Photography Courtesy of the Artist

俺達はどこまでも自由に楽しく飛ぶ必要がある:常田大希 interview

millennium paradeが手掛けた「攻殻機動隊 SAC_2045」の主題歌「Fly with me」。この曲は、自分達の主題歌でもあると常田大希は話す。今日本の音楽シーンの最前線を走る者としての責任感と、自由を得ようともがく稀代の音楽家としての反骨心、その両方を垣間見せる男は一体今何を想うのか。

by Sota Nagashima
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09 June 2020, 10:00am

Photography Courtesy of the Artist

King Gnuの常田大希が、「トーキョー・カオティック」をテーマに様々なカルチャーをごった煮し、百鬼夜行をコンセプトに立ち上げた新プロジェクト、millennium parade。インタビューでは、そんな同プロジェクトがSFアニメーション界の金字塔による最新シリーズ「攻殻機動隊 SAC_2045」の主題歌を手掛けた経緯、そこから見えてきた世界に対しての渇望、今改めて確固たる物へとなったヴィジョンなど、その一挙一動が注目される常田大希へ迫る。

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——「攻殻機動隊 SAC_2045」の主題歌となった「Fly with me」の歌詞やMVの世界観は、社会や大きな力を持っているものに対してのメッセージも含まれていると感じました。楽曲を作る上で、その根底にあった想いは何ですか?

批判的な曲にしたかった訳ではなくて。俺達はバンドメンバーやクリエィティブチームも含めて、地方から出てきた人達がほとんどなんです。だから、東京に出て行く時の気持ちを表現したかったというか。今だと、日本から外に向けて出て行きたいという気持ちとリンクする様なリリックやサウンドを意識しています。どの国のどの人種の人にも共感し得る普遍的なテーマだと思ったので。何か特定の物を批判しようという意図がある訳じゃないけど、外に出て行く中で、結果として何か壁にぶつかったり、大きな力に翻弄されたりすることは誰しもあると思います。

—— 外に出ようというマインドにさせているものって何ですか?

ネットが発達して、世界中の音楽がタイムラグ無しで届く世界になっていて、その中で日本の業界特有の価値観に縛られる必要はどんどん無くなってきている。そういう想いをずっと持っているので、自然なことでしたね。

—— そういう意味では、今回の「Fly with me」は常田さんはじめクルーのテーマソングとも言えそうですね。

本当にその通りで、この曲は元々自分達の主題歌を作ろうという想いから生まれて。それが攻殻機動隊の主人公達が所属する「公安9課」とリンクしてくれるんじゃないかと監督とも話してました。

—— 以前から攻殻シリーズの作品はご覧になっていましたか?

はい。クリエイティヴチーム(PERIMETRON)を組織しだした頃からよく話題に挙がる作品でした。

—— 個人的な視点で、攻殻シリーズの好きな点は?

ストーリーライティングももちろんのこと、一番はビジュアルの描き方。「アジア、カッケェな」となるビジュアル。攻殻流にデフォルメした未来都市の描き方なんですけど、普段暮らしてる東京という街がこんな風に見えるんだと。

—— 常田さんも東京のバンドであることを活動のテーマにされていますし、作品のイメージとシンクロする部分も多そうですよね。今回の主題歌のオファーが来た際はかなり嬉しかったんじゃないですか?(笑)

これは何が何でもスケジュール確保して、絶対やるという気でいましたね(笑)。

—— 主題歌に関して、攻殻機動隊のチームからはどんなオーダーを受けて制作されましたか?

今回、制作した「Fly with me」はオファー前から構想自体は考えていた曲で。他にも攻殻機動隊を意識した曲も作ったのですが。監督から「今の時代の音を鳴らして欲しい」という様な要望があったんです。だから、今までの攻殻機動隊が持っている音楽性を、逆に意識し過ぎない様にして作りました。今の俺達の世代の価値観を注入して欲しいと、そもそもが自由なオファーを頂いてたので。

—— 歴史ある作品なのに器が大きい…。粋なオファーですね。

攻殻機動隊という作品自体が、たぶんずっとそういうマインドでやって来てるんだろうなと感じましたね。すごい良いチームだなと思いました。

—— 先程おっしゃった様にmillennium paradeは”世界へ”という意識がある一方で、King Gnuは”日本のトップ”を走って行こうとしているバンドですよね。その意識の違いはハッキリと分けているものなんですか?

日本は音楽市場の大きい国の一つですし、個人的には歌謡曲も大好き。そういった日本のポップスの歴史へのリスペクトが色濃く出てるバンドがKing Gnuなんじゃないかなと。millennium paradeは、もっと広い視点でアートに対するリスペクトを持っていて、表現的にも音楽プロジェクトというよりは、総合芸術的な視点を持っている。だから、ちょっとベクトルが違うと思っています。

—— なるほど。もし、King Gnuとして日本でやりたいこととmillennium paradeでやりたいことがシームレスになる様な未来があるとしたら、そうなりたいとも思いますか?

