでくれる。僕はその場の流れに身を任せるのが好きなんです。前もそうやってうまくいったので。細かい計画を立てるよりも、成り行きに任せることにしています」と彼は最後に述べた。

「これからも行ったことのない国でボンデージを見て回り、それをテーマに本をつくりたいです…Instagramに違反報告されない限りは」

Fabio Da Motta photography

Credits


All images courtesy Fabio DaMotta

This article originally appeared on i-D UK.

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