恋愛結婚の時代は終わった? プラトニックなパートナーシップのすすめ

人生の重荷を分け合えるソウルメイトがいれば、運命の人を待つ必要なんてない。

by Isabelle Truman
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20 May 2022, 3:00am

4歳のとき、私は親友のクレアと、私たちの母親が同居していた家の裏庭で結婚した。父が蒸発したあと、お金も仕事もなかった母は、よちよち歩きの幼児を抱えて数ヶ月前に引っ越してきたばかりだった。クレアの母ブリジットと私の母は親友同士で、迷わずひとつの大家族として一緒に住むことを決めた。一般的な理想の愛とは違うかもしれないが、ふたりは財布を共有し、互いの子を育て、精神的に支え合った。これ以上に幸せな人生はないだろう。

社会は一夫一婦制に基づく異性愛規範的なハッピーエンドの概念にこだわり続けている。それは私たちが消費する映画やテレビ番組の約80%を占める、数十億ドル規模の業界だ。しかし、現実世界は〈シングル化〉が進んでいる。パートナーがいる、もしくは既婚者の米国人の割合は過去最少となり、英国国家統計局によれば、運命の人の存在を信じているひとは6人の1人しかいない。同じデータによれば、2039年までに7人に1人が単身生活者になるという。さらに私たちは、住宅危機、孤独感の蔓延、セックスレスな社会にも直面している。そんななか、ロマンスよりも友情を選ぶひとが急増している。私の母とブリジットのように、親友とプラトニックな結婚生活を送るのだ。

2020年11月14日、ジェイとクリストルはウェディングドレスを着てバージンロードを歩き、誓いの言葉を読み上げ、指輪を交換し、最初で最後のキスを交わした。ふたりは一緒に生活し、財布を共有し、養子の息子エディを育てている。結婚したカップルとの唯一の違いは、ロマンスがないことだ。ふたりは別々に眠り、性的な関係は持っていない。2012年、地元のLGBTQI+センターで出会ったふたりは、すぐに自分たちの絆は特別だと確信した。その関係を表現する言葉がまだなかったため、ふたりは「ソウルメイト」「ツインフレイム」と呼び合った。多くの親友同士がそうであるように、ふたりともお互いと結婚するとよく冗談で言っていたが、ある日エディと出会い、法的にも社会的にも家族になる必要性が生じたため、ふたりは輝くドレスを着て「誓います」と宣言することにした。「結婚式の1ヶ月前に〈ケレンシア〉という言葉を見つけました」とジェイは説明する。「自分に力を与えてくれる家のような場所という意味です。クリストルはまさに私にとってそういう存在なので、誓いの言葉はこの言葉をもとに書きました」

photo of two best friends jay and kristle getting married
Jay and Kristle.

ジェイとクリストルのような関係は、オンラインで〈プラトニック・ライフ・パートナーシップ(PLP)〉と呼ばれていて、近年SNSを通して知名度が高まっている。TikTokでは、このハッシュタグの閲覧数は1150万回を超える。このトレンドの中心にいるカップルが、エイプリルとルネだ。シンガポールで一緒に育ったふたりは切っても切れない仲で、最初の彼氏から初めての失恋、初めての就職まで、人生のあらゆる節目をともにしてきた。家族ぐるみの付き合いで、団体旅行にも行った。エイプリルが故郷のシンガポールを離れてロサンゼルスに引っ越したあと、ふたりは毎日のようにFaceTimeで通話し、遠距離は自分たちにとって現実的な選択肢ではないと気づく。

「パンデミック中、どれくらいお互いの人生に関わりたいのか、徹底的に話し合いました。一緒に住む? 共同の銀行口座をつくるか、退職金を共有する? どうしてそういうことを一緒にやる恋人をずっと待ってるの?って」とエイプリルは振り返る。ルネがエイプリルと一緒に住むためにLAに引っ越したときの、心温まる、紛れもなくロマンティックな空港での再会は、TikTok上で話題を呼んだ。今では5万人もの人びとがふたりの関係を追いかけ、「あなたたちが解決策を示してくれた」というようなコメントが並ぶ。「これまでの恋人とはここまで真剣に考えたことはありませんでした。でも、ふたりで未来を思い描いたときは、一瞬で話が進みました。だからこの関係を築くことにしたんです」

