『TECHNOLOGY』:遠藤麻衣子×トリスタン・レジナート対談

先月のレイトショー上映が好評を博した、遠藤麻衣子監督による映画『KUICHISAN』と『TECHNOLOGY』が6月30日から再上映決定! それを記念し、『TECHNOLOGY』に出演しているトリスタン・レジナートと遠藤麻衣子による対談を公開。

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jun 27 2018, 10:19am

2018年5月、一週間にわたり、東京・渋谷にあるシアター・イメージフォーラムには開場を待つ人による人だかりができていた。夜の9時に——。彼らのお目当ては、遠藤麻衣子が監督した2本の映画『KUICHISAN』と『TECHNOLOGY』だ。

沖縄を舞台にした『KUICHISAN』(2011)と、アイスランドとインドで撮影された『TECHNOLOGY』(2016)。NYインディペンデント映画シーン出身の遠藤の作品が観られる国内初の機会とあって、多くの映画ファンや感度の高いユースたちがその上映を心待ちにしていたのだ。

『KUICHISAN』の撮影は『グッド・タイム』のショーン・プライス・ウィリアムズが担当し、『TECHNOLOGY』では『ゼロ・グラビティ』『メッセージ』を手がけたニコラス・ベッカーが音響デザインを担当している。しかし、そうした情報は本作のトリビアにすぎない。見終えたあと、観客の頭に残るのは、そのような固有名を凌駕した幻想と、過去と未来に同時に引っ張られたような浮遊感だ。アートや映画の世界で活躍する表現者たちを集結させて完成させた遠藤の映像作品は、映像と音による圧倒的な体験を観客に提供する。

この一週間限定レイトショーが、監督にとっての日本劇場デビューだったにもかかわらず、エクスペリメンタルなこの幻想記録映画の衝撃は口コミで広がっていき、連日満席が続いた。そして先日、その反響を受け、6月30日からイメージフォーラムでアンコール上映されることがアナウンスされた。

『TECHNOLOGY』は、その出演陣も興味深い。謎の力によって地球にやってきた少女を演じるのは、NYのアート集団〈Luck You Collective〉の創始者で『アイ・ラブ・ディック』などにも出演している女優のインディア・サルボア・メネズ。モデルとしてファッションブランドのキャンペーンを飾るかと思えば、MoMA PS1で展示のキュレーションも務める米注目のマルチアーティストだ。そして、もうひとり。映画のなかで彼女と対をなす“種の男”を演じているトリスタン・レジナートもNY在住のアーティストだ。彼は10代のころから絵画、彫刻、ファッションデザイン、人形作りなど精力的に創作活動を行なってきた。現在は映画やミュージックビデオを作りながら小説を執筆し、短編映画『Lovers on a Train』を準備中だという。

遠藤はどのようにして彼らと出会い、共に映画をつくることになったのか?

5月の上映に際して日本を旅したトリスタンが遠藤監督と『TECHNOLOGY』の解釈、インディアとの出会い、3人で見たアニメ映画をリラックスした雰囲気のなか語る。

遠藤麻衣子:この旅で良かった思い出は?

トリスタン・レジナート:いちばん良い時間が過ごせたのは銀閣寺だと思う。なぜか混んでなくて。あと大阪水族館。それと君の映画を観たこと。

遠藤:映画を見た後どんな感じがした?

トリスタン:心臓が早く打っていた。あと、すこし混乱した。たくさん咀嚼しなきゃいけなかったから。忘れてた記憶とか場所を映画で見て、圧倒された。だから神社とかに行ってその気持ちを静めるための旅でもあったんだけど。

遠藤:インドでの撮影中、ひとりでインドを旅してたときはどんな気持ちだったか覚えてる?(注:遠藤はトリスタンを撮影の合間にひとり旅させた。)

トリスタン:自立した感じがしてよかった。詩を書いたり、自分の精神面を鍛えられたと思う。(撮影で)みんなでいるときは、すごく変だった。インディア(・サルボア・メネズ)は映画のなかでも無言だけど、撮影してないときもずっと無言で(注:インディアはインドにいる1ヶ月間、一言も発さなかった)。彼女はそこにいるのに、ちゃんとコミュニケーションがとれなかった。

遠藤:映画を観たとき、自分自身が役に反映されていると思った?

トリスタン:いや、あれは僕じゃない。

遠藤:全く違う?

