『あつ森』に新たな活路を見いだすセックスワーカーたち

ロックダウンによってクライアントと対面できなくなった〈女王様〉たちは、たぬきちの庭でコミュニティの復活を試みている。

by Daisy Schofield
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10 September 2020, 9:08am

コロナ禍で多くの企業が苦境に立たされ、パンデミック後の大不況が迫るなかで、ロックダウン時代を代表するゲーム『あつまれ どうぶつの森』の世界では、商売は大繁盛だ。

インテリアデザイナーから美容師、ギャラリストまで、あらゆる職種の人びとがヴァーチャルショップを開いている。当然、セックスワーカーもこの世界へと飛び込んだ。たとえ理想の島で暮らしていても、欲求不満からは逃れられないのだ。

任天堂は利用規約によって、性的な事物を連想させる会話を厳しく取り締まっているため、セックスワーカーは限られた制約のなかで工夫を凝らしている。幸運なことに、『あつまれ どうぶつの森』は意外にも〈プレイ〉に最適で、クライアントとの交流を求める昔ながらのセックスワーカーもSMの女王様も、ゲーム内の機能を存分に活用している。

下僕が支配者に会って現金を手渡す〈経済的支配(フィンドム)〉も、『どうぶつの森』の通貨、ベルを使って行なわれている。クライアントもしくは下僕のアバターは、女王様が育てる植物に水をやったり、家を片付けたり、プレゼントや家具、珍しい花、服を贈るなど、さまざまな方法で女王様に尽くしている。

主なプレイのひとつである〈辱しめ〉に関して、現在小売業の仕事がレイオフ中の、ロンドン在住の22歳のフィンドム、ティアは、下僕に紙袋だけをかぶった状態で雑草を抜かせた、と語った。

「私は彼らをただの奴隷としてみなしてる。そうすると喜ぶから」と彼女はいう。「みんな自分の努力を認めてもらいたがったりはしない。ただ使われたいだけ」

虫取り網で叩くなどの罰も、下僕が〈悪い子〉だったり、もしくは単に支配者側の気まぐれで行なわれている。

22歳の女王様で、シカゴで美容師として働くロクサーヌは、罰や「憂さ晴らし」として、岩を散らかしたり、竹や木を切り倒すなど、下僕の島をめちゃくちゃにするという。「私が暴れる専用の島みたいな感じ」

もちろん、それはすべて同意の上だとロクサーヌはいい、ある下僕は島を破壊してくれたお礼として、Etsyで82ドル(約8700円)で購入したイザベラのぬいぐるみを送ってくれたという。「下僕たちは私に笑顔になってほしいだけなの。みんなすごく優しい」

ゲーム内の贈り物で満足するセックスワーカーもいるいっぽうで、『どうぶつの森』がもっと実入りの良いビジネスになっているセックスワーカーもいる。

ミシガンの女王様、キアラは、クライアントが彼女の島に来るたびに5ドル(約530円)を請求している。特に忠実な下僕の〈ベル〉は、数週間で彼女に300ドル(約3万2000円)支払ったという。

「ベルはフィンドムの一環として、私の買い物の代金を払ってくれた。それからルーレットでゲームを決めた」とキアラは説明する。「1日1回ルーレットを回して彼女がオーガズムに達していいかどうかを決めて、もし彼女が私の許可なしにイッたら20ドル(約2100円)払ってもらうの」

パンデミックの前は、キアラのフィンドムの収入のほとんどは、クライアントと直接会って受け取る現金だった。しかし今、クライアントと会えば、新型コロナウイルスの感染リスクが高まる。

「仕事はかなり厳しい状況」とキアラはいい、彼女のパートナーがロックダウンが始まったときに一時解雇になったため、自分がふたり分の生活を支えなければいけない、と打ち明けた。

「『どうぶつの森』は、クライアントの近くにいたいというニーズを満たしてくれる」と彼女は説明する。「安全な距離を保ちながら、ボーナスもたっぷりもらえる」

キアラの体験は、新型コロナウイルスの感染拡大によって仕事の場をネット上に移さざるをえなくなった多くのセックスワーカーに共通するものだ。

〈ポルノ直売所〉とも称される、クリエイターが消費者に直接コンテンツを販売する成人向けSNS〈OnlyFans〉では、登録者が75%増加するいっぽうで、いまだにネット上で取り締まりを受けるセックスワーカーは少なくない。

これはトランプ大統領のSESTA/FOSTA法(オンラインの性的な人身売買を取り締まる法律)によるところが大きく、Instagram、Patreon、Tumblrなどのプラットフォームからセックスワーカーが締め出された。

クライアントとの関係を維持するべく、新たな方法を探し求めたセックスワーカーたちがたどり着いたのが、この『どうぶつの森』だった。必ずしもそういう使用を意図していなかったゲームが、セックスワーカーたちが合法で仕事を続けられる安全な空間となったのだ。

このソーシャルディスタンシング時代において、『どうぶつの森』はセックスワーカーとクライアントとの関係維持を助けるだけでなく、新規顧客の開拓にも貢献している。

ティアとキアラのクライアントのなかには初めてプレイに挑戦したというひとも多く、ロサンゼルスの女王様のマデリンは、今まで以上に女性の下僕が増えた、と語った。

ロクサーヌによれば、下僕を女性化する〈シシフィケイション〉への関心が高まっているという。男性のプレイヤーが、女王様の命令によって自分のアバターに女性ものの服を着せるのだ。

「ビデオゲームは、人びとにセクシュアル/ジェンダーアイデンティティを模索する可能性や手段を与えます」と説明するのは、カリフォルニア大学でデジタルゲーム・インタラクティブメディアを教えるボニー・ルバーグ助教だ。

ルバーグ助教は、性同一性障害に悩むトランスの人びとがビデオゲームを活用していることを例に挙げた。「『どうぶつの森』の友好的で心地良い雰囲気によって、未経験の人たちがプレイに挑戦するハードルが下がっているんでしょう」

ボニーも、『どうぶつの森』でこのような交流、特に利他的な奉仕の行為が、プレイヤーの精神状態に良い影響を与える可能性があることに気づいたという。

「ゲーム上で下僕になり、支配者側に身を委ねることは、何かと不安が多く、どう生きていけばいいのかわからないこの時代に、リラックス効果を与えてくれるのかもしれない」

ロクサーヌも彼女に同意し、『どうぶつの森』のコミュニティは「とても健全」だと語る。「性的嗜好を通して誰かと繋がる、最高の手段だと思う」とロクサーヌはいう。「今はいろいろとつらい時代だから、みんな心のよりどころや愛を必要としてる」

このゲームを性的嗜好のために活用することは、ちょっとしたモラルパニック(※モラルや社会秩序を逸脱しているとみなされた集団に対する苛烈な反応)を引き起こすかもしれない。

しかし、セックスワーカーが安全に働ける空間を獲得し、他人との繋がりに飢えている人びとがニーズを満たせるという意味では、『どうぶつの森』はコロナ禍における最高の贈り物だ。

痛みや苦しみを同意に基づく快楽へと変えるBDSMは、まさに理想の島の楽園にふさわしいといえるだろう。

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