「無防備であるのはいいこと」 Z世代のスター、ガール・イン・レッドとは?

ストリーミング累計10億回以上の再生回数を記録する、ガール・イン・レッドにインタビュー。クイアネスやメンタルヘルスについて赤裸々に歌う歌詞が、Z世代を中心に話題だ。彼女が語る、無防備でいることの大切さ。

by MAKOTO KIKUCHI
|
30 April 2021, 2:59am

「クイア・アイコンって呼ばれるのは嬉しいけど、私だってまだクイアネスとは何なのか学ぼうとしている最中なんだ」そう話すのはノルウェー出身、22歳のシンガー・ソングライター、マリー・ウルヴェンだ。ガール・イン・レッド(Girl In Red)のステージネームで知られている彼女は、現在インスタグラムに200万人以上のフォロワーを持つ。まだ高校生だった2017年に親友に恋をしていたことに気付き、ガール・イン・レッドの名前で自作の音源「i wanna be your girlfriend」をリリースしたマリー。自身のセクシュアリティをカミングアウトするその作品は、その年『The New York Times』が選んだ楽曲ベスト10に選出された。それからほどなくして、彼女は「Z世代のクイア・アイコン」という文字と共に有名音楽誌のヘッドラインを独占するようになる。

girlsinred_JonathanKise.jpg

彼女の代表曲「girls」のMVは2018年のLGBTプライド月間に公開されて以降、YouTubeで3千万回以上再生された。クイアネスについてオープンに歌うこの曲を再生しながら親に自分がゲイであることをカミングアウトしたファンもいるのだと言う。「LGBTコミュニティは私が作るような音楽を必要としていた。だから彼らが私にクイア・アイコンであって欲しいと思うのも、素敵なこと。ただ私は、自分の音楽はみんなに向けたものだと思うんだけなんよね。ラベルをつけられたくない。“ベッドルーム・ポップ”ってカテゴライズされたくないのと同じで」

マリーが言うように、彼女の音楽はしばしば“ベッドルーム・ポップ”のアーティストとしてビリー・アイリッシュクレイロビーバドゥービーと言ったZ世代の音楽スターと一緒に語られる。彼らのことは同世代のライバルというより、むしろ同じ時代に業界の最先端を走る「仲間」だと捉えているとマリーは話す。「今ではもう友達だけど、2017年にクレイロが『Pretty Girl』をリリースした次の日に、Spotifyで聴いたのを未だに覚えてるよ。彼女にはすごく刺激される。ビーバドゥービーもストイックに自分の音楽を追求していてカッコイイ」。同世代のそうしたアーティストの存在は彼女の音楽性にどんな影響を与えているのだろう? 「音楽的に彼らに影響されるということはあまりないんだ。それは彼らのような音楽を作りたくないってことじゃなくて、私の音楽は100%私自身の生活に影響されているし、彼らの音楽もそれぞれでオリジナルなんだってこと」

girlsinred2_JonathanKise.jpg

4月30日に発売される彼女のファーストアルバム『if i could make it go quiet』に収録される楽曲「Serotonin」は、ビリー・アイリッシュの兄でありプロデューサーのフィアニスと共同制作したものだ。“I’m running low on serotonin(セロトニンが不足してる)”という歌詞が印象的なこの楽曲では、自身のメンタルヘルスの闘いが赤裸々に語られている。「無防備で自分の気持ちに正直にいるのはとてもいいことだと思う」と彼女は言う。「私は元々オープンな性格だけど、昔からメンタルヘルスの話を気軽にできたわけじゃない。ようやく不安とは何かっていうのが理解できるようになったのは18か19歳のころ。今22歳になって過去を振り返ると『あの時感じてたあの最悪な気持ちは不安から来ていたんだ』って分かるようになった。当時はそれを説明したり理解したりするだけのボキャブラリーがなかったんだ」

以前他のインタビューで「曲作りは日記を書くことに似ている」と言っていたマリー。「歌詞を書くのは私のメンタルヘルスに役立っていると思う。曲作りでなくても、自分が感じていることを頭のなかから引っ張り出すのはいいことだよね」。そんな彼女が最近「聴いていると癒される」と挙げるのがノルウェー人アーティストのナイラス(Niilas)が昨年リリースした「What U Want」だ。愛犬ルードの散歩中にいつも聴いているのだと言う。「本当に落ち込んでで鬱のときは、何も聴きたくなかった。何もしたくないし、何がしたいかも分からなかった。何に対しても情熱を失って、自分が役立たずな人間のような気がしてくる、そんな状態。最近は状態がかなり改善して、ようやく自分を元気づけてくれるような音楽を見つけられるようになってきたんだ」

MainPress_creditJonathanKise.jpg

『if i could make it go quiet』は、2019年から彼女が蓄積してきたアイディアを形にした集大成だ。「前はコンスタントに曲を発表し続けていないと、置いてかれるんじゃないかっていう不安があった。でも今は、無理に新曲を出し続けることよりも、良い曲を自分が納得できるタイミングで出したいと思う」と彼女は言う。「これは私にとって初めてのアルバムで、今の自分が持てる全てをつぎ込んだ。100点満点の作品。みんなの反応を見るのが待ちきれないよ」

Press2_JonathanKise.jpg

ガール・イン・レッド『if i could make it go quiet』
リリース日:2021年4月30日(金)
レーベル:ASTERI ENTERTAINMENT
試聴URLはこちら 

Tagged:
queer
Gen Z
girl in red