あなたが今すぐに聞かなくてはならない、人生を変える90’sアルバム11選

ヒップホップ、グランジ、ブリットポップ、ポップパンクの名盤をi-Dが厳選してご紹介。

by Frankie Dunn; translated by Nozomi Otaki
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14 July 2021, 6:24am

人生の転機となるような重要なアルバムをたくさん見逃している、と感じたことはあるだろうか。生まれるのが少し遅すぎたのかもしれないし、単にいい音楽を紹介してくれるひとが身近にいなかっただけかもしれない。私たちにとって、90年代は音楽にとって非常に重要な時代だった。ヒップホップが完成し、ブリットポップが世界に広まり、グランジはメインストリームに進出してファッションにも影響を与えた。

 そして今、90年代の音楽はリバイバルのまっただ中にある。ビーバドゥービー(beabadoobee)のようなアーティストは明らかにグランジの影響を受けているし、オリヴィア・ロドリゴはデビューアルバム『SOUR』にポップパンクとその流れを汲むエモを取り入れた。他にもウィロー・スミスやチェイス・ハドソンをはじめ、多くのアーティストがプロデューサーとしてBLINK 182のトラヴィス・バーカーを迎えている。

 つまり、今という時代は、自分の音楽遍歴の穴を埋め、新たな名盤を知るまたとないチャンスなのだ。ジャンルの垣根を越えたビョークの『Debut』から、当時18歳のNasによるヒップホップアルバムの金字塔『Illmatic』まで、90年代を象徴する重要作を学ぼう。

1. ビョーク『Debut』(1993)

パンクバンドTHE SUGARCUBESの解散後、ビョークはレイキャビクからロンドンへ渡り、グラミー賞ノミネート作「Human Behaviour」を含む、当時27歳の彼女が10代の頃から蓄えてきた未公開の楽曲のレコーディングを始めた。リリースされるやいなや、トリップホップ、アシッドハウス、ポップ、ジャズ、その狭間にあるあらゆるものを融合した『Debut』は、グランジやブリットポップ、すなわちギターを抱える男性たちが主流だった音楽業界を激震させた。

当時i-Dはビョークを表紙に起用し、彼女のアパートでインタビューを行なった。自身のアルバムについて、彼女は「まあまあ」と評している。「3、4枚アルバムを出すまでは、本当に良いアルバムはつくれないと思う」。この意見には同意しかねる。リンクはこちら。

 

2. TLC『Crazysexycool』(1994)

「Creep」と「Waterfalls」を収録した、TLCの2ndフルアルバム『Crazysexycool』は、セクシーなR&Bがたっぷり詰まった永遠の青春アルバムだ。T-ボズ、レフト・アイ、チリで結成されたアトランタ出身の3人組は、ヨーロッパを旅行中に、それぞれの名前の頭文字をとってグループ名をつけたといわれている。本作は12回のプラチナディスク認定、全世界売上2300万枚、グラミー賞2部門受賞という記録を樹立した。

さらに、彼女たちはHIVのパンデミックと薬物依存を題材にした「Waterfalls」で、アフリカ系として初めてMTV Video Music Awards最優秀ビデオ賞を受賞。深刻な問題に向き合い、いくつもの記録を塗り替えただけでなく、彼女たちはデスティニーズ・​チャイルドが生まれるきっかけにもなった。ありがとう、TLC! リンクはこちら。

 

 3. NIRVANA『Nevermind』(1991)

BLACK FLAGなどのヘヴィロック・バンドの要素をポップスのフィルターを通して彼なりに解釈し、発信してきたカート・コバーン。この『Nevermind』の誕生によって、何も知らないメインストリームにグランジが放たれた。本作は大成功を収め、リードシングル「Smells Like Teen Spirit」は、すぐに世界中の誤解されたティーンエイジャーたちのアンセムとなった。