ステフとヘレンは、エイプリルのTikTokビデオに出会うまで、自分たちの関係を表す言葉を知らなかった。2012年の大晦日に出会ったふたりは、今年の夏に婚約し、2027年に結婚式を挙げる予定だ。ヘレンが養子縁組の手続きを進めている子どももいる。「私たちがこの関係がいかに大切か話しても、誰も真剣に聞いてくれませんでした。いつも『わあ、最高の友だちだね』と言われるだけで」とステフはいう。「コロナによって、みんながどれほど私たちの関係を軽く考えていたかが浮き彫りになりました。普通の結婚と同じようには尊重されないんです」

エイミーとアルーナも同意する。ふたりはジムで出会うとすぐに意気投合し、正反対の者同士が惹かれ合うことを証明した。「彼女は全身ベージュで、私はちょっとおかしいくらい真っ黒でした」とエイミーはいう。「今はおそろいの陰陽タトゥーも入れています。たいていのひとは私たちが付き合っていると思うでしょうね」と彼女は続ける。「新時代の人種のるつぼ」である、アリゾナ州のセドナという「スピリチュアルな町」に住んでいるにもかかわらず、そこには「オープンでオルタナティブな関係が驚くほど少ない」とエイミーはいう。

 〈プラトニック・ライフ・パートナーシップ〉は比較的新しい言葉だが、その概念は決して新しいものではない。1700年代後半、 女性ふたりがプラトニックな同居生活を送るヘンリー・ジェイムズの小説『ボストンの人々』に由来する〈ボストン・マリッジ〉という言葉は、別の女性と一緒に暮らし、〈結婚〉する女性を指す一般的な言い回しだった。20世紀初頭にかけては、〈ロマンティック・フレンドシップ〉と呼ばれる情熱的で献身的な同性間の友情が一般的になり、偏見なく受け入れられるようになった。そのなかには当時違法だったレズビアンの関係を隠すものもあったが、大半は純粋なプラトニックラブを具現するものだったと歴史学者は考えている。

「愛には階級があり、その最上位が恋愛だという考えは間違っています」と説明するのは進化人類学者で『Why We Love: The New Science Behind Our Closest Relationships』の著者、アンナ・メイチンだ。プラトニックな関係は恋愛と同じ生物学的、心理的メカニズムに基づいており、健康や幸福感にも同様の効果をもたらすことが研究で明らかになっている。その重要性の上下関係は、文化的産物に過ぎない。「私たちはもっと愛について学び、さまざまな方法でアクセスし、その価値に差はないということを理解するべきです」。

歴史を鑑みれば、結婚は経済的な提案だが、近世には恋愛中心の全身全霊を捧げる関係へとシフトしてきた。多くのひとにとって、このような関係のプレッシャーは非現実的で達成不可能なものだ。私たちはパートナーに頼りになるだけでなく、自発的であることを期待する。つまり服を脱がせ、ゴミ出しをしてくれる相手だ。たとえ性欲や情熱が薄れても、幸せな結婚をしているひとは、しっかりとした土台が大切だと言うはずだ。

「ずっと一緒に過ごしているロマンティックカップルの間には、もちろん恋愛感情もあるとは思いますが、その下にはふたりを結びつけるプラトニックな愛があります」とエイプリルはいう。「親友、忠誠心、共通の体験……。そういうものは恋愛感情がなくても得ることができます。私たちは結婚して10年になりますが、お互いと寝たいという性的な欲求を感じたことは一度もありません。だからといって、お互いに対して誠実でないというわけではありません。家族だと思っています」。彼女の理論は共感を呼んでいる。彼女とルネが暮らすワンルームの別々のベッドやリビングスペースを紹介したTikTokのビデオには、「正直、結婚したカップルと大して変わらない。結婚してから何年も経ったカップルみたい」というコメントもある。

