Photos by Matt Holyoak.

「私たちだって普通にオナニーの話をする」『セックス・エデュケーション』エイミー・ルー・ウッド interview

大人気Netflixドラマ『セックス・エデュケーション』でエイミー役を演じる彼女が、自分を受け入れること、女性のセクシュアリティを取り巻く偏見、シーズン3について語る。

by Britnee Meiser; translated by Nozomi Otaki
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17 July 2020, 10:49am

Photos by Matt Holyoak.

現在25歳の彼女は、Netflixの大ヒットドラマシリーズ『セックス・エデュケーション』でどこか憎めないキャラクターのエイミー・ギブスを演じている。劇中のエイミーといえば、シーズン2の冒頭でお手製ピンクのウサギのバースデーケーキを持って登場するシーンが印象的だが、実際の彼女は、プロセスが細かいお菓子作りはあまり好きではないという。

最近作って美味しかったのはカリフラワー入りのカレーライス、とエイミーは電話で語った。彼女のお気に入りは、アレンジが効くフライパンや鍋ひとつで作れる料理だ。「ちょっとおおざっぱな性格なの。水瓶座だからかな」

7月の月曜日の雨の降る朝、ブルックリンから電話をかけると、彼女はちょうどイングランドの田舎で週末を過ごして戻ってきたところだった。新型コロナウイルスのパンデミックでロックダウンが始まって以来、妹と暮らしているロンドンのフラットを離れたのは、それが初めてだったという。

「自分にこんなに余裕がなかったなんて気づかなかった」と彼女は打ち明ける。「この期間中、ずっと息を止めていたような気がする」

エイミーは昨年と一昨年の夏を『セックス・エデュケーション』の現場で過ごし、ここ2年間は俳優として精力的に活動してきた。チェーホフの『ワーニャ伯父さん』では恋に悩むソーニャを、ブルース・ノリスの『Downstate』では田舎町に住む躁病の少女、エフィを演じた。

エイミー・ギブス役に抜擢される前は英国の王立演劇学校に通っていた彼女にとって、最近のような休暇をとるのは随分久しぶりだ。身体は休めているのに心は休まらない奇妙な時間だった、と彼女はいう。

「この期間は、生活に起きたたくさんの変化を受け入れるのを最優先してきた」と彼女は振り返る。「『セックス・エデュケーション』が公開されて以来、物事の急激な変化に向き合ってこなかった気がする。とにかく自分に休む暇を与えずに、そういうことを考えないようにしていた」

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劇中のエイミーと同様、エイミー自身も一見カリスマ性のある主体的なタイプにみえるが、実際はいろんなことに気を回すあまり八方美人になりがちだという。その裏には、彼女がひそかに不安症や醜形恐怖症と闘ってきたという現実がある。

外出自粛が始まる前は、ゆとりを持ったり、自分自身に必要なものを考えることは、彼女にとって単に難しいだけでなく、彼女が小学生から続けてきた〈うまくいくまでうまくいっているフリをする〉戦術に反することでもあった。

「ずっと自分に自信があるふりをしてた。本当の私は物静かで、部屋の隅っこで縮こまってるようなタイプだけど、いつも大声で騒いでたの」

最近ではリモートセラピーに参加したり文章を書くことで、自分の気持ちとじっくり向き合い、反芻する時間と余裕ができた。そのふたつに熱心に取り組んでいるおかげで、キャリアの成果や目標についてあまり不安は感じていないという。

「正直、最近はかなり自分を労ってる」と彼女は打ち明ける。「ロックダウンが始まったばかりの頃は、俳優仲間たちはルーティンをつくって熱心に取り組んだり、1日にたくさんのことをこなそうとしていた。でも、今の私たちがいるのは作家の静養所なんかじゃなくてパンデミックだから。私は自分のやるべきことをやろう、でも無理はしないようにしよう、って決めたの」

電話越しの声からも、彼女の暖かさと優しさが伝わってくる。話題は自然と自粛期間に楽しんでいたコンテンツへと移っていった。彼女は最近『シャイニング』を観て、シェリー・デュヴァルに魅了されたという。いつかシェリーの伝記映画で主演を務め、彼女がセットで過ごした「最悪な」時間を演じてみたいそうだ。

「バットを持つシーンは70テイク以上も撮り直しをして、彼女は疲れ切っていた。あの作品を撮影中の彼女をぜひ演じてみたい」

また、HBOのドラマ『サクセッション』もお気に入りのひとつだ。「良いキャラクターというのは複雑なキャラクター。登場人物たちが道徳的な判断が曖昧な状況に置かれている作品が好き。そのほうがずっと見応えがあるから」

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この言葉を聞けば、彼女が『セックス・エデュケーション』に関心を抱いた理由にも納得できる。本作はセックスの機微や十代であることの複雑さを真っ向から描いている。キャラクター描写があまりにも真に迫っていて、現実世界の誰もが強く共感できるので、これがティーンの隠された部分を明らかにする作品であることを忘れてしまうほどだ。

シーズン1で、エイミーはエイサ・バターフィールド演じる主人公のオーティスに、マスターベーションにまつわる悩みを打ち明ける。その後の彼女のセリフは、一度聞いたら忘れられない。「ひと晩中オナニーしてたの。クランペットを4つも食べた。クリトリスがとれちゃいそう」

「私がオナニーっていう言葉を連呼してたのを、ママと友だちは面白がってた」とエイミーは回想する。「女性のキャラクターが自分の話をするときに、オナニーっていう言葉を使うのが信じられなかったみたい。それは男が使う言葉だから、って」

