「美しいものはいつまでも美しい」:KUON 18AW

襤褸(ぼろ)、刺し子、日本特有の柄表現——それらは時代を超えてもなお美しい。ブランド名は“久遠(いつまでもかぎりなくつづくこと)”に由来する、石橋真一郎がデザインするKUONの初めてのショーは、ハンドパン奏者・久保田リョウヘイの演奏で始まった。

by Tatsuya Yamaguchi; photos by Nobuko Baba
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25 March 2018, 7:34am

——襤褸(ぼろ・らんる)とは、「使い古して役に立たなくなった布やぼろぎれ、着古して破れたりつぎだらけの衣服」のことだ。今からおよそ150年以上前、木綿布は庶民にとって貴重なものだったという。とくに寒さの厳しい東北地方では、麻布を幾重にも重ね合わせ、刺し子をしていた。世代をまたぐときには手を加えられ、“無駄”な部分など何一つ出さなかったそうだ。すべては、身体(あるいは命)を守るため。襤褸には、人から人へ受け継がれてきた“時間”や、そのときの “記憶”、あるいは“生の実感”のようなものが内包しているのだ。日本固有の服や文化に対する眼差しを持った服を生み出すKUONが、渋谷ヒカリエでショーを開催した。「ブランドコンセプトは『美しいものはいつまでも美しい』」。AFWT最終日である3月24日は、第4回TOKYO FASHION AWARDを受賞者によるWinners' Dayだ。

会場の中央に、2001年にスイスで発明されたという新しい打楽器ハンドパンが置かれている。世界的にも数少ない、若きハンドパン奏者である久保田リョウヘイによる演奏でショーが始まった。指先で叩くように、撫でるようにして、うねりのある高音が響き渡る。また、四辺に設置されたディスプレイには、川や空といった自然と都会的な映像がまたたくように切り替わるモノクロームの映像が流れている(VJは映像作家・アートディレクターの木村和史)。どこかノスタルジックで、どこかで洗練された都会的。そんな人物像がぼんやりと湧き上がる。

「今回のショーのテーマは、時間軸、少年像、ライブ感、有機物」と、ショーを終えたデザイナーの石橋真一郎は話した。日本人メンズモデルが身にまとうのは、使い古した布を細かく裂いて織り込んだカラフルな「裂織り」で仕立てられたり、刺し子織りで表現された「吉野格子」の柄、「藍染」や「泥染め」「墨染め」といった有機天然の染色が施されたりしたシャツやジャケットなど。どれも日本特有な文化や技法を、KUONのフィルターを通して“モダン”に落とし込んだものだ。一方で、曖昧な大きな格子柄が美しい新万葉染めは、従来の草木染の方法論を現代技術によってアップデートし、地球に優しい染色方法だそう。そうした技術への着目もKUONには欠かせないのだろう。そして何より、“有機的”で“時間”を内包する本物の襤褸をパネル状にパッチワークされたテーラードジャケットの存在感は目を見張るものがある。

近年、日本の“BORO”が、まさに“生”のアートとして欧米を中心に注目を集めていると聞く。蓄積された手仕事の痕跡が、そうした眼差しを生んでいるような気もする。東京・浅草にはボロ・ミュージアムがあるし、渋谷のアツコバルーでは4月1日まで「記憶の布〜BOROの世界〜」展が開催されている。大量生産・大量消費のシステムを背景に、世の中に“衣服”が溢れかえる現代において、襤褸に惹かれる理由を考えることは大きな意味があるのではないだろうか——石橋真一郎もまた襤褸がもつ魅力に取り憑かれた人のひとりだ。


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