Photography Mario Sorrenti

「よくTシャツを売ってるようなカーヴィーな体型の女の子にはなりたくなかった」デヴィン・ガルシア interview

21歳のモデルが、業界の先駆者で親友のパロマ・エルセッサーにマイアミでの生活、SNS、初のi-Dの表紙について語る。

by Paloma Elsesser; translated by Nozomi Otaki
|
27 December 2021, 1:09am

Photography Mario Sorrenti

この記事はi-D Out Of The Blue issue, no. 366, Winter 2021に掲載されたものです。注文はこちら

デヴィン・ガルシアは、今まさにスターダムを駆け上がっている。マイアミ生まれで現在21歳のキューバ系の彼女は、世界各地でファッションウィークが再開するなかでブレイクを果たした。ニューヨークからパリまで世界中のキャットウォークを飾り、Chloéのショーでセーヌ川左岸を歩き、最後はAZ Factoryが故アルベール・エルバスに捧げたトリュビュートコレクションで今シーズンを締めくくった。

モデルを始めてたったの2年(しかも最初の1年はコロナのせいで仕事は少なかった)にもかかわらず、彼女はすでにVictoria’s Secretのお気に入りで、Jaquemusのショーに出演し、さらに初のi-Dの表紙を飾ることとなった。

パンデミック後の生活を象徴する数少ないニューフェイスのひとりとして、デヴィンは、昨年友人になったというプレシャス・リーやパロマ・エルセッサーといった歴代i-Dカバーモデルたちに感化され、彼女たちが切り拓いてきた道を辿りながら、今という時代を定義づけている。

プレシャスとパロマは、ファッションの可能性を押し広げた世代のモデルたちだ。DJの父親とモデルの母親のもと、マイアミのビーチでサーフィンをしながら育ったデヴィンも自然とスポットライトを浴び、ファッションの世界に生まれた新しい自由なムードを体現する存在となった。

マイアミからニューヨークへの引っ越しの準備を進めながら、ホテルの部屋でくつろいでいる彼女に、友人でメンターのパロマが身体、美しさ、ファッション、家族について話を聞いた。

Close up of Devyn's face.
Devyn wears Elsa Peretti® Diamonds by the Yard® earrings TIFFANY & CO.

パロマ:ダーリン!

デヴィン:ハイ。

パロマ:おはよう。私の声聞こえてる?

デヴィン:うん!

パロマ:オーケー、録音できてる。機械は苦手で。今はどこにいるの?

デヴィン:トライベッカのホテルだよ。

パロマ:調子はどう? ニューヨークは楽しんでる?

デヴィン:ニューヨークがどんどん好きになる。今朝外を歩いたらすごく寒かったけど! 全然ニューヨークの冬の準備をしないで来ちゃって。

パロマ:そのうち慣れるよ。今回のインタビュー、ほんとに楽しみにしてたの! あなたの初めてのインタビューができてすごく光栄。この1年、一緒に仕事するなかで仲良くなれたこともね。まずはあなたの話、バックグラウンドやどんな体験をしてきたのかというところから始めましょう。出身は?

デヴィン:生まれも育ちもフロリダのマイアミビーチ。私はビーチで育ったようなものなの。両親はふたりともサーファーで、父はDJで母はモデルだった。ふたりはマイアミのナイトライフで出会って、私は子どもの頃はずっとビーチで過ごした。今はニューヨークに本格的に引っ越す準備を進めてる。

パロマ:マイアミはまさに人種のるつぼだけど、この街からどんな影響を受けた?

デヴィン:確かにマイアミは人種のるつぼで、大都市だよね。テネシーやタンパ、タラハシーで育った友だちとはまったく違う体験をしてきた。

パロマ:お母さんがモデルをしていたのは、あなたが赤ちゃんのとき? それはいつ頃の話?