「でも、この作品はみんながその言葉をどんな風に使っているかに関係なく、当たり前のように出している。特に女の子たちは、淑女らしさなんて欠片もない。この作品は、私たちだって男の子と同じように普通にオナニーの話をするんだよ、っていうことを示してる。私たちはおとぎ話の人魚なんかじゃない。この作品に出てくるのはリアルな女性なの」

私はここでドラマ『Skins - スキンズ』の名前を挙げた。セックスと若者の現実を真正面から描いた英国のティーンドラマで、エイミーも私も青春時代に観ていた作品だ。今のZ世代にとっての『セックス・エデュケーション』は、当時の私たちにとっての『Skins』のような作品だが、私たちは前者がいかに洗練されているかを話し合った。

「やっぱり『Skins』のほうが魅力に欠けるかな。もっと現実的な作品だった」とエイミーは指摘する。「キャラクターはすごくクールだったけどね。みんなパーティ好きで、反抗的で、大胆で、クールじゃないはずのキャラクターもカッコよく描かれていた」

「でも、『セックス・エデュケーション』はもう一歩踏み込んで、誰もが輝いてるわけでもクールでもないし、みんな一筋縄ではいかない、っていうことを描いてる。私はそこが好き」

結局のところ、『セックス・エデュケーション』は自己受容のドラマだ。すべてのキャラクターが自分の欠点を受け入れるだけでなく、実はそれは欠点などではないということに気づき、ありのままの自分を愛することを学んでいく。そんな作品への出演は、エイミー自身の人間的な成長に大きな影響をもたらしたという。本名と役名が重なったことは全くの偶然だったというが、彼女は劇中のエイミーと自分に多くの共通点を見出している。

「どこまでが劇中のエイミーでどこからが本当の私なのか、わからなくなることもある」と彼女はいう。

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「実は最初はリリー役でオーディションを受けたの。彼女のキャラクターがすごく気に入ったから。でもどこか違和感があって、うまくいかなくかった。そしたらエイミー役の台本が送られてきて、それを読んでゲラゲラ笑った。セリフを友だちの前で読み上げて、『私が読んだセリフ、これで合ってるよね?』って思わず確認しちゃった」

「でも、共感できる部分もたくさんあった。八方美人なところとか、やりたくもないパーティーを開いたりとか、みんなを喜ばせようとして、そんなつもりはないのに結局誰にも喜んでもらえなくてパニックになったりとか……。それから彼女の変化にも共感した。エイミーは〈完成品〉にはほど遠い。まだまだ成長と進化の途中なの。私自身もそうだから」

最近はノンフィクション、特に意志の強い、不完全な女性たちの体験を綴ったエッセイ集をよく読んでいるというエイミー。お気に入りはブライオニー・ゴードンの『Mad Girl』で、エミリー・パインの『Notes to Self』を読んだときは号泣してしまったそうだ。

「読んでたら、これって私のことじゃん、って思ったの」と彼女は笑う。「自分のひそかな羞恥心や罪悪感、不安を軽くしてくれる誠実なひとがこの世界にいるのは、すごく重要なこと。読み終えるたびに作者にメッセージを送って、お礼を伝えてる」

自分自身が抱える弱みを公にしている俳優として、エイミーも多くのファンにとってそんな存在のひとりだ。劇中のエイミーはシーズン2で、深刻なトラウマを抱えてしまう。痴漢に遭った後、じわじわと押し寄せてくる苦しみを控えめに表現した彼女の演技は、単に共感を呼ぶだけでなく、心が痛むほどリアルだ。

被害に遭う場面やその後の事情聴取など、このようなシリアスなシーンを撮る難しさについて話すなかで、彼女は心を掴む演技ができたのは、キャストやスタッフとの親密な関係のおかげだと語った。

「みんながベストを尽くせるようにお互いに支え合っている」と彼女は撮影中の出来事を魔法のようだ、と説明した。

「こんなにお互いに協力的な現場は初めてだった。みんな本当に仲が良いの。(メイヴ役の)エマ(・マッキー)の顔を見ると、思わず涙が込み上げてくる。彼女のことが大好きなの。エイミーとメイヴの関係は、私たち自身の関係と重なる部分が多い」

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シーズン3の製作もすでに決まっており、撮影は今年中に始まる予定だ。エイミーはエピソード1の台本を読んで、劇中のエイミーがまだ回復途中にあることを知って安心したという。

「彼女が実際に起こったことを受け止めるのには長い時間がかかる」と彼女は指摘する。「シーズン3でも、(彼女の悲しみは)現在進行形で続いてる。新しいストーリーを展開するのではなく、物語がさらに深まっているのは、脚本家の勇敢な決断のおかげ。この作品は後の展開をより効果的にするために、あえてストーリーの進行を遅らせるのがすごくうまいと思う」

エイミーの次回作は、ベネディクト・カンバーバッチやクレア・フォイと共演する、ルイス・ウェインの伝記映画。独特なネコのイラストで知られる19世紀の画家の人生を描く本作で、エイミーはウィッグとコルセットドレスを身に付け、ルイスの妹を演じている。1年で最も暑い時期に重い衣装を着こんでの撮影だったが、彼女は新たな体験を思い切り楽しんだという。

「『セックス・エデュケーション』は私の代表作」と彼女は断言する。「みんなが最初に思い浮かべる私の出演作がこの作品だから、私自身も私がエイミー・ギブスなんだ、っていう思いが強い。いろんな時代や場所のさまざまな役を演じる俳優として、ときどき思い出してもらえたらうれしい」

This article originally appeared on i-D UK.

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