トリスタン:うん、全然違う。あれは僕じゃない。

遠藤:あの役をどう思った?

トリスタン:僕の役は、そこまでちゃんと成立してないというか、役とも言えないような役だったんじゃないかな。……いや、やっぱりわからない。

遠藤:じゃあ誰がもっと役として立っていたと思う?

トリスタン:インディア。

遠藤:彼女の役をどう見る?

トリスタン:この映画は彼女の悪夢か、幻想か……。この映画が何なのかはたくさんの異なる可能性があると思う。だけど僕には、彼女が漂流者とかさすらいみたいに見えた。アイスランドとインド、太陽と月、暑さと寒さ、それらのあいだで彼女が苦しんでいるのか、それとも楽しんでいるのか。けど全体的に見て、彼女は苦しんでいたと思う。

遠藤:その苦しさはどこから来ていると思う?

トリスタン:それはわからない。映画のなかの彼女は逃げ出してきたようにも見えるし、ひとりになるためにコミュニティや友達、家族から出てきたようにも見える。僕が日本にこうやって来たみたいにね。だけど、ひとりになるためのプロセスが、だんだんわかっていくうちに、最後にはもっと悲しかったり、がっかりするものになってしまったりする。

遠藤:演技をしているときは自分の役に対してのアイデアはあった?

トリスタン:うん。君がぼんやりとしたガイドラインをくれたから。彼はイギリス人で、植物の種を持っている。はっきりはしてなかったけど、映画の撮影が進んでいくうちに、その役は構成されていった。

遠藤:いまの君はインドで撮影してたときの君とは違う?

トリスタン:すごく違うと思う。『TECHNOLOGY』に参加してから、自分の映画作り、服作り、食べること、すべてにおいてより細部を正確にするようになった。ご飯を食べても口から食べてる物がこぼれないとかね。洋服でもシミが付いてなかったり。それに、君の映画に参加したときには、まだ自分の映画も作ったことがなかった。今では3本の短編を撮ってる。

トリスタン:『TECHNOLOGY』ってどんな話って訊かれたらなんて答えてる?

遠藤:「謎の力によって月からさらわれ地球にやってきた少女の話」って言ってる。それだけ。

トリスタン:あの映画を振り返ってたときにあることを思ったんだ。インディアは隕石と共に月に降り立ったんじゃないかって。オープニングのクレーターのショットはそのヒントにもなるかと思った。

遠藤:いいね。それはイカした見方だと思う。

トリスタン:エイリアンみたいな感じでね。じゃあ、僕の役を人にどうやって説明する?

遠藤:彼は植物のディーラー。それは映画を観てもわかるけど、彼がどこから来たのかはっきりはしてない。ただ、それ以上言わないようにしてる。自分の頭のなかにはあるけど。この映画を見た人がそれぞれ、こういう物語だったんじゃないかとか言うんだけど、それが自分のアイデアとは違ったとしても「これはこうです」とは言いたくない。みんなのファンタジーを壊したくないし。インディアと君の役のあいだに関係はあると思う?

トリスタン:はっきりはわからない。けど自分が映画に出てたのもあって、ふたりのあいだで似ていたり、オーバーラップしているところはわかった。これだってものを指し示すことはできないけど。

遠藤:インディアとは現実ではどんな関係?

トリスタン:インディアとはMy Spaceで(ふたりとも)13歳のときに会ったんだ。彼女が最初にメッセージをくれたと思う。で、僕がフレンドリクエストをした。Myspaceに「Top8」っていう自分の好きなものを紹介する欄があるんだけど、彼女とは趣味があった。ビョーク、ヤー・ヤー・ヤーズ、ジェレミー・スコットとか(今の好みとは別だけど)。ファッションとか音楽、アートも同じような興味だった。『Cost Of Change』っていう僕の撮った短編映画にも出てる。Luck Youっていうアートコレクティブも一緒にやってたしね。彼女は僕が秘密を共有できる数少ない友人のひとり。17歳から20歳のころは本当に親友だった。ここ4年くらいは彼女も有名な女優みたいな存在になって、映画の撮影で数ヶ月間ロサンゼルスに行ったりしてるから、NYに戻ってきたときに1、2日会うくらい。お互いアーティストだからコラボもするし、次の短編も彼女と作りたいと思ってる。君はインディアとはどんな関係?