ちなみに、もともと超クールなインディレーベルSub Pop Recordsと契約していた彼らにとって、本作は大手レーベルでのデビュー作だったため、手に取ってもらいやすいように〈sheep〉というタイトルも候補に挙がっていたらしい(却下されてよかった!)。今もオールタイムベストアルバムとして売上を更新し続けている本作を、音楽雑誌『SPIN』は「この先ずっと口ずさむことになるだろう」と評したが、それは間違っていなかった。リンクはこちら。

 

4. AIR『Moon Safari』(1998)

ソフィア・コッポラが、夫のバンドPHOENIXの次に好きなミュージシャンとして名前を挙げたこともあるAIR。彼女は1999年、このフレンチバンドに悲しくも美しい監督デビュー作『ヴァージン・スーサイズ』のサウンドトラックを任せ、続いて『ロスト・イン・トランスレーション』『マリー・アントワネット』にも彼らの楽曲を使用した。

しかし、すべての始まりはAIRのデビューアルバム『Moon Safari』だ。リードシングル「Sexy Boy」のボコーダーを使用したエレクトロニカは、きっと聴き覚えがあるはずだ。本作は北米とヨーロッパの両方で大ヒットし、最近では『スカム』や『セックス・エデュケーション』などのドラマにも使用されている。このアルバムをかけて目を閉じれば、海辺のカフェでぼーっとしるような気分や、満ち足りた浮遊感を味わえる。リンクはこちら。

5. フィオナ・アップル『Tidal』(1996)

あなたが最初のアルバムをリリースしたのは何歳のとき? フィオナ・アップルは18歳だった。ジャズや詩の世界のヒーローたちから感化された彼女は、子ども時代のトラウマを昇華するため、12歳で楽曲を作り始める。そんな彼女をセレブリティの世界へと押し上げたのが、本作『Tidal』、中でも当時のオルタナティブロックシーンにすんなり馴染んだ3rdシングル「Criminal」だ。

しかし、彼女はこの業界に心酔しているわけではなかった。1997年のMTV Video Music Awardsで最優秀新人賞を受賞したさい、彼女は受賞スピーチで次のように発言している。「この業界はクソ。この世界でクールだと思われていることや私たちが着ているもの、私たちの言葉など、あらゆるものに合わせて自分の人生を変えたりするべきじゃない。自分に正直になって」

「Sullen Girl」の絶望を封じ込めた見事なサウンド、そしてアートワークの真っ直ぐこちらを見つめるアイスブルーの瞳を、あなたの魂で体感して。リンクはこちら。

 

 

6. エリカ・バドゥ『Baduizm』(1997)

アフリカのルーツから影響を受けた、テキサス生まれのネオ・ソウルのレジェンド、エリカ・バドゥのデビューアルバムは、1997年にリリースされると絶賛を浴びた。当時26歳だった究極のストーリーテラーである彼女は、70年代のソウルとヒップホップカルチャーを融合したサウンドを通して知恵を広めるために詞を綴った。中でもシングル「On & On」とエリカが初めてラップではなく歌唱を披露した「Appletree」は大ヒットし、この2曲を収めた本作は、見事グラミー賞最優秀R&Bアルバム賞に輝いた。セクシーで、スピリチュアルで、絶大な影響力を誇る作品だ。リンクはこちら。

 

7. GREEN DAY『Dookie』(1994)

GREEN DAYが楽しいバンドなのは周知の事実だが、このカリフォルニア生まれのポップパンクバンドのグラミー賞を受賞した3rdアルバム(彼らのメジャーデビューアルバムにして、今日に至るまでのベストセラー)は、よりシリアスなテーマに触れていることをご存知だろうか。例えば、思春期の戸惑いの中での不安を歌った「Basket Case」、フロントマンのビリー・ジョー・アームストロングが十代でバイセクシュアリティと向き合った体験を綴る「Coming Clean」。本作がポップパンクを大衆に届けたことを鑑みれば、数々のアーティストに影響を与え、ポップパンクのリバイバルのきっかけをつくった彼らに感謝するべきだろう。ちなみにアルバムタイトルの由来は、彼らが〈dookie(糞便)〉とともにツアーを回ったことだという。リンクはこちら。