「PLPは、結婚で最も重要な要素は何か、という興味深い疑問を提起しています」と説明するのは、恋愛や感情知能(※自分や他者の感情を理解し、人間関係を円滑にするための能力)の解説ビデオで300万人以上のフォロワーを集めている心理療法士のナディア・アデジーだ。「自分自身や将来に何を求めるのか考えるうえでの選択肢を増やし、価値観や友情を恋愛より重視する機会を与えてくれるので、PLPは私たちをエンパワメントしてくれます。結婚は、もはや万人のための選択肢ではないのです」

「PLPは結婚制度の古典的条件づけ(※外部から刺激を受けたさい、無条件で何らかの動作をするように学習させること)に挑んでいます」とセックス/恋愛セラピストのモアンドラ・ジョンソンは付け加える。「一夫一婦制は、個人の欲求階層には恋愛関係で結ばれた生涯のパートナーが含まれるべきだという考えを示唆しています。しかしPLPは、多様な愛や家族構成の形が、人生や個人の自己実現と同じくらい重要であるという考えを推奨しています」。結婚と同様、PLPをうまく維持する鍵は両者が同じ意志を持ち、明確なコミュニケーションをとることだ。「常に話し合い、お互いのニーズに応えられているか確認することは、どのパートナーシップの成功にも不可欠な段階です」とナディアは説明する。「肝心なのは尊敬、信頼、誠実さです」

ロマンティックな恋愛と性的欲求が最高位に位置するのが当たり前とされるこの世界で、アセクシャル/アロマンティック・スペクトラムを自認する人びとは、オルタナティブだが同じくらい充実した道を見出だした。ジェイとPLPを結んでいるクリストルも、パートナーのジェームズと10年以上PLPを継続しているリンジーもそうだ。一緒に暮らし始めたとき、毎日が「めちゃくちゃ楽しい親友とのパジャマパーティー」のような感じだった、とリンジーは打ち明ける。ふたりは10年以上で4回引っ越し、2つの州で生活してきた。「ジェームズとの暮らしは、私にとって人生で最高の出来事です。あなたのすべてを見て、理解してくれる相手に出会い、それでもそのひとが自分と一緒にいたいと望んでくれたなら、それはとても素晴らしいことだし、その関係を守るためなら何だってするでしょう」

しかし、それでも恋愛をするひとにはある共通の疑問が浮かぶ。自分が、もしくは相手が誰かに出会い、恋に落ちたらどうなるのか? PLPは運命の人が現れるまでの代理に過ぎないという誤解は、真実からは程遠い。アンディとエヴァはセントルイスで暮らしている。ふたりにはそれぞれ交際相手がいるが(ふたりともポリアモリーで「ほとんどゲイ」)、ふたりの関係は他のすべてを「超越している」という。トランジションを始めたばかりの頃は(エヴァはトランス女性でアンディはトランス男性)、この関係がふたりを守る「繭」になった。ふたりのつながりは運命的なものだ。「占星術アプリ〈Co-Star〉でも相性は完璧でした」とアンディはいう。「2016年の選挙の1週間後、出かけてエンゲージリングを買い、ある朝彼女にプロポーズしました。この世界でどんなに大変なことが起ころうとも、いつも彼女のそばにいると伝えました。ロマンティックパートナーでもセクシャルパートナーでも、彼女以上に愛するひとはいません。彼女は自分にとって世界一大切なひとです」。もちろん、あらゆる恋愛関係と同様、状況が変わる可能性もある。「もしジェームズが真剣な交際をするから引っ越したいというなら、それは〈最高に嬉しいほろ苦い体験〉になるでしょう」とリンジーはいう。

エイプリルとルネにも、それぞれ交際相手がいる。クィアを自認するエイプリルはルネとも仲の良い男性と真剣に交際していて、ルネはカジュアルなデートを通して自身のバイセクシュアリティと向き合っている。ふたりとも安定した土台があることで、恋愛のプレッシャーが減ったという。未来、経済、子ども、そしてこの関係が〈永遠〉かどうか、という不安から解放された。これらについてはすでに解決済みだ。「12年間いろんなパートナーと付き合っては別れてを繰り返したあと、これが自分たちにとって最善の関係だということがわかりました」とエイプリルはいう。「みんな恋愛が最上位の愛だと考えています。でも、わたしたちの経験では、これに勝る関係はありません」

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