デヴィン:母は1990年代にモデルを始めた。フォード・スーパーモデル・コンテストって覚えてる? 1992年頃の話。母はそれに出場して、フォードと契約して、2006年頃まで仕事をしてた。引退したとき、母はほんとはこの仕事はあまり好きじゃなかった、自分には向いてなかった、って私に打ち明けたの。それから医療分野で働き始めて、モデルの仕事は全部すっぱり辞めた。私が子どもの頃は、母はあまりモデルのことは話したがらなかった。私が覚えてるのは、母がクローゼットの箱に隠していた雑誌で彼女を見たり、ときどきポートフォリオを見たりしたことだけ。

デヴィン:私がモデルになろうと考えるようになったのは、マイアミを出てからだった。母がやっていたんだから、私にもできるかも、と思ったの。それから事務所に写真を送って、何ヶ月かニューヨークに滞在して、契約した。そのあとはコロナのせいでしばらく仕事がなかったけど。

パロマ:今までファッションの世界では目にすることのなかった身体でこの世界に身を置くというのは、大変なことだと思う。思い切って決断しないと。特にボディポジティビティや多様性なんかについて話すときはね。私はあるひとにモデルをやるべきだって勧められた。それまでは考えたこともなかった。だから初めて自分をさらけ出したときは不安だった。あなたはどうだった?

デヴィン:私がモデルを始める頃には、もうあなたみたいな女の子たちを見かけるようになっていた。あなたたちがいたから、私には無理だって感じたことは一度もなかった。でも、パリ・ファッションウィークでChloeのモデルをするなんて想像もしてなかった。何かのコマーシャルに出て終わりだと思っていたから。世界はだんだん変化しているのかもね。

「パリ最終日、最後のショーのあとにエッフェル塔に行って、全部受け入れることができた。この1ヶ月、このシーズンは本当にすばらしい時間だった、って」

パロマ:私が仕事を始めたときは、そういう意味では自分はまったくコマーシャル向きだとは思ってなかった。でも、この業界で経験を積むなかで、何もかもが自分が予想どおりになるわけじゃないってことに気づいた。私が始めたときは、私がすぐに馴染める場所はどこにもなかったから、今は自分が前例になり、「私にだってできる」と勇気を与えられていると知ってすごく励まされた。あなたが仕事を始めたときは、ファッションにどんなイメージを持っていた? それはどう変化した?

デヴィン:正直に言うと、よく知らなかったの! 私はモールによくいる普通のティーンの女の子だった。最初はECサイトとか、クリエイティブとはいえない案件ばかりだった。でも、最近はハイブランドの仕事や、フォトグラファーとクリエイティブな仕事をするようになって、やっとしっくりくるようになった。よくTシャツを売ってるようなカーヴィーな体型の女の子にはなりたくなかったの。

パロマ:そうだよね! 私も仕事を始めた頃は、誰がこんな格好するの?って思ってた。みんなが私に着せようとしてる服は、私の12サイズ以上の友だちは誰も着ないようなタイプばかりで。ちょっとバカにされてるように感じることもあった。でも、もっとクリエイティブな仕事やコラボレーションをするようになって、仕事はもっと楽しくなったし、充実感も得られた。

パロマ:この仕事を始めてからのSNSとの付き合いについて聞きたいんだけど、それはあなたにどんな影響を与えた? あなたは自分自身、身体やアイデンティティをどう捉えてる? 私が子どもの頃は、まだローライズジーンズや痩せた白人女性が主流で、私たちの目標はそういうもののパワーを打破することだった。19歳のあなたは、その変化を実感してた?

デヴィン:個人的にはSNSは好きじゃない。仕事の内容やルックスを他の女の子たちと比べちゃうから。誰だって自分にすごく自信が持てる日もある。私はたいていは自分の見た目が好きだし、身体のシミも好き。でも、穴を掘ってそこでじっとしていたい日だってある。今でも他の子を見て、なんで私のお腹はあんなふうにペタンコじゃないんだろ、って比べてしまうこともある。それから、もうひとつの理由は、写真には絶対に現実の自分が写らないから。それはプロの写真家でも、iPhoneで適当に撮った写真でも同じ。痩せて見えることもあれば、大きく見えることもある。本当は違うのに。

Full length picture of Devyn wearing a black bodysuit, tights and heels with wet hair.
Devyn wears bra and briefs SKIMS. Elsa Peretti® Diamonds by the Yard® earrings, pendant and ring with rock crystal TIFFANY & CO. Shoes VERSACE

パロマ:私はときどき写真の中で違う自分を演出するの。わかるでしょ? 現実とイメージの乖離や、それを活用することは、あなたが育つうえで当たり前のことだった? ある意味、それはファッション業界のねらいでもある。こういう話はプライベートでもしてきたけど、これは面白くもなれば退屈にもなるし、ポートフォリオとしてはとても便利なツールになる。個人的には、何週間もSNSが嫌になったかと思えば、その翌週にはマシに思えたり、まったく関わりたくないと感じることもある。