8. ナズ『Illmatic』(1994)

ナズは弱冠20歳にして、90年代半ばにニューヨークの公営住宅で育つとはどういう体験かを完璧に表現した。デビューアルバムはジャズやヒップホップ映画『ワイルド・スタイル』、10本の線路が走る彼の地元の駅の轟音をサンプリングし、アイコニックな「N.Y. State of Mind」や「The World Is Yours」を通して、しばしば残酷な表情を見せるこの街を鮮やかに描き出した。今や世界でもっとも偉大な、絶大な影響力を誇るラッパーとして知られるナズのリリックは、まるで詩のようだ。リンクはこちら。

 

9. RAGE AGAINST THE MACHINE『Rage Against The Machine』(1992)

1963年、仏教僧ティック・クアン・ドックは、ベトナム政権の仏教徒抑圧への抗議として、自らの身体に火を放った。ジョン・F・ケネディはこの焼身自殺の写真を見て、政権への支援を撤回した。

そのため、ラップメタルバンドRAGE AGAINST THE MACHINEがこの写真をデビューアルバムのアートワークに使用したとき、人びとは当然ながら過激な作品を期待した。彼らのサウンドが本領を発揮するのは、2曲目の「Killing In The Name」だ。1991年、ロサンゼルス市警察の警官4名が黒人作家/アクティビストのロドニー・キングを激しく殴りつける監視カメラの映像が流出した直後に書かれたリリックは、あまりにも耳慣れた、この街に蔓延するレイシズムを語っている。「暴力を行使するヤツらは 十字架を燃やすヤツらと同じ」と叫ぶフロントマン、ザック・デ・ラ・ロッチャの声は、終盤に向けてますます激しさを増していく。「お前らは彼らの死を正当化する/バッジを身につけることで/ヤツらは選ばれし白人だ」。なんとも見事な歌詞だ。リンクはこちら

10. PULP『Different Class』(1995)

OASISやBLURのことはいったん忘れて、こう考えてみてほしい。シェフィールド生まれのバンドPULPは、ブリットポップシーンでもっともエキサイティングなバンドだった、と。我が道を行く彼らの「Disco 2000」や「Common People」などのシングルは破壊的で、滑稽で、死ぬほどキャッチーでもある。

本作リリースの1年後、アルバムの成功によって波に乗りつつも、業界の体質に苛立っていたヴォーカルのジャーヴィス・コッカーは、ブリット・アワードのマイケル・ジャクソンのパフォーマンスに乱入し、ステージの正面で尻を突き出して抗議の意を示した。それこそがキリストのようにまつりあげられたこのポップスターに対する彼の意見であり、このような行為は莫大な富と権力を持つ人びとにまつわる幻想を助長する、と彼はのちに説明している。まったくそのとおりだ。リンクはこちら。

 

11. エリオット・スミス『Elliott Smith』(1995)

あなたがフィービー・ブリジャーズのファンなら、きっとエリオット・スミスも好きになるはずだ。かつてロスフェリスのスノーホワイトコテージに住んでいたこのシンガーソングライターは、フィービーの憧れのミュージシャンであり、彼女の作品や2020年のアルバム『Punisher』のタイトル曲のテーマとして度々言及されている。パニッシャーというのは話のやめどきがわからない人のことだ、と彼女はいう。「私の曲の多くは、彼にインスパイアされて生まれた」と彼女は説明し、エリオットと出会っていなかったら自分も完全なパニッシャーになっていただろう、と語る。34歳でこの世を去る前、長年うつや依存症に苦しんでいたエリオット。彼の2ndアルバムは、ウェス・アンダーソン監督『ザ・ロイヤル・テネンバウムズ』のリッチー・テネンバウムが自殺を試みるシーンで使われたことで有名になった「Needle In The Hay」から始まる。後に続く曲も、同じくらい印象的でエモーショナルだ。リンクはこちら