クィア映画・ドラマに見るアイコニックなキスシーン7選

『君の名前で僕を呼んで』のエリオとオリバーから『ユーフォリア』のジュールズとルーまで、究極のキスシーンをご紹介。

by Otamere Guobadia ; translated by Nozomi Otaki
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26 June 2020, 8:51am

クィアを自認するひとなら誰でも、初めてクィアのキスシーンを観た瞬間を覚えているだろう。多くがロールモデルと呼べる存在、つまりポップカルチャーで表象される自分たちが共感できる、幸せを掴んだキャラクターがいない環境で育った私たちは、クィア的な欲望が暗示されたり高まることを恐れ、長年セクシュアリティを隠してきたひとも多い。

ノンバイナリーの作家/映像作家/ドラァグパフォーマーのアムロウ・アル=カディ(Amrou Al-Kadhi)は、クィアのキスシーンを初めて観た瞬間やそれに受けた衝撃をこう振り返る。

「私にとって初めてのクィアのキスシーンは、14歳のときに観た『ブロークバック・マウンテン』でした。長い年月を経て再会したジェイク・ギレンホールとヒース・レジャーがキスを交わし、まるでふたりの身体が溶け合うみたいに固く抱き合うシーンです。当時は自分のセクシュアリティに大きな不安がありました。自分もあんなふうに、お互いの身体が溶け合うくらい強く抱きしめられたい、そうすればもう寂しくないのに、と強く思ったのを覚えています」

「初めて観たゲイのキスシーンはクリスティーナ・アギレラのMV『Beautiful』でした」と語るのはACMのヴォーカルで『Diary of a Drag Queen』の筆者、トム(クリスタル)・ラスムセンだ。

「あのビデオのおかげでゲイであることはみんなに忌避されることじゃない、そして自分はゲイなんだ、と気づくことができました。物心つく前から男の子とキスをしていましたが、道行くひとが見つめるなかでふたりがキスを交わすあのビデオは、自分の欲は周りのひととは違うと気づくきっかけにもなりました。12歳でこのシーンを観て嬉しかったのも確かですが、同時に不安がなかったといえば嘘になります」

私たちもクィアとして愛し愛され、ロマンスや性欲を体験、表現できるという考えは、実際にスクリーンで目にするまで、実現可能な選択肢として私たちのなかには存在しなかった。

ポップカルチャーにおいて最も印象的なクィアのキスシーン7つを、以下で紹介する。

『ユーフォリア/EUPHORIA』(2019):ジュールズとルー

ゼンデイヤとハンター・シェイファー。そしてこの映像表現。次世代の若者を熱狂の渦に巻き込んだ、サム・レヴィンソン監督による壮大なヴィジョンほど、このリストの始まりにふさわしいものはない。ゆっくりと旋回するカメラが、ふたりが寝転ぶベッドや生徒たちが行き交う学校の廊下を映し出し、彼女たちは堪えきれない様子で笑いをこぼしながら初めてのキスを交わす。このシーンが特別なのは、見事なディレクションだけでなく、シスジェンダーとトランスジェンダーのティーンの枠にとらわれない恋愛が繊細かつ完璧に描かれていることだ。シーズン2が待ち切れない!

『ムーンライト』(2016):シャロンとケヴィン

アカデミー賞作品賞に輝いた本作が全世界の批評家から絶賛されたとき、彼らの多くが従来のステレオタイプ的なイメージにとらわれない、アフリカ系米国人の男性のクィアな欲望の斬新な描写を評価した。メインキャラクターのシャロンと、シャロンに恋心を抱きながらも彼へのいじめに加担してしまうケヴィンが海辺の月明かりの下で交わす優しいキスに、私たちは期待に息をのみ、同時に涙を堪えずにはいられなかった。

『オルランド』(1992):オルランドとサーシャ

サリー・ポッター監督がヴァージニア・ウルフ原作の小説を映像化した本作は、いまだに多くのクィアのオーディエンスの共感を呼んでいる。ティルダ・スウィントン演じる不死身のオルランド卿は、キャサリン・ゼタ=ジョーンズ演じるロシア大公の娘、サーシャと恋に落ちる。しかし、ある時深い眠りについたオルランドは、目覚めると「以前と全く同じ人間だが、ただ性だけが変わっている」。オルランドとサーシャは、氷の上で情熱的で慌ただしいキスを交わす。そんなふたりを遮るのは、オルランドの遠い未来の不幸を憂う涙だけ…。いかにも〈クィア的〉なシーンだ。

『君の名前で僕を呼んで』(2017):エリオとオリヴァーの最後のキス

アカデミー賞脚色賞を受賞したジェームズ・アイヴォリーの脚本より:
「夜明けのベルガモ、噴水のある通り。(中略)まさに一生に一度のキス」

『クルーエル・インテンションズ』(1999):キャスリンとセシル

「気持ち悪くなんかない。じゃなきゃ女の子たちはどうやって勉強するわけ?」。キャスリンのこの台詞は、一度聞いたら忘れられない強烈な誘い文句だ。サラ・ミシェル・ゲラーがセルマ・ブレアにデート相手とのファーストキスを成功させる手ほどきをするこのシーンなしに、このリストは完成しない。数々の珠玉のクィアのキスシーンのなかでも色褪せない魅力を放つふたりのキスは、もっと賞賛されてしかるべきだ。

『SKAM』(2015):イザクとエーヴン

これは世界中で観られているキスシーンと言っても過言ではない。イザクとエーヴンがプールの中でキスをしたとき(BGMは他でもないデズリーの「I'm Kissing You」)、本作の成功とオーディエンス人気は確固たるものとなり、スペイン、イタリア、フランスをはじめとする各国でリメイクされるに至った。

『リバーデイル』(2017):シェリルとトニー

本作の評価は、TV史上最もバカげていて出たとこ勝負なティーンエイジドラマといったところ。ギャングの抗争、シリアルキラー、〈Jingle Jangle〉や〈Fizzle Rocks〉などと呼ばれるドラッグ、近親相姦、見るに耐えないウィッグ…。そんなグレッグ・バーランティ手がける発熱したときの夢ような世界の中で、一瞬のきらめきを見せるのが、ヴァネッサ・モーガン演じるトニーとマデライン・ペッチ演じるシェリルのキスシーンだ。同性愛矯正セラピーを抜け出したシェリルは、再教育の映像が映し出されるスクリーンの前でシェリルとファーストキスを交わし、恐ろしい修道女たちに追いかけられる。まさにキャンプで、びっくりするほどわざとらしく、突拍子もないシーンだが、私たちはそういうのが大好きだ。

This article originally appeared on i-D UK.

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