デヴィン:そうだね。同じ年頃の子たちは、みんなSNSからかなり影響を受けている。狭い世界にとらわれないようにするには、距離を置くことも大切。どうして私はこのひとよりフォロワーやいいねが少ないんだろう、って悩んだりもする。でも、私は気にしないようにしてる。SNSは本当の自分自身や自分の人格を表すものではないから。

パロマ:モデル以外に関心のあることや趣味、ワクワクすることを教えて。

デヴィン:私はビーチに通ったり、サーフィンやスケボーをしながら育ったけど、親と同じことはやりたくないっていう、どこにでもいる頑固なティーンエイジャーだった。でも、今はこうしてニューヨークにいて、実家に帰ると、すごくこの環境がありがたいと思う。帰省したときは親友と映画館に行くのが好き。大量のスシとかシェイクシャックを持ち込んで、座ってくだらない話をするの。いつも友だちや家族と連絡を取り合うようにしてる。旅行してるときは特にね。できるだけFaceTimeで話すようにしてる。浮かれずに、地に足をつけておくの。

パロマ:今の話を聞いて次の質問を思いついたんだけど、今シーズンはあなたにとって大きな転機になったよね。それはあなたにとってどんな体験だった?どんなことを感じ、考えた?

デヴィン:パリに行った当初はすごく期待してた。ニューヨークで出たのと同じくらい、できるだけ多くのショーに出たいとか、新しい友だちをたくさんつくりたい、ってね。それが全部叶ったわけじゃないけど、キャリア的にはいい経験になった。

デヴィン:でも、重要なのはそれじゃない。私は2つのショーに出た。それは他のみんなが思う以上の意味がある。ひとりで過ごす時間が多かったのはちょっとキツかった。でも、パリ最終日、最後のショーのあとにエッフェル塔に行って、全部受け入れることができた。この1ヶ月、このシーズンは本当にすばらしい時間だった、って。満足するためにたくさんのショーをこなす必要はないと気づいた。もっと自分自身に集中することが大切。

パロマ:他人との比較や突然のブレイク、誰かへの感謝、浮き沈み……。そういうカオスな状況のなかで、大切なのは自分の中に確固たるものを持つことだよね。大変なことを乗り越えるためには、いつでも立ち返ることができるものが必要になる。

パロマ:この業界には、疲れ切っているのに、ノーという方法がわからない女の子も大勢いる。エージェントに質問するのが怖いという友だちもいるけど、訊くべきことは訊かないと。自分の人生、自分の身体なんだから、人生の主導権は自分が握らなくちゃ。母はそのことですごく助けになってくれて、たとえバカげた質問に思えても、何を訊くべきか教えてくれた。ためらわず、とにかく訊けばいいの。

パロマ:自分のためにきちんと線引きをする必要があると思うけど、あなたにはこれから最高の瞬間がやってくるね。マリオ(・ソレンティ)やアラステア(・マッキム)との撮影はどうだった? i-Dのカバーモデルに選ばれるというのは、それだけ認められたってことでしょ?

デヴィン:エージェントのクレイグから電話があったときは、バスルームで髪をセットしていたの。そしたら「i-Dのこの号の表紙に決まったよ」と教えられて。それから「キム・カーダシアンも表紙に載るよ」なんて言われて、なんて返したらいいかわからなかった。

デヴィン:母に伝えたら母も興奮してた。フォトグラファーがマリオ・ソレンティだと知ったときはなおさらね。彼に撮ってもらうのがずっと夢だったみたい。ふたりともすごく興奮してた。電話を切ってから受け入れるまでにちょっと時間がかかった。それからすごく怖くなった。でも、撮影は楽しかったし、リラックスできた。メイクもヘアも最高。いい経験になった。

パロマ:みんなで頑張った成果を目にする瞬間は、本当に本当に最高だよね。

デヴィン:まだ学ぶことは多いけどね。

パロマ:プレシャス・リーが昨シーズンの表紙を飾って、私も何度かi-Dのカバーモデルになった。この業界にはよくあることだと思うけど、何かをやっている最中はあまり実感がわかないこともある。私だけじゃなくて、みんなそうじゃないかな? うわ、私こんなことをやり遂げたんだって、自分を誇りに思うべきなのに。まだモデルを始めて2年だよね?

