現代に蘇るルネッサンス:Telfar 2020秋冬

ピッティ・ウォモで行われたショーで、テルファー・クレメンスはフィレンツェのファッション史を独自の視点で表現した。

by Osman Ahmed; translated by Nozomi Otaki
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22 January 2020, 10:19am

テルファー・クレメンスの今シーズンの舞台は、イタリア・フィレンツェ。人よりもルネッサンス絵画のほうが多いような、歴史の長いこの街で、彼が中世の美しいフィレンツェをインスピレーション源に選んだのは当然だろう。ニューヨークを拠点とするテルファーは、この街に4ヶ月滞在し、2020年秋冬コレクションのデザインと、ピッティ・ウォモのゲストデザイナーとしてショーの準備を進めてきた。彼が目を向けたのは、街ゆくひとびとや絵画のなかの服装だ。

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「もしあの銅像がスウェットシャツを着ていたら?」とテルファーは自らに問いかけた。そして彼は、今と昔の装いに共通点を見出した。

たとえば、フィレンツェの伝統的なファッション〈スプレッツァトゥーラ(イタリア男性の計算されていながら無造作な着こなし)〉や、イタリア人が愛してやまないダウンジャケットは、中世のダンディな男性や、彼らの光沢のある丸みを帯びた甲冑にたとえられる。

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「それを直接的に表現したくはなかったので、既存のデザインを使って、ボリュームをもたせるための新たなテクニックを生み出すことにしました」とテルファーは説明する。

彼はデニム、大学生のようなベロアのトラックスーツ、カウボーイスタイルを通して、アイテムのサイズのバランスについて再考した。マイアミビーチでよく目にするような編み上げTシャツは、コルセット風のダブレット(※15~17世紀のヨーロッパで用いられた腰丈の短い男性用上着)のような身体に密着するデザインに。厚手のイタリアンケーブルニットにはドレープがあしらわれ、ダウンはコートやパンツのパーツに変身した。

「自分にとっての安全地帯から出ようとしたわけでもないし、ただフリルばかりつくっていたわけでもありません」と彼は述べる。「これが僕が着たいもの。手に入れたいけれど、売ってないので買えないものです」

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会場には、中央のチェリスト、サックス奏者、ドラマーを囲むように、円形テーブル兼ランウェイが設置されていて、服だけでなくショー自体も、中世の盛大な晩餐会を現代風にアレンジしたような雰囲気が漂っていた。

キャリー・スタックス(Carrie Stacks)やハワ(Hawa)がパフォーマンスをするなか、ソランジュ、グレース・ウェールズ・ボナー、ジュリアーナ・ハックステーブルをはじめとするゲストたちは、Telfarのロゴが型押しされた厚底のカウボーイブーツを踏み鳴らす、型破りなモデルたちを見つめ、歓声を上げた。

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さらに注目すべきは、〈ブッシュウィックのバーキン〉として有名になった、フェイクレザーのショッピングバッグだ。価格の抑えられたこの〈イットバッグ〉は、この時代のクィアや有色人種のインクルーシビティとコミュニティを象徴するとともに、急成長を続けるTelfarにとって不可欠なアイテムのひとつでもある。

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テルファー自身は、デザイナーとしての成功よりもコミュニティを重視している。フィレンツェにいる彼は、まるで現代に生まれ変わったメディチ家のように、アーティストやクリエイターを集め、作品をつくるためのプラットフォームを与えた。ショー開催前夜には、彼は親しい友人とコラボレーターをバロック様式の会場での晩餐会に招待した。

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その晩餐会にはファッションメディアも呼ばれなければ、正式な招待状もなかった。そこに集ったのは、テルファーのように、大手企業によるメインストリームの商業的なファッション/アートとは離れた場所で活動し、お互いに共通点を見出したひとびとのコミュニティだ。

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このショーに品格を添えたものがあるとすれば、それはテーブルについたゲストの多様性、そして彼らを囲む真っ白なフレスコ画と絵画だけだ。

しかし、テルファーが何よりも強調したコミュ二ティの大切さこそが、彼にとっての〈品格〉なのだ。2017年にCFDA/VOGUE ファッション・ファンド・アワードでグランプリに輝き、賞金40万ドル(約4400万円)を手にして以来、彼は瞬く間にスターの座に上り詰めた。

とはいえ、彼は19歳のときから10年以上にわたって作品を創り続けてきた。メインストリームのファッションは、いまだに2015年にバーガーチェーン店で行なわれたTelferのアフターパーティにすら及ばない。昨シーズンのパリのショーをみても、今シーズンのフィレンツェのショーをみても、彼が世界的なスーパースターへの道を歩んでいるのは明らかだ。それでも、彼が自分自身や、活動当初から自分を支えてくれたひとびとを第一に考えていることは素晴らしい。

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Credits


All images courtesy Telfar

This article originally appeared on i-D UK.

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