遠藤:初めて会ったのは、彼女が15歳のころ。覚えてる? 私たちは3人とも映画館で……

トリスタン:『メトロポリス』!

遠藤:そう、『メトロポリス』(りんたろう監督 2001)を〈サンシャイン シネマ〉で同時に観ていた。

トリスタン:そう、8歳だった。僕らはそのとき出会わなかったんだけど、そこに一緒にいた。

遠藤:なぜかね。でも、ちゃんと会ったのは15歳のとき。〈アンソロジー・フィルム・アーカイヴス〉に彼女が出てるっていう映画を観に行って。

トリスタン:あの不思議な3人の女の子のやつか(KT Auleta監督の『Runaround』)。おもしろかった?

遠藤:映画が終わる5分前とかに劇場に入ったからよくわかんないけど、どれがインディアかもわからず見ていた。友だちに、ロス(インディアの父親)の娘が出てるから来なよって言われて行ったんだけど。他の女の子をインディアだと勘違いしてた。

トリスタン:ロスの髪は茶色いからね。主演の女の子もたしかに茶髪だった。

遠藤:そう。そのあと、〈Cinema Nolita〉っていうレンタルビデオ屋で手伝いしてたときに、インディアが来て、『Bye Bye Monkey』を借りにきた(自分がロスに薦めたからだと思うんだけど)。すぐに、〈アンソロジー・フィルム・アーカイヴス〉でインディアを見たのを思い出した——そのとき彼女は映画館の前で写真を撮られてた。とにかく彼女がビデオ屋に来て、クールだと思った。それから『KUICHISAN』を準備してたときに、ロスのスタジオに衣装デザインのことで相談しに行ったんだけど(当時、ロスはスカーフや洋服、かばん、クッションなどをつくるSALVOR PROJECTSをやっていた)、彼はとても忙しかった。それでロスが、その場にいたインディアに「マイコを助けてやってくれ」って言って一緒に作業することになった。だけど、一緒に出かけるとかそういう間柄じゃなくて、ただの仕事仲間だった。2年後、インディアが17歳のとき、彼女の展示に行った。「展示物の小屋を壊してるから来なよ」って誘われて。トリスタンもあとから来たよね。そのとき初めて彼女を持っていったスーパー8で撮影した。撮ってすぐ彼女とは何かできると思った。インディアも「あなたが映画を作って、私はそれに出たい」って言ってきて。それがはじまり。でもそのあと自分はアメリカから追い出された(笑)。だからインディアとはずっと手紙かメールで連絡をしてた。だから、自分とインディアの関係はそのメールと手紙でできてる。すごく不思議な感じだけど、実際に会うとまたとても自然でもあって。『TECHNOLOGY』は完成するのに5年かかって大変だったけど、彼女もすごく関わってたからお互いに密接になった。彼女にとっても大変なことだったと思う。ちょっと行き過ぎた感じもあったから。それで、今はまた距離をとることにした。だけどまたそのうち一緒に何かできたらいいなと思ってる。すぐにではないけど、またいつか、違うやり方で。そんなところかな、おもしろいよね。

トリスタン:あれから5年経ったと思うとクレイジーだな。

遠藤:撮影からね。

トリスタン:聞きたくなかった。すごい時が過ぎたな。

遠藤:君は18か19歳だったよね。

トリスタン:そう。考えると狂いそうだ。

遠藤:(笑)。

@tristanreginato

『KUICHISAN』『TECHNOLOGY』
6月30日より日替わり再上映 連日21:00より 偶数日:『TECHNOLOGY』 奇数日:『KUICHISAN』 ※6/30(土)のみ特別イベント付き上映 詳細は下記をご参照ください。
〈入場料金〉 当日一般1,500円/学生・シニア1,200円/会員1,100円 ※6/30(土)のみ特別料金:一律2,000円

TECHNOLOGY SPECIAL LIVE Presents: 小林七生 (FATHER / Drum solo) 服部峻 (Audio & Visual set) 『KUICHISAN』にドラム・パーカッションで参加した小林七生と『KUICHISAN』『TECHNOLOGY』両作で音楽提供している服部峻が、一晩だけの特別ライブで遠藤麻衣子特集 再上映の幕を開ける!!! 21:00〜LIVE (30min) 21:30〜「TECHNOLOGY」 (73min) 《料金》 特別料金 一律2000円 (ライブ+映画上映)