デヴィン:始めたのは2019年の終わりかな。

パロマ:それからコロナで全部中止になっちゃったんだよね。この期間はどんな気持ちで過ごした? モデルについて改めて考えるきっかけになった?

デヴィン:もちろん、モデルをやりたいという気持ちは変わらなかった。コロナ禍はこの業界にとって考えを整理するいい機会になったと思う。誰だってリラックスする時間は必要だから。今日が無理なら、明日やればいい。

パロマ:〈明日〉のあなたの活躍がすごく楽しみ。あなたといるとちょっと過保護な母親みたいな気分になるの。私の大切なベイビー。みんなにも「あの子はあなたの妹みたいだね」って言われて、ほんとにそうでしょ、って言ってる。一緒に活動できるのが今からすごく楽しみ。

デヴィン:あなたがインタビューしてくれてよかった。

パロマ:私も。私自身、今までインタビューで「あなたの自信はどこから生まれるんですか?」って何度も何度も訊かれ続けてきた。私たちはこの身体でやりたいことをやってるだけ。わかるでしょ? 今まで痩せてたことは一度もない。この身体じゃない自分なんて想像もつかない。

デヴィン:私もずっとそうだった。自分でどうにかなるものじゃないから、それならそれでいいと思った。だから、どうしてそんなに太ってるのに自信があるんですか、なんて訊かれても、自信なんてないよ、って感じ。

パロマ:「落ち込んだときにあなたのInstagramを見るとだいぶ気持ちが楽になる」とか、そういうコメントをもらったことはある? これってどういう意味なの?って思う。でも、参考にしてもらえるのは自信にもつながるけどね。

パロマ:この表紙が公開されるのが待ちきれないよ。今どんな気持ち? 私の場合は、こういうことがあると、まず投稿して、スマホからアプリを消して、外に出て別のことをしたくなる。あなたは何をする予定? 初表紙をどうやってお祝いする?

デヴィン:友だちとレストランでお祝いするつもり。

パロマ:それはいいね!

デヴィン:あなたとこのインタビューができて、本当に本当に光栄だし、心から感謝してる。

パロマ:ありがとう。必要なときはいつでも連絡してね! ずっとあなたの味方だから。

デヴィン:最高! ありがとう、パロマ。

パロマ:いつマイアミに戻るの?

デヴィン:できれば早めに。でも、まだわからない。

パロマ:私は明日ロンドンに行くの。実は今朝知ったんだけどね。

デヴィン:ウソでしょ! あなたは確か英国系だよね? 私の思い違いじゃなければ。

パロマ:うん、合ってるよ。あなたのバックグラウンドは? ずっと訊いてみたかったの。

デヴィン:父はキューバ系で、母は養子だった。子どもの頃に母はミックスだって聞いたけど、本当のところはわからない。

パロマ:わあ、私たちすごく似てるんじゃないかな? 私の父はスイス系チリ人で、白人と南米先住民のミックスで、母は黒人なの。だからほぼ同じかも。

デヴィン:家系図をたどれば、どこかでつながってるかもね。

パロマ:そばかすがあるから、「いったい出身はどこなの?」ってみんな不思議がるんだよね。

デヴィン:わかる。でも、それが私たちなんだよね。

パロマ:オーケー、ありがとう。また話そう!

Devyn Garcia on the cover of I-D 366 The Out Of The blue Issue

Credits


With thanks to Tiffany & Co.

Photography Mario Sorrenti
Fashion Alastair McKimm

Hair Bob Recine
Make-up Frank B at The Wall Group
Nail technician Honey at Exposure NY using CHANEL
Photography assistance Kotaro Kawashima and Javier Villegas
Digital technician Chad Meyer
Fashion assistance Madison Matusich, Milton Dixon III, Jermaine Daley and Casey Conrad
Tailor Martin Keehn
Hair assistance Kazuhide Katahira
Make-up assistance Elle Haein Kim
Production Katie Fash, Layla Néméjanki and Steve Sutton
Production assistance William Cipos
Casting director Samuel Ellis Scheinman for DMCASTING

All jewellery (worn throughout) Tiffany & Co.

Tagged:
Paloma Elsesser