「日本で結婚をしたい」ロンドンで同性パートナーと暮らすクィアの願い:Kan interview

『クィア・アイ in Japan!』出演をキッカケにセクシュアリティを含め自分の生き方を見つめ直したKan。3年間の遠距離恋愛を経て、パートナーと一緒に暮らすためにイギリスへと渡り、同性結婚をした。

by Saki yamada; photos by Nobuko Baba
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16 June 2022, 6:00am

「奪われている人としての権利を取り戻したい」。性的マイノリティであることによって、あらゆる差別を肌で感じてきたKan。2021年7月にはイギリス人の同性パートナーと生活するため、東京を離れてロンドンに移住した。

日本では2015年から東京・渋谷区と世田谷区を筆頭に、各地の自治体でパートナーシップ制度の導入が進められている。この秋から東京都は、性的マイノリティーのカップルを夫婦と同じようにみなすための〈パートナーシップ制度〉の本格的な導入を検討中だ。しかし、同性婚や婚姻の平等が法的に認められたわけではない。さらに同じパートナーシップ制度でも、形式や内容、申請者に求められる条件が都道府県や市区町村で異なっている。

「この制度は性的マイノリティ当事者のパートナーシップの存在を行政が認め、可視化するという意味で、とても意義深いと思います。でも僕はパートナーとの関係に法的な保障が欲しいので、日本で結婚がしたいです。一日でも早く、法律上における同性婚の実現を望みます」。”結婚”という誰かにとっての当たり前が、Kanにとっては夢のまた夢となってしまっている。

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Netflixのオリジナル番組『クィア・アイ in Japan!』に出演以降、Kanは自信を持てるようになった。クィアであることが、「異性を好きになるべきだ」という異性愛規範や「女性は女性らしく、男性は男性らしく」というジェンダー規範を知るきっかけになった。Kanは規範に縛られていない自分を想像すると無限の可能性を感じるという。そんなKanが、イギリス移住を決めるときに譲れなかったこと、それは自分への正直な態度だ。自分の意思をリスペクトできたからこそ、Kanは移住を実現させた。

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イギリスと言えば、社会的活動がアクティブで、性的マイノリティの尊厳が守られたLGBTQ先進国というイメージを持つ人は多いだろう。最愛の人と結婚し幸せな日常を過ごすKanだが、アジア人ゲイとして生きる難しさも同時に感じると、ここ数ヶ月での経験談をシェアしてくれた。

「入国時に「中国のパスポートの方はこちら」と僕の顔を見て国籍を判断されたり、誰もが知っている洋服店で髪が長いアジア人であるというだけの理由で店員に「イカゲームに出ている悪役に似ている」とニヤニヤしながら言われたり(この悪役は話の中で死にます)したことがありました。お店で起きたことは、マネージャーを呼んで差別行為であると抗議しました」

どんなに多様性への理解が深まっているように思える場所でも、心無い発言がもたらす差別はいまだ数多く存在している。

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アジア人、そしてゲイという少数派のアイデンティティから生まれる差別を経験することは、Kanが〈インターセクショナリティ〉の問題について考えるキッカケになった。インターセクショナリティとは、人種やジェンダーなど複数の社会的/政治的アイデンティティの組み合わせから生まれる特権や差別を意味する。

「例えば、白人ゲイとアジア人ゲイでは対応が変わるなど、同じゲイでもそこにはまた別の差別が存在しています。ただ、ロンドンにはたくさんのコミュニティがあるので、自分に合ったセーフスペースを見つけることは可能です。アジア系クィアを中心としたグループやアフリカ系クィアを中心としたヴォーグコミュニティなど、自分も居ても良いんだと感じられます」

誰もが自分らしく生きる世界を願うKanにとって、こうしたギャップから生まれる差別に目を向けるのは重要なことだ。「言語化できなくてもおかしいと感じたら、それを変えるためのアクションをみんなで起こす。そうすることで、少しでも世の中の不平等による生きづらさが減ると思います」とKanは語った。

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大学院ではセクシュアリティに関する研究をしていたKan。現在は、ジェンダーを中心とした構造的な差別や抑圧の仕組みを理解するために、ベル・フックスの『フェミニズムはみんなのもの』を読み進めている。

「今年は国のあり方を変えることができる大きなアクションの一つとして、7月の参院選があります。他にも政治や社会問題について家族や友人と話したり、デモに参加したり、寄付をしたり、どんなに小さなアクションでも良い。自分たちのために、そして未来のために、今の時代を生きる人が平等の実現や維持をしようと、常に取り組み続けないといけないと思います」

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