どうですかね。J-POPはかなり独特のカルチャーを築いているので、他のジャンルの様々な価値観が受け入れられるとも現状では感じていないです。だから、そこは切り分けた方が変な歪みは生まないのかなと思っていて。そうは言っても、やっぱりシンプルに良い物は良いので、あまり差が生まれない様な瞬間も絶対にあると思います。

—— そういう未来すら描けてしまえるんじゃないかという願望も、一音楽ファンとしてあったりします。

芸術に詳しくない人達に対して、アートだ何だと突っぱねる様な事はしたくない。同じ血が通っている人間である以上は、音楽に詳しいか芸術が好きか関係なく共通する感覚というのは絶対にあると思うので。そういうところに訴えかける様な作品を作れたらなと思ってます。

—— そういう意味では、昨年開催されたmillennium parade初のワンマンライブは、既存の音楽やアートに対するリテラシー云々を飛び越えていく圧倒的な力を内包していたのではと思います。

King Gnuや今まで色々な活動をしてきて、それを通して見えたことが反映された結果、圧倒的な強度を誇る作品 へと到達し出している、そういう感触はありますね。結構ぶっ飛んだことをやって、「今まで観たライブの中で一番ヤバかった」という感想もたくさん貰えて、かなり達成感のあるライブになったし。だからこそ、あそこで得た物を今度はKing Gnuへ持って帰って、そっちのライブにも反映させられる。そういう意味では、相互的に作用しあってる気がします。

—— 常田大希というアーティストの強みって何だと思いますか?

何ですかね…。そんな自信のある物は無いんですけど(笑)。今までこういうビジョンを描いて、協力してくれる仲間がいて、それを何年も続けて活動して来れているということぐらいかな。やっぱりヴィジョンが無いと、人は付いてこないし、そういう規模の物を作れないと思うので。だから、強いて言うなら、強みはデカい夢があるということですかね(笑)。無い道や物を想像できるというか。クリエティブにおける作品の内容も座組みも、全てに言えることだと思うんですけど、そこを描けてないと到達できない所はあると思うので。

—— そうやって目まぐるしく環境も変わる中ずっと音楽に携わってきたことによって、自分でも想像してなかった発見って何かありますか?

やっぱり徐々に認知されるようになるにつれて、一挙一動で色々な反応が起きてしまう状況になりつつあって。そういう物の力って想像以上に強くて引っ張られるんだなと、この何年かですごい勉強になりました。だからこそ、そうなった時に自分たちが好きな物や信じる物がとても重要になってくるなと。

—— ブレそうになることもあったということですか?

それは全然あります。やっぱり今の時代、時代の流れを読んでクイックかつインスタントに生み出された物がすごく増えていて。今回のコロナ禍でアーティストたちが色々なアプローチを始めたのもそうですけど、やはりそういう物が広がりを持つ。そういう中で、今回の「Fly with me」の様に制作に約1年近くかかった作品を作るという事自体、セオリーからしたら逆行しているアプローチで。でも、俺達はそういうマインドで生み出された作品たちに影響を受けて、そういうアーティストのマインドに憧れて、アーティストという職業を志してやってきたので、そこは大事にしないといけない。周りが騒がしい中でも自分が信じた事をやるというのは、すごく難しい事ですけど、そういう時に共通した哲学を持った仲間が周りにたくさんいることで、ブレずにいられたというのはすごくあると思います。今のコロナの状況下でも、周りの仲間が我に返らせてくれる様なこともありました。

—— 今回のコロナは僕達が生まれてから未だかつて体験した事の無い様な状況ですよね。その中で腰を据えていようと言う仲間達がいることはすごいと思います。

この状況下においての活動をしているアーティストも、今を生きる事に必死だと思いますし、活動を続けられる様にしたいという想いはすごく良く分かる。ただ、やっぱり俺達は昔から一個の曲、一個の作品に命を賭けてきた。一個一個の作品に掛ける時間や思い入れというのは、圧倒的に強いと思います。そういうマインドはどんな状況になっても持っていたいですね。

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—— それも常田さんの”強み”なのではと思います。

そうですね。何十年何百年掛けなければピラミッドのような建造物は作れないし、そういうマインドでしか到達できない作品がある中で、この時代を生きているとそういったアプローチはどんどん難しくなっている。ひとつの作品を作る予算を捻出するのも大変な時代で、マインドを変えないでいられる俺達は音楽側もクリエティブ側も良いチームになってきているのだなと年々感じますね。

—— この外出自粛期間中も多くの時間は曲作りに割いていたのでしょうか?

これだけ世界的な問題が起きてた中で、ストイックに作品作りに向き合えていたかというと、そういう訳でもなくて。やはり迷いは生まれる時期ではありました。それでも、今は作ることしか出来ないので作品作りに挑んでます。ライブの制作チームの収入が途絶えてしまったりという身内の心配もあって、心穏やかではいられないんですけど、最近は良い作品を作ることが周りを守ることでもあるというマインドになってますね。

—— 今後の自分たちの役割や存在意義などについても考えたりしましたか?

紅白歌合戦に出たり、国内の色々なステージを体験した上で、そういったことを重荷にしたくない。色々な声やしがらみも生まれてくるし、こんな時代だからアーティストもより一層世間の目を気にしないといけなくて、教育番組みたいな作品ばっかりが増えてく。だからこそ、今回コロナの大打撃を受けている中で「Fly with me」という曲を出せたという事は、アーティストとしてはやるべき事ができたと思えたし、良かった。やっぱり俺達はどこまでも自由に楽しく飛ぶ必要があると思ってます。

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millennium parade
https://millenniumparade.com

King Gnu
https://kinggnu.jp/#live

〈2020年ライブ情報・King Gnu〉
FUJI ROCK FESTIVAL '20
8月22日(土)@新潟・苗場スキー場(2021年に延期予定)
https://www.fujirockfestival.com


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Interview and Text Sota Nagashima

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