もし女性が世界を支配したなら? Dior オートクチュール 2020春夏

ディオール 2020 春夏 オートクチュール コレクションで、Diorのマリア・グラツィア・キウリはジュディ・シカゴとコラボレーションし、女性のパワーを祝した。

by Osman Ahmed; translated by Ai Nakayama
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30 January 2020, 3:44am

「もし女性が世界を支配したなら?」これは米国を象徴するフェミニストアーティスト、ジュディ・シカゴが提起した質問だ。そんな彼女とDiorとのコラボが、ディオール 2020 春夏 オートクチュール コレクションのショーで実現した。

ショー会場は女性の胴体のかたちをした巨大なテント。その中に掲げられた21ものフラッグが様々な質問を投げかける。「世界から暴力は無くなるだろうか?」「年を取った女性は尊ばれるだろうか?」「地球は守られるだろうか?」

床のカーペットには花模様が散り、全体の雰囲気は寺院のよう。クチュールショーで一般的に見られるミニマルな白い壁や豪華絢爛なバロック風の会場とはまったく違う、女家長が守る聖なる場所だ。ジュディがこのアイデアを着想したのは70年代。この会場を彼女は〈女神(The Female Divine)〉と名付けた。

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マリア・グラツィア・キウリは2016年にDior初となる女性のアーティスティック ディレクターとなり、以来、女性のエンパワーメントやフェミニスト・スローガンを強く打ち出している。彼女はショーを「ギャラリーのような、文化の中にある空間」と認識しており、女性アーティスト、作家、振付師などを招き、彼女たちの作品を発表するプラットフォームとして提供している。

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「私たちの生きている時代において、自分の世界に異物を混入させること、他のクリエイティブなひとたちと協働していくことはとても大切だと思います」とショー前のプレビューで彼女はこう語った。

「まずは対話をすればいい。私は同じアートを再生産して商品として提示するのは好きじゃないので、それはしてきませんでした。それぞれが自分の言語を語るべき。(略)私はデザイナーで、彼らはダンサー、作家、アーティスト。そこは意識すべきだと思います」

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マリア・グラツィア・キウリは、ジュディ・シカゴとのコラボを通して古典的な女神というアイデアへと行き着いた。シフォンの細い束、ウエストの部分で絞られたゴールドのスーツなど、全体的に、『クルーレス』のシェール・ホロヴィッツの言葉を借りれば、ボッティチェリが描く女性を思わせる。このコレクションに登場するのは、ジュディのカラフルでキッチュな女神ではなく、マリア・グラツィアが育ったローマの彫像からインスパイアされた女神たちだ。

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ルックは実に古典的。古代ギリシャのチュニックに着想を得たデルフォイ風プリーツやアシンメトリーのガウンに、フラットサンダルとゴールドのヘッドバンドを合わせている。キーとなるカラーはゴールドとマーブルホワイト。もしアテナ、ヘラ、アフロディーテなどギリシャ神話の女神たちが現代に生きていたら、彼女たちはこういう装いをするのだろう。

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しかし、ショーの真の主役はやはりジュディ・シカゴだ。ある意味では、世界がようやくこの80歳のアーティストに追いついた感もある。グウィネス・パルトロウがあのヴァギナ・キャンドルを販売し、ジャネール・モネイが「Pynk」のMVでデュラン・ランティンクの陰唇を模したパンツを履き、何百万人の女性たちがピンクの〈プッシーハット〉をかぶってドナルド・トランプに抗議したりする時代にあって、シカゴはいまだに〈ヴァギナアートのゴッドマザー〉と呼ばれている。

初期の彼女は、アイデンティティ、そして締め出された女性たちの怒りが、政治や社会構造の変化の弾みになることを理解していた。また彼女は、〈#MeToo〉ムーブメントの核にある問いや、授賞式や賃金におけるジェンダー平等にまつわる議論を予見していたともいえる。

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ジュディのもっとも有名な作品「ディナー・パーティ」は、三角形のテーブルに39人分の食器がセットされ、それぞれの皿に、女性器を模した凝ったハンドペイント、彫刻が施されている。各セットのテーブルクロスはすべて違うデザインで、歴史から忘れられた、あるいは消し去られた女性たちの名が刺繍されている。

また、ほとんど語られることのないその他999名の歴史上の女性の名前も床に刻まれている。この作品は現在ブルックリン美術館に収蔵されており、マリア・グラツィア・キウリもそこで初めてこの作品を目にした。

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ジュディは、西洋文明の歴史から女性たちが除外されることのないように「ディナー・パーティ」をつくった。いっぽう、マリア・グラツィア・キウリの作品はすべてのひとのためではないし、彼女の作品を批評するなかには男性もいることは留意すべきだろう。

しかしだからといって、アート界の女性の仲間たちにスポットライトを当てることに積極的ではない、と彼女を責めることはできない。彼女は、ランウェイでも裏方でも、Diorの歴史の中心にいるのは女性たちだということを明言している。アイテムを超えたところに、彼女のレガシーは永遠に残り続けるだろう。

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This article originally appeared on i-D UK.

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