Photography Mitchell Sams

Vetements 19SS について知っておくべき5つのこと

デムナ・ヴァザリアは言う。「これは私の人生について」

by Osman Ahmed; translated by Aya Takatsu
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jul 5 2018, 6:30am

Photography Mitchell Sams

◎ロケーションは政治的
ショーの会場は、パリ郊外の都市高速道路ペリフェリックにある橋の下。難民キャンプで知られている場所だ。セットには白いディナーテーブルと、チュールのリボンがつけられたプラスチック製の椅子が並んでいた。Vetements流の結婚式だろうとゲストは推測したが、少し違う。この場所が選ばれたのは難民キャンプに近いから、もっとはっきり言うと、その難民問題にデムナ・ヴァザリアが自分を重ね合わせていたからなのだ。「今、誰もが戦争や難民について話をしているように感じます。そして私は、そうです、それが何を意味するかはっきりわかるのです」。ショーのあと、デムナはそう語った。「不思議な感覚です。これは私の人生について。しかしまた、CNNで見ることのすべてについてでもあるのです」

◎食べられる招待状
招待状はハート形のビスケット、レープクーヘンヘルツェン。バイエルンに伝わる伝統的なジンジャーブレッドのお菓子だ。太めのアイシングで文字が書かれている。今回はアイシングでハートと花が描かれ、楽しげで、デュッセルドルフでのデザイナーの幼少期を考えたものなのだろうということが読み取れた。ショーの前には、シャルドネも振舞われた。が、このあとに何が起こるのか、ほとんど検討もつかなかった……。

◎デムナの原点に立ち返るテーマ
デムナはショーの主題を「家族と戦争」と記していた。そう、ダークな印象だ。そして、彼が原点に立ち戻るとすれば、これこそ彼がVetementsというブランドのスタート地点としたいコレクションなのだと付け加えている。現在は分離したジョージアの一部、アブハジアで育ったヴァザリアは、故郷を離れることを強いられ、戦争による茶番を経験した。まだ彼がティーンだったころ、内線から逃れるべく、ヴァザリア一家はロバでコーカサス山脈を越えた。先シーズンとは異なり、彼はデザイナーとしてのルーツと「マルタン・マルジェラのアプローチ」に立ち戻ることで「誰も語らぬ重要な問題」に取り組んだのである。今シーズン、真にパーソナルなストーリーとともに、デムナは自身の辛い過去とトラウマに向き合った。

◎幼い頃の記憶
“普通”だが巨大なシルエットに落とし込まれた服は、デムナが少年のころに来ていたパーカーをベースにしたもの。本人によると、そのほとんどは従兄からのお下がりだったという。生家への爆撃のあとで数週間聴力を失った80歳になる彼の祖母、「そして彼女がいまだに使っている膨大な量の肩パッド」もまた、そのインスピレーションとなったそうだ。多くのピースはトルコの国旗やアメリカ、デザイナー自身が経験したと感じているアイデンティティの消去を象徴するレザーの緊縛マスク、ジョージアの国旗とウクライナにヒントを得ている。積み重ねられたコインのヒールがついた女性用のシューズや、逆さまのエッフェル塔など、軽めの息抜きアイテムも数点。「いつも服について語られるショーをやってきた私にとって、これはまったく違う仕事の仕方でした」と、デムナは説明した。彼が「ジョージアにしょっちゅう帰っている」ため、コレクションのデザインは実際的なものなのだ、と言い添えて。

◎モデルは(ほとんど)ジョージア出身
モデルはストリートハントされ、ショーのスタイリングは(お気に入りのロッタ・ヴォルコヴァに依頼するのではなく)デムナ自身が手がけた。ルックを着せるために、彼はおよそ40人以上をジョージアから連れてきた。初めてヨーロッパに来たときの彼自身を思わせる若者たちだ。それぞれが「ある種の純朴さと、母国にはないと彼らが感じる声」を具現化している。

◎感銘を与えるショー
「身がすくむ思いだったよ!」と、ショーが終わったあとにあるゲストが言った。実際、大音量のドラムがBGMで流れるなか、オーディエンスの真上で40人超のモデルたちが興奮状態で足を踏み鳴らしながら歩いていたのだ。しかし、オーディエンスの琴線にはっきり触れたのは、非常に政治色の強いストーリーだった。Vetementsは、顧客がこのコレクションの服をスキャンすると、アブハジアにおけるジョージアの民族浄化についてのウィキペディア・ページに飛ぶアプリを開発している。ファッションブランドがこれほどディープな問題を身近で取り上げることは、めったにあることではない。まして今はオートクチュールショーの期間中なのだ。

信じられない? ではこれを見て、自分の目で確かめて。

This article originally appeared on